★ ヘラルドシネクラブニュース 1999/10・11 ★
岡村洋一の聴 ク、映 画


『もっと映画を観なさい』

☆8/13(金)<調布・日活撮影所 第8ステージ>

シーン30映画館の表 〜人力車が走り、モダンボーイ、モダンガール達が闊歩している。今は大正4年の春、ここは神戸キネマ館の入り口。私は切符を売っている気のいいおじさん。そして私の目の前にいるのは……
長治  「(興奮顔で)一等席、一枚おくれ。」
切符係 「アレ、淀川のぼん、きょうはお一人だすか?」
長治  「(胸を張る)ウン、小学生になったよって、切符も自前や。」
切符係 「そら、おめでとうさん。(お茶子に)二階一等席ご一名ご案内!」
(脚本 市川森一さん)
カット! エアコンのスイッチが入り、大勢のスタッフが慌しく動き回り、俳優達はタオルで 汗を拭く。今の芝居で良かったのだろうか? 不安気な私と目が合った大林宣彦監督はやさ しく微笑んでくれた。サングラスの奥のその目が「OK」と言っている。
ホッ。
この日、私は本当に少年時代の淀川さんに逢えた気がした。
子役の厚木拓郎くんは、眉毛までそっくり。

☆10/7(木)<川崎市・第5回しんゆり映画祭>
3人のゲストを迎えて、追悼記念のトークショーの司会をする。TVプロデューサーの岡田喜一郎 さん「チャップリンの『黄金狂時代』のファーストシーンを淀川さんにカメラに向かって語って もらった事があった。後でこのシーンのフィルムとしゃべりを合わせてみたら、なんとぴったり。 1秒の狂いもなかった」
映画評論家の品田雄吉さん「三島由紀夫が生まれた瞬間の事を覚えていて、その状況を描写している 文章があるんだけど、淀川さんの記憶力というのは、そういう(天才的な)ものだったのではない か」
渡辺祥子さん「たくさん映画を観なさい、映画をよく(深く)観なさい、という事を教わりました」
そう、理屈で、頭で映画を観るのではなく、感覚で捉えるという事。ストーリーを追うのではなく、 その作品の持っている「色」を感じることが大切 etc …。たくさん学んだ。無限の影響を受けた。
淀川さんは、映画の妖精だった。妖精が地上に舞い降りていた幸せな時代は終わってしまった けれど、先生の最後の言葉、生涯忘れないでいようと思います。