シネマ大全 た行・ト

 トロイ       2004年 アメリカ

ギリシャ連合のスパルタとその宿敵トロイの間に無血同盟が結ばれた夜。トロイの王子パリスとスパルタの王妃ヘレンに禁断の恋が芽生えていた。
若き情熱に駆られたパリスは、非道を承知でヘレンを自国へ奪い去ってしまう。
トロイ侵攻の口実を得たギリシャ王アガメムノンは、屈辱に燃えるスパルタ王メネラオスとともに、全ギリシャを挙げての進軍を開始する。
トロイ攻略の鍵を握るのは、女神の息子と謳われるギリシャ最強の戦士アキレス。一方トロイでは、パリスの兄で太陽の子ヘクトルが決戦に備えていた。ひとつの恋が、英雄たちの宿命を導いて行く…。


よく知られているこの物語、詩人・ホメロスが古くから伝わる伝承を叙事詩としてまとめたのか、それともまったくの創作としてこの物語をまとめたのかは、定かになってはいない。
そのホメロスに魅せられた考古学者ハインリッヒ・シュリーマンは、1871年、トロイの遺跡を発見した、と発表した。これによってトロイの存在と「イリアス」の物語が歴史的事実であることが実証された… そう思われたが、現在では、まだまだ諸説があるらしい。

パリスとヘレンの不倫=恋が、深く描かれていないため、何だかこの二人の身勝手な勢いのせいで、何万人もの人が死んでゆくストーリーにみえてしまう。                                惜しい。
ブラッド・ピットは、この役が決まってから撮影まで、6ヶ月の時間があった為、新しく肉体を鍛え上げ、剣術を徹底的に訓練して、アキレスの役に近づいていったという。
黒澤明監督が亡くなってから、我が国では、そういう余裕のある映画作りというのはほとんど消滅してしまった。

ブラッド・ピットの精悍な肉体と、キャラクターの創造、頑張りが評判だが、この作品は間違いなく、プリアモス王を演じたピーター・オトゥールの映画だ。
アキレスのテントへ入って来た所の彼の立ち姿、火の海となったトロイの街を見た時の、一瞬のあの深い悲しみの表情…。その巨大な存在と演技は、この映画全体の背骨となった。
お子様ランチのCG大作とは違い、大人がたっぷりと楽しめる、堂々とした大作だった。

(2004.6.5)