シネマ大全 た行・チ

 チーム・バチスタの栄光   2008年 日本

成功率60%といわれる心臓手術“バチスタ手術”を26例連続成功させていた、東城大学付属病院の専門集団“チーム・バチスタ”。しかしその手術が3例連続で失敗するという事態が起きた。原因は、果たして事故なのか? それとも、故意の“殺人”なのか?? 心療内科医の田口は院長の命で手術失敗の内部調査を行う事になる。
聞き取り調査の結果、彼女は単なる事故として調査を終了しようとするが、そこに厚生労働省の白鳥が現れ…。


現役医師である海藤尊が書いたリアルでコミカルなミステリー小説が、豪華キャストによって映画化された。

アメリカ帰りの超エリート医師を演じるのは吉川晃司。このキャスティングは、なかなか難しかったのではないか。何となく存在感はあるが、演技で自分自身のポイントを取ろうとしない。しかし、実直な雰囲気を持ち、全体のバランスを計算出来なければならない。
吉川晃司は、適役だった。

終盤に向かい、“二重の怖さ”が近づいて来るのが解る。
映画「アラビアのロレンス」や「羊たちの沈黙」でも描かれた“娯楽としての殺人”、その“人間の得体の知れない暗部”に踏み込んだ点を高く評価したい。

ただ、何処かで、“映画の踊り場”があってもよかったのではないか?
バチスタ手術失敗の原因を追う心療内科医・田口の“心の休み時間”或るいは“艶”を、もうほんの少しだけでも垣間見る事が出来れば、更に映画全体にふくらみが生まれ、“巨大な闇”も、その恐ろしさを増したに違いない。
なかなか楽しめたが、そこがちょっと惜しい一本だった。

(2008.2.21)