シネマ大全 た行・タ

 魂萌え!  2007年 日本

定年を迎え夫婦2人で平穏な生活を送っていた関口敏子・59歳。63の夫・隆之が心臓麻痺で急死し、敏子の人生は一変する。亡くなった夫の携帯電話にかかって来た女性からの電話。8年ぶりに現れ強引に同居を迫る長男・彰之。長女・美保を巻き込み持ちあがる相続問題。矢継ぎ早に迫ってくる孤独や不安に、敏子は恐る恐るではあるけれど立ち向かって行く。妻でもない母でもない一人の女として、新たな人生を切り開く決意を固める敏子。世間と格闘しながら、もう一つの人生を見つけ、確かな変貌を遂げて行く…。


結局、30年以上も一緒に暮らした夫だって謎だらけで、子供達はいつまでも身勝手。
行き場のなくなった敏子(風吹ジュン)が二泊するのは、カプセル・ホテルだ。
そこで、出逢った宮里という牢名主みたいなお婆さんは、自分の身の上話を聞かせて、相手から一万円を取るという曲者。しかし、敏子は彼女に共感を覚えてしまう。
宮里を演じるベテラン・加藤治子が、没落した金持ちのムードを漂わせていて凄い。

夫・寺尾聰の元愛人を演じる三田佳子の“見せ場”の作り方。
敏子の高校時代の同級生で、今も仲良しの由紀さおり、藤田弓子、今陽子。
彼女らの40年前が現在の会話を通じて見えて来るあたりも、さすがだ。

シニアの女優の競演を楽しみつつ、“人と人とは何故もう少し上手くやって行けないのだろう”とか、“人間同士って、お互いにとって、その存在自体が謎なのかも”とか考えてしまった。

同じ阪本順治監督の大作「亡国のイージス」よりも、遥かにサスペンス。
グイグイ引っ張られて、最後は少し温かい気持ちになれた。

(2007.1.11)