シネマ大全 た行・タ

 TAKESHIS’  2005年 日本

大物タレントとして日々忙しく過ごしているビートたけしは、いわゆるセレブな大スターだ。一方、そんなたけしと外見がそっくりの北野は、しがないコンビニ店員。売れない役者としてオーディションを受けまくっているものの、受かったためしがない。ある日の事、北野とビートたけしが出逢った。北野はビートたけしからサインをもらうが、この出逢いをきっかけにして、北野はビートたけしの映画の世界へと入り込んでいくのだった…。


“ヨーロッパと日本で、100人くらいの批評家のインタビューを受けたけど、この映画を解ったのは、7人しかいなかった”と、北野武監督はコメントしているので、きっと彼なりの“こういう事が言いたかったんだ!”は、あるのだと思う。
私は、8人目になる気はない。

フェデリコ・フェリーニ、ロジェ・バディム、ルイ・マルの3監督によるオムニバス映画「世にも怪奇な物語」(1967年・フランス)の影響を強く受けているのは、間違いない。
幼い頃、ロシア旅行のお土産に貰ったマトリョーシカの様に、多重構造になっているが、もしも、この映画がビックリ箱だとしたら、それは蓋がキチンとしまらないビックリ箱だ。
そして、もちろん北野監督は確信犯だ。

ユーミンのアルバムで言うと、「紅雀」にあたる。
そう、ビートたけしは現在、着替え中なのだ。
だから、「ソナチネ」「HANA−BI」「座頭市」「みんな〜、やってるか?」… あらゆる過去の作品が入っている。

“入場料を払って、着替えを見せられた!”と、怒るあなたは、まだまだキンタマが小さい。
えっ?
私は、女だって? 女だったら、男らしく生きろ!
当節の男は、ことごとく女だから。

北野武監督は、この映画を作らなければ、絶対に次へ行けなかったのだと思う。
着替えを終えたビートたけしが次は一体、何処へ行くのか?
誰も知らない。
もしかしたら、本当のビートたけしは、“まだ始まってもいない”のかもしれない

(2005.11.27)