シネマ大全 た行・タ

 ダーク・ラブ〜Rape〜 2007年 日本

大学を卒業し、就職のために上京してきた内田楓は、部屋探しのために立ち寄った不動産屋で、御子柴という男性に出会う。親切な御子柴を信用し部屋を決めた楓だったが、しばらくすると留守中に誰かが侵入している形跡を見つけ、不安を感じ始める。実は御子柴は、自分の理想に叶った女性を探し求め、裏切る女性には非道な仕打ちを繰り返すサイコ男だったのだ。不動産屋を隠れ蓑にする彼は、楓をついに出逢った理想の女性と考え…。


サイコ・サスペンスの鬼才と言われる坂辺周一による、37万部突破のベストセラー・コミック「レイプ」を映画化。光、スモーク、倒錯した欲望、異常に肥大化した自意識、身勝手、他人に感心を持たない都会の住人の危険な匿名性、田舎のお屋敷、隠しカメラ、ガランとした廃墟の様な部屋、ゴミ焼却場…。

これら、映画を構成する多くの要素が、時に邪魔し合い、時に呼応し合い、響き合って、物語は進んで行く。“生きるために”拉致し、陵辱し、飼育し、殺し、そして終わって行く悲しい性の男をダンカンが熱演している。
しかし…。

“普段は、とても感じの良いお父さんで、挨拶もキチンとするし、とてもそんな恐ろしい事をする人には見えませんでした。ご近所でこんな事件が起こるなんて… 本当にショックだわ”

これは、よく凶悪事件が起こった時のテレビ・ニュースに出て来るおばはん達の異口同音のコメントだ。
もう少し、ごく普通な感じの男が演じたら、ワンランク上の怖さが出たかもしれない。

利重剛、立川志らく、菅田俊ら、達者な俳優たちが作品に厚味と立体感を加えている。

(2008.2.28)