シネマ大全 さ行・シ

 ジャーヘッド    2005年 アメリカ

祖父も父も“ジャーヘッド=ポットのように刈り上げた頭=頭が空っぽの海兵隊員”という青年スオフォード。18歳になって迷わず海兵隊に入隊した彼は、新兵訓練という名の虐待に耐え切り、偵察狙撃隊STAの候補に抜擢される。過酷な訓練の末、60名の候補者から絞り込まれた8名に残ったスオフォードは、1発の銃弾に命を賭けるエキスパートへと成長して行く。そんなある日、CBSニュースがイラクのクウェート侵攻を告げる。出撃の時を前に、アドレナリンを発散させる若き兵士たち。ついにスオフォードの戦争が始まろうとしていた…。


“人生にトラブルはつきもの。悩めば、それは倍になる。幸せにやって行こうぜ”こんな歌の文句から始まるこの作品は、湾岸戦争での実体験を元にしたベストセラー小説の映画化。

イラクに行くまでは、スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」にも似た厳しい訓練が続く。しかし、実際に戦地へ行ってみると敵の姿など何処にもない、360度の砂漠が果てしなく続いているだけだ。若い兵士たちの“時間と命の持て余し方”は、北野武監督の「ソナチネ」に似ている。戦争の半分は、もしかすると“退屈との闘い”なのではないか?「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督の語り口は決して上手くないが、真意はしっかり伝わって来る。

あの砂漠の茫洋とした、何もない感じを表現した撮影と、ジェイミー・フォックス伍長が最高。もう少し、テンポとコンパクトさがあれば、なぁ…。

2006.2.10)