シネマ大全 さ行・シ

 13歳の夏に僕は生まれた    2005年 イタリア

北イタリアのブレシャで工場を経営する両親のもと何不自由なく暮らす13歳の少年・サンドロは、夏休みに地中海クルージングに繰り出すが、誤って夜の海に転落してしまう。助けてくれたのは、不法移民がひしめく密航船に乗っていたルーマニア人のラドゥとアリーナの兄妹だった。彼らのお陰で何とか飢えと恐怖を凌ぎ、イタリアの移民センターに保護される。兄妹の力になりたくて、喜びの再会を果たした両親に彼らを養子にしてほしいと頼むのだが…。


「輝ける青春」のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督が、イタリアの移民問題に挑んだ。友だちを助けたい一心で行動する少年は、胸が潰れそうな過酷な現実を目の当たりにした。その瞬間から、もう無邪気な子供ではいられなくなってしまった。チャン・イーモウ監督の佳作「あの子を探して」に通じる、“他人の為に行動する心の美しさ”にあふれている。

自分の国で、ちゃんと食べられて幸せに生きて行けるのならば、誰も移民になどなりはしない。本当の夜の海での危険な撮影に加え、実際に移民を収容する施設でロケを敢行したというドキュメンタリー・タッチが生きている。

ラストは、賛否両論だと思うが、こういう終わり方で、監督はイタリアの現実の厳しさを伝えようとしたのだろう。“局アナ”が完全に“デジアナ”に変わる頃、日本もまた、かの国からの難民問題で苦しむ事になっているかもしれない。

世界人類全てが、平和で豊かに暮らす方法は、なかなか見つからない。
かといって今更、労働者が団結して世界同時革命を起こす訳にも行かない。
20年前に読んだ本、J・F・ケネディ大統領の補佐官だったS・ソレンセンの著書「ケネディの道」には、“大統領は気付いていた、民主主義が完全な方法ではない事に。しかし、それは最善の道なのだ”と書いてあった。
やはり、必ず道はあるはずだ。

2006.6.2)