シネマ大全 さ行・シ

 下妻物語  2004年 日本

茨城県・下妻。田んぼ以外に何もない、ヤンキー文化花盛りの田舎町。果てしないあぜ道を、全身超メルヘンチックなファッションの女子高生が歩いている。彼女の名は、竜ヶ崎桃子(17)。桃子は住み慣れた関西から、この下妻にやむなく移り住む事になった。桃子は、崇拝する某ロリータ・ファッションブランドのある東京・代官山まで、約二時間半の道のりを、足繁く通い続ける。愛するブランドの服を買いたい一心で、個人販売のヤバい商売にまで手を出す桃子。ある日、桃子の前に時代錯誤のツッパリ・スケ番スタイル(おまけに乗っているのは、暴走族仕様バリバリの50cc原付バイク…!)のヤンキー少女・白百合イチゴが現れるが…。


実を言うと、全く期待していなかったのだが、なかなか面白かった。
例えが古くて恐縮だが、かつての映画「嗚呼、花の応援団!」の様なアホらしい楽しさとエネルギーに満ちている。
竜ヶ崎桃子役の深田恭子は、お人形さんみたいな可愛らしさが生きている。
白百合イチゴ役の土屋アンナは、芝居はワン・パターンだが、昨年から一年間、NHK教育テレビ「イタリア語会話」を観ていたので、何処か親しみを感じてしまう。
いつも堂々としている所が良い。

この映画で、一番、感心するのは、前半の語り口だ。ベタなギャグも強烈やで!
映画は、初めの入り口で観客がノレるかどうかが勝負なのだ。
今のテレビ・ゲームに慣れ切っている若い衆も、すぐに、この監督がタダ者ではない事に気がつくだろう。
思い切りのいい人に違いない。
中盤、ちょっと中だるみはするけれど、そういう心配は、たるみ切ったオバハンらに任せて、ヤングな君達は、ひたすら原付での無理な二人乗りを楽しみつつ、下妻の果てしないあぜ道を爆走するがいい。

そう、それでいいさ。 
たどり着けない人生でも、全てを賭けた彷徨いがあるだろう。

2004.6.5)