シネマ大全 さ行・サ

 ジャスミンの花咲く   2004年 中国

1930年代の上海、写真館を経営するシングル・マザーに育てられた茉は、映画スターに憧れるごく普通の18歳の少女。そんなある日、彼女の元に映画制作会社のオーナー孟が現れ、何と彼女を映画に出演させると言うのだ。そして、その出逢いは彼女の運命を大きく変えて行く事に…。
上海のある女系家族三代にわたる女たちの婚姻物語。


20世紀(1930年代、50年代、80年代)に揺れた中国と女たちの運命を描く。チャン・ツィイーが、女系三人“茉”、“莉”、“花”のそれぞれの若い時代を演じ、一人三役に挑戦、金鶏賞の最優秀女優賞を獲得した。 

“「袖すり合うも、他生の縁」というのは、現世で縁のある人とは、前世や来世でも縁があるという事なの。まるで一つの劇団の様に、同じ役者が、今回は兄妹だったのが、前世では夫婦で、来世では親子という役を演じるかもしれない”

これは、美輪明宏さんの発言。そう考えると、はじめは少々無理がある様に思えた“一人の女優が親子三代を演じる”というアイデアも、寓話的な力強さを帯びて来る。     文化大革命を含む、近代中国の50年間に渡る時代の揺れ動きに、この三人の女も家族も大いに翻弄されたに違いないが、その辺の際どい接点は、当局を恐れたのか、うまく避けられている。それ故、映画全体に深みが出ず、残念だ。

それと、3人の女の“気の強さを支える何か”が、今ひとつ見えて来ない。

だが、“チャン・ツィイー”という名のショーは、キチンと成立しているし、女のコワーい情念の発露と物語の語り口、微妙なストーリーの省略の上手さは、なかなかだ。

チャン・イーモウ作品のカメラマンとして知られるホウ・ヨンの第一回監督作品。    
彼も、きっとチャン・ツィイーを愛しているね。

気を付けてネ! 次回作を楽しみにしています。

2006.6.3)