シネマ大全 さ行・サ

 さよなら、さよならハリウッド 2002年 アメリカ

かつてはアカデミー賞を2度も受賞した映画監督だったヴァル・ワックスマン。今は、生活の為に不本意ながらもテレビ・コマーシャルを撮るしかない過去の人になりつつあった。ある日、ハリウッドの映画プロデューサーである元妻・エリーの強力なバックアップにより、大作の監督に就けることになる。しかし、撮影開始寸前、極度のストレスからヴァルの目が見えなくなってしまう。もしも、その事実がバレれば、この仕事は無くなってしまう。
仕方なく、目が見えない事をごまかしながら撮影を開始するのだが…。


ちょっと久しぶりのウディ・アレン監督・脚本・主演作品。室内シーンが多いが、スケールの大きさを感じるのは、何故なのだろう?ファースト・シーン。横移動するカメラは、はじめ、そこに登場している人物の全てを移さず、段々とパズルの全体が見えて来るようになっている。

本当に、楽しめた。1975年からずっと、ウディ・アレンの新作を観る幸せをほぼ毎年、かみしめている。ここ数年、やや低迷していた気もするが、この作品が、いつもの“予定調和”の上で作られていながら、満員の試写室のムードがこんなにも良いのは何故なのか考えてみた。

そう、映画の中のウディ・アレンは“アメリカの寅さん・インテリ版”なのだ。“ああ、また寅=ウディ・アレンが、いつものドジを繰り返しているゼ”という安心感はもう、世界中の他のどの映画でも味わえない気がする。
寅さんと違う所は、ラストでまた旅に出るのではなく、大抵は落ち着いて終わる所だ。

“ヤクザな所がない、観客が見上げる存在の寅さん”という、ほぼ同じ様なキャラクターを30年近く演じているウディ・アレン。今回は映画監督の役だが、映画全体が彼自身を取り囲む世界であるハリウッドや映画批評、プロデューサー達への痛烈な皮肉にも見えるから、面白い。

彼は、今年70歳になる。美輪明宏さんと同い年だが、黙っていれば誰にもバレないだろう。
いいなぁ、年齢不詳って…。
実は、この映画、2002年の作品なのだ。早く次のが観たい。

2005.2.18)