相変らずのテキヤ稼業で全国を旅して廻る車寅次郎ことフーテンの寅は、東北のとある田舎町で、変な男と出会った。男は兵頭と名乗り、親の七光りもあって一流会社の“おかざり重役”で、冷たい家庭と平々凡々な生活に飽き、蒸発したのだった。兵頭は寅と一緒に旅をして廻った。そんなある日、函館の屋台のラーメン屋で、寅は2年ぶりにリリーと再会したリリーは鮨屋の亭主と離婚し、もとの歌手に戻って、全国のキャバレーを廻っていたのだ。。翌日から三人の、金は無く侘しいながらも楽しい旅が始った…。
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シリーズ第15作目。
まるで舞台みたいに、幾つかの“キメ”のシーンが設定されていて、名シーンが盛り沢山だ。
中でも、寅が一旦、仲違いしたリリー(浅丘ルリ子)を雨の駅に番傘で向かえに行くシーンが、たまらない。渥美清は、他のシーンでは見せた事がない“キメ”の表情を見せる。
リリー |
迎えに来てくれたの? |
寅 |
バカヤロウ〜、散歩だよ |
リリー |
フフフ! 雨の中、傘さして散歩してんの? |
寅 |
悪いかい |
リリー |
濡れるじゃない |
寅 |
濡れて悪いかよ |
リリー |
風邪引くじゃない? |
寅 |
風邪引いて悪いかい |
リリー |
だって、寅さんが風邪引いて寝込んだら…私、つまんないもん |
この後、俯瞰のショットで捉えた2人を包んだとらやの番傘は何故か、時計と反対方向にクルリと半回転するのだ。寅さんシリーズを“ダサい”とか“田舎臭い”という向きには一度、このシーンをじっくり見る事をお薦めする。古今東西、これほど粋なシーンは、滅多にないゾ。
カッコ悪い事は、なんてカッコ良いんだろう。
(2005.12.8)

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