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                  | 昭和19年の春。特別年少兵として戦艦大和に乗り込んだ神尾たちは、憧れの大和を前にし目を輝かせていた。しかしその喜びも束の間、彼らを待ち受けていたのは厳しい訓練の日々だった。神尾たちは上官である森脇・内田の叱咤激励のもと訓練に励んでいたが、彼らの努力もむなしく、日本は日増しに敗戦の色を濃くしていた。そして翌年の4月。米軍が沖縄上陸作戦を開始したのを受け、大和は沖縄特攻の命を下される…。
 |    日本の敗色が濃いため、訓練期間を短縮して戦艦に送り込まれ死んで行く15、6歳の少年兵を演じる若い俳優たちの顔が、どれも良い。台詞のない俳優たちも皆、誠実に戦中の昭和を生きていた。
 
 原爆で死んで行く蒼井優の屈託のない笑顔は、戦前の日本人が持っていたに違いない素朴さ・実直さを具現化してた。今村昌平監督の映画「黒い雨」の田中好子に通じるものがある。
 
 編集が少々荒いなと思うシーンが、幾つかあった。戦闘に負け、東シナ海に沈んで行く戦艦大和がはっきりと分かるロングのカットがないのが残念だ。
 
 でも、私にとっての佐藤純彌監督の最高傑作「植村直己物語」と同じく、観客に対して最後まで誠実な映画だった。
 
 激しく血生臭い戦闘シーン、厳しい規律、勝手な上層部…。
 映画の何処を探しても、“戦争反対”の直接的なメッセージは見えない。だが、映画全体で、“こういう、むなしい、最悪の結果を招いたのは一体、何処の誰なんだ?”と、語っている気がする。その静かな怒りが、戦闘シーンよりも、むしろ岩崎加根子、余貴美子、高畑淳子らが演じる母の姿によって伝わって来た。
 
 “YAMATO”というルビは、若年層の集客を狙ったものだろう。
 このローマ字に、戦後の60年間を思う。
 
 ふと、思った。
 中国で最も尊敬されている日本人俳優は高倉健だが、映画の語り部である仲代達矢が演じた役を、もしも健さんが演じて、中国でこの映画が公開されたら、観客の反応はどの様なものになるのだろうか?いや、このままでも、中国の一般観客の反応が見てみたい。
 
 戦争は、恋愛と同じで、始めるのは簡単だが、終わるのは難しい。
 しかし、どんな戦争もいつかは終えなければならない。
 ならば、こんな悲惨な状態になる前に、国のリーダー達にもっとしっかりして貰わねばならない。
 世界で一番、どちらか一方に傾きやすい国・日本丸の運航に最も大切なのは、そのバランスと方向のたゆまざるチェックなのだ。
 やはり、参議院は必要だ。
 (2006.2.3) 
 
               
 
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