シネマ大全 あ行・オ

 オペラ座の怪人   2004年 アメリカ

19世紀のパリ。オペラ座では、連日華やかなショーが繰り広げられる一方、怪人・ファントムによる事件が連発していた。 
若く美しいクリスティーヌは、謎の師“音楽の天使”からレッスンを受け、やがてオペラ座のプリマへと成長する。
クリスティーヌの幼なじみ・ラウルは、彼女の輝きに惹かれ愛を告白するが“音楽の天使”ファントムはクリスティーヌを地下洞窟へ案内し、自分と共に生きるよう願い出た。
しかし、クリスティーヌがファントムの素顔を知ったことから、運命は悲劇へと向かい始める…。

ここに出て来る“音楽の天使”とは一体、何のメタファなのか?
深読みすれば、キリがないが“音楽の神様”と同義語でない事だけは確かだ。

現代のクリエーター達がよく口にする言葉に“神様が降りて来る瞬間がある”というのがある。

しかし、不幸な生い立ちの天才“オペラ座の怪人”彼自らが意識する“音楽の天使”というのはきっと、そんなカッコいい響きのするエピソードとは無縁のものに違いない。
もっと殺伐とした荒れ果てた荒野を一人心細く、しかし命懸けで歩んで行く姿なのではないだろうか?

そう、私には“音楽の天使”とは、作曲家・アンドリュー・ロイド・ウェーバーの創作の苦悩そのものに思えてならないのだ。
絢爛豪華なシーンと素晴らしい音楽の連続に圧倒されながらも、“ああ、この舞台裏を描いている作品のその又舞台裏では、数多くの人々の汗と涙が流されているんだろうなぁ”等と、考えてしまった。

しかし、ここに展開されている世界は、もう100年以上も前の出来事。
全ての登場人物は、既に墓場で眠っているはずだ。
この映画は、墓地のシーンで終わっている。
映画が終わって、劇場内が明るくなった時、全てが空しい気がした。

でも、仕方がないね。我ら皆、死すべき運命なのだ。
いや、だからこそ、こう言いたい。こんなに楽しませてくれて、本当にありがとう!そして、末席ながら、自分自身も人を楽しませる立場にいる事をありがたく思った。

2005.3.13)