イランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督からも高い評価を受けた「いつものように」(’97年)のけんもち聡監督の最新作。我々、特に東京で暮らしている人間のほとんどが相当、おかしな生活をし、汚れちまっている事に改めて気付かされてしまう作品。
何よりも、監督に変な野心がないのが映画を品のあるものにしている。近頃、あざとくて、あざとくて、クサさが目に沁みる映画がいかに多い事か!
私は大っ嫌いなんだよ。
“わかったよ、アンタのCG技術が大したモンだって事はさ!”というような映画。
“わかったよ、アンタの交友関係がとても広いって事はさ!”というような映画。
“わかったよ、アンタが小津やタランティーノが大好きだって事はさ!”というような映画。
そんな事、ホーム・ビデオでやってくれ。1800円、払わされる観客の身にもなってくれ。
最近では結構好きだった「ホテル・ハイビスカス」さえも、この映画の前では、あざとく見える。細かい事を言えばキリがないが、何かに依存しよう、という見え透いた根性が全くない所が何より気に入った。けんもち監督と一時期、親しくしていたが、実際の彼もこの映画の様に、一言で言えば、不器用だけど、汚れてない人。
同じ映画を何度か観ても、出ている俳優の正体はつかめないが、監督の人間性はバレバレなのだ。映画監督はすべて、精神的ストリッパーさぁ。
ゆやーん、ゆよーん、ゆや、ゆよーん…。
言っとくけど、今夜は一滴も飲んでないからね。
(2003.9.5)
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