シネマ大全 か行・コ

 GOAL!  2006年 アメリカ=イギリス

サンティアゴは、メキシコから米国へと一家で不法入国し、ロスに暮らす20歳の青年。昼は父と共に庭師として働き、夜もアルバイトをして生計を立てていた。父親は息子と事業を始めたがっているが、地元のサッカー・チームのスター・プレイヤーでもあるサンティアゴは、プロ選手を夢見て、密かに貯金もしていた。そんなある日、試合後に一人の男がサンティアゴに近づいて来る。男は、元英国ニューカッスル・ユナイテッドのスカウトマンだった。サンティアゴは、その男から、ロンドンへ行きプロ・テストを受けるよう強く薦められるのだが…。

貧しい若者が、才能を見出され、異国の地でスター・プレイヤーを目指す、サクセスストーリー。クノ・ベッカー演じるサンティアゴの、サッカーにかける情熱とひたむきさ。ハングリーだが、人を出し抜く事をしない純潔な青年の爽やかが観客の共感を呼ぶ。

“そこが、優等生的過ぎて、どうにも嫌いだ”

というあなたは、心が汚れている。たまには、真っ直ぐなものを観て、感動しなさいよ。それに、忘れちゃいけない事がある。映画に出て来る登場人物は、“人間のニコゴリ”みたいなものなのだ。

登場人物の多くは、現実の人間よりも誇張されていて、何かの意識や考え方、時代性などを具現化する役目を背負っている。そう、サンティアゴは、メキシコの森田健作なのだ。森田健作の良いところは、真っ直ぐな所だ。

サンティアゴと父親の関係が、もう一つの軸となっている。父親は、夢を見ようとする子供の思いをいつも潰して行く。私の父もそうだったが、いつも逆らって来て本当に良かったと思っている。

本物のスター・プレイヤー達が、本人役で出演している。サンティアゴよりも、ベッカム選手の方がカッコ良いのはご愛嬌。ラスト・シーンでは、不覚にも泣いてしまった。久しぶりに父の事を思い出したが、今更、負けるもんか。

この映画は、サンティアゴの成功物語・三部作の第一部で、来年春公開予定の最終章は、ドイツ・ワールドカップの会場でもロケをし、中田英寿選手も出演するというから、今から楽しみだ。

(2006.6.10)