その名の通り、皇帝ペンギン(エンペラー・ペンギン)の生態を撮影したドキュメンタリー。本編86分の映画に対して、その厳寒の極地・南極での撮影時間は、延べ8880時間にも及んだ。南極という氷と雪の世界の雰囲気を一層醸し出しているのは、フランス音楽界を騒がせた大型新人であるエミリー・シモンによる幻想的な音楽。更に、仏映画を代表する俳優らをナレーションに起用するなどドキュメンタリー映画の枠を超え、南極で現実に繰り広げられている皇帝ペンギンたちの物語として見る事ができる。
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立って歩くペンギンたちは、“人間みたい”というよりは、“人間そのもの”だ。この映画を観ると、自分が“人類の一員”である事が良くわかって来る。厳寒の南極、ブリザードの吹きすさぶ中、じっと身体を寄せ合って耐えている何百というペンギン達。真冬の北朝鮮だって、もう少し暖かいはずだぜ。あまりにも過酷なその映像は、流血の戦争CG映画よりも遥かに残酷だ。何故なら、ここにあるのは全て彼らにとっての“現実”なのだから。彼らは、24時間、死と隣り合わせなのだ。可愛く、苦しく、力強い。
それにしても、ペンちゃん達!
生きて行くのは本当に大変だね。
ワシら人間も大変だけど、あんた等ほどじゃあないよ。
人生、しょっぱい事の連続だけど、現代ニッポンの多くの人々は、“すごく面倒”と“かなり大変”と“自分だけ不幸”とを取り違えていないか?
南極のシンプルで美しい映像、殺伐とした大自然の厳しさ、ペンちゃん達の“実人生での熱演”…。
これは、リュック・ベッソン監督の「アトランティス」以来の快挙。
この夏、必見の一本を発見したゾ!
(2005.5.28)
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