シネマ大全 か行・コ

 恋するトマト〜クマインカナバー 2006年 日本

野田正男、45才。親孝行で気の優しく要領が悪く不器用で、今だに結婚も出来ない農家の長男。今度こそはと思った田舎暮らしに憧れる女との縁談もついに破談に終わる。見かねた農業仲間の紹介で、フィリピンパブで働く女・リバティを紹介され、結婚を前提に交際を始める。そして、フィリピンに渡っての結婚式。だが、正男を待っていたのは結婚詐欺の辛すぎる現実だった。農協に借金をして持参した結納金をだまし取られ、リバティは消える。生きる気力をなくした正男は浮浪者のようにマニラの街をさまよう…。

ホームレスになった正雄に、“クマインカナバー(御飯、食べたの?)”と、食べ物を差し出してくれる見知らぬホームレス。優しい人もいる、貧しいが豊かなフィリピン。一年後、女衒に成り下がった正雄の心を救うのは、何と…。

在フィリピンの日本人を演じる清水紘治と石井光三の胡散臭さは、天下一品だ。

不器用な男・正雄の誠実な心根が、古典落語の「紺屋高尾」の如く映画自体の誠実さに繋がった。俳優・大地康雄の企画・脚本・製作総指揮・主演による力作。こんなに思い入れがあるのに何故、監督をしなかったのか、明後日、ご本人に訊いてみようか。

(2006.5.27)