夜の大都会ロサンゼルス。タクシードライバーのマックスは、空港でクールないでたちのビジネスマンを拾う。男はヴィンセントと名乗り、多額のチップと引き替えに、マックスに一晩の専属運転手を依頼する。最初の目的地で事件は起こった。ヴィンセントが建物に消えて数分後、マックスの頭上に死体が降ってきたのだ。驚きに言葉を失うマックス。車に戻ったヴィンセントは、自分が組織に雇われた殺し屋であることを明かし、死体をトランクに詰んで次のターゲットの元に向かうよう命じる。２人の長く危険な夜が始まった…。

いやぁ、久しぶりに大人の男の映画をじっくりと堪能した。　大満足だ！　
何と言っても、「ヒート」のマイケル・マン監督なのだ。一夜の出来事を描いた作品だが、彼は何よりも映画が“時間の芸術”である事を熟知している。時には、道路にコヨーテも現れる夜のロサンゼルスの空気感、あの殺伐としたムードの中、物語は展開するが、全篇、何処にも無駄がなく、息もつかせない。

銃で脅迫されていたはずの、しがない運転手・マックス（ジェイミー・フォックス）が、殺し屋・ヴィンセント（トム・クルーズ）によって“成長”して行く所が面白い。昨日の「ＴＵＢＥ」に続いて、またまた地下鉄の中のアクション・シーン。「裏窓」「フレンチ・コネクション」「ダイ・ハード」「レオン」「トム＆ジェリー」そして「ヒート」…。今日も数多くの映画の記憶が甦って来たが、早く「ニキータ」の“掃除屋”（ジャン・レノ）が現れてくれないかなぁ、と思えるシーンもあった。“コラテラル”とは、巻き添えの事だ。

トム・クルーズは、自分を捨てている感じがして来て、益々良くなって来た。このまま、まだまだアカデミー賞を取らずに、あらゆるチャレンジを続けた方が、未来の彼の為にはベターだ、と言ったら、残酷だろうか？とにかく、心の底から“プロの映画を見た”と、実感出来る一本だった。

（２００４.１０.１６）