シネマ大全 あ行・イ

 イン・ハー・シューズ  2005年 アメリカ

弁護士のローズは、義理の母親に家を追い出された妹・マギーを仕方なく自宅に居候させるが、当のマギーは、仕事も決まらず勝手し放題。
挙げ句、ローズの恋人とベッド・インした所を目撃され、家を追い出されてしまう。
行き場を失ったマギーは、亡くなったと聞かされていた祖母・エマを頼りに、フロリダへ向かう。孫娘の突然の訪問に喜ぶのもつかの間、マギーの奔放さに辟易したエマは、彼女を老人たちの施設で働かせる事に。そこでマギーは、新たな自分を発見していく…。

「エデンの東」のリメイクとも言える、この物語の舞台は当初、フィラデルフィアだ。
トム・ハンクスがオスカーを獲得した「フィラデルフィア」という映画があったが、アメリカ人の多くは、フィラデルフィアという都市に何処か知的な響きを感じるらしい。
映画の中で、ローズ(トニ・コレットが好演)が階段をじゃんじゃん駆け上がって行く、「ロッキー」へのオマージュとも取れるシーンがあり、思わずニヤリとしてしまった。

そして、舞台はフロリダへと移る。
色彩の濃さ、太陽光線の濃さ、更に金持ち専用老人ホームに住む老女達の、したたかな濃さ…。寒そうだったフィラデルフィアとの対比がいい。
祖母のエマという人は、優秀なローズと駄目なマギーの、未来図の一つのサンプルなのだ。
大女優・シャーリー・マクレーンは、そう思わせる位の懐の深さを持っている。
この三人が織りなす三角形が、実にいい形をしている。

「ロッキー」でのポーリー(バート・ヤング演ずるエイドリアンの兄)は、“成功しなかった、もう一人のロッキー”だった。
世の中に勝ち組と負け組がいるのなら、全てを包み込む、百戦練磨のお婆ちゃん達だっているんだゾ。

奔放なマギーを、かつてはお嬢様っぽかったキャメロン・ディアスが演じているのが面白い。
マギー、今度こそ、ちゃんとした男を掴むんだよ。
オレ、ちょっと心配だなぁ…。
泣きながら結構笑える、心温まる佳作。
この秋一番のお薦めだ。

2005.10.29)