シネマ大全 あ行・エ

 エターナル・サンシャイン   2003年 アメリカ

恋人同士だったジョエルとクレメンタインは、バレンタイン・デーの直前に別れてしまう。そんなある日、ジョエルのもとに不思議な手紙が届く。“クレメンタインはあなたの記憶を全て消し去りました。今後、彼女の過去について絶対触れない様に…”。自分は仲直りしようと思っていたのに、さっさと記憶を消去してしまった彼女にショックを受けるジョエル。彼はその手紙を送り付けてきたラクーナ医院の門を叩く。自分も彼女との記憶を消去するために…。

2人がケンカ別れした現在から始まり、幸せだった頃へと逆回転で進んでいく複雑で巧妙な脚本を手掛けたのは、「マルコヴィッチの穴」のチャーリー・カウフマン。こういう映画は、もう、観客が乗れるか乗れないかだね。

語り口が上手いかどうかで言うと、大して上手くない。アイデアや映像のキラメキがあるかどうかで言うと、かなり面白い。「トゥルーマン・ショー」の大虚構を生き抜いて来たジム・キャリーが、以前の様に痛々しくないのが嬉しい。「タイタニック」のケイト・ウィンスレットは、切なさとハジけ方不足を補う品と頑張りが伝わって来て誠実だ。

昨今は、本当の所は何が真実なのか、実に怪しい。
この映画にはノレなくても、長い時間が経つと“あれは、3年前の事だっけ?いや、4年前かな?”という事が、君にもあるだろう? 11年前の大地震は、2年前の大失恋よりも強烈に違いない。

話がそれた。
私が言いたいのは、この世で、人の気持ちほど移ろいやすいものはないという事。
忍ばずの池の蓮の葉の上に置かれた小さな万華鏡の様な映画。
それに乗れるかどうかは、観客次第だが、見逃す手はない。
しかし、この葉っぱは、相当危うい。
この次は、ただただ美しい朝露の様な映画が観たい。

2006.1.28)