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 エルヴィス・オン・ステージ〜スペシャル・エディション   1970年 アメリカ

大スター、エルビス・プレスリーのラスベガスでのステージを記録した貴重なドキュメンタリーを再編集。絶頂期のエルビスの魅力と素顔をあますところなく伝える。
’70年8月に行われた“ビッグ・エルビス・サマー・フェスティバル”のリハーサルから完全密着。プレスリーのパフォーマンスを臨場感たっぷりに伝えると共に、ファンの熱狂ぶりも克明に記録する。

30年ほど前に、オリジナルを初めて観た時には、プレスリーはまだ生きていた。
スタジオ内の敷地で親友と一緒に自転車の二人乗りをする茶目っ気と、“本番で歌詞が出て来るか、本当に不安なんだ”と、バンドのメンバーに告白するシーンが印象的だった。

亡くなった時、私の母の落胆が大きいのに驚いた。
母は、プレスリーと同時代を生きて来たのだった。第2次プレスリー・ブームをリアルタイムで知っているが、こうして今、改めて観てみると“ロックの創始者”という言葉が最も適切だと思う。ビートルズも、ボブ・ディランも、ローリング・ストーンズも皆、彼の影響を受けている。

客席の女の子にキスをしまくり、ノン・ストップで歌いまくるエルビスは、黒光りしていた。何処までもカッコ良く、かつて片岡義男氏が指摘した“官能的な弱さ”を最後の最後まで維持していた。

今、生きていれば、70歳。
42歳での急死は、本当に残念だが、この映画の中のエルビスは、間違いなく幸せだったと思う。そして、また“再生”ボタンを押すだけで、この後、何度でも私たちを楽しませてくれる。そう、彼は、今も生きているのだ。

2006.1.18)