シネマ大全 あ行・ア

 アビエイター 2005年 アメリカ

若き富豪ハワード・ヒューズの夢は、世界的映画監督と航空家。
1930年、莫大な予算をつぎ込んだ映画『地獄の天使』を成功させたハワードは、航空会社を買収し、ライバル社パンナムとの探りあいのなか、軍飛行艇ハーキュリーズの開発に乗り出す。1946年、テスト飛行中に墜落したハワードは、瀕死の重傷を負ってしまう。
空軍からは、戦争の終結を理由にハーキュリーズの契約を取り消されたうえ、軍用資金横領の疑いで公聴会に出席する事になるのだが…。

約3時間の大作だが、遂に最後までハワード・ヒューズ自身が私の座っている客席まで降りて来てくれないのは、何故なんだろう?
エロール・フリン役のジュード・ロウの出番が少ないのは残念だが、スタッフもキャストも実に良い仕事をしている。
少年時代に伝記を読んで以来、ヒューズに憧れを抱いてきたというディカプリオも入魂の演技だが、今一つ、ヒューズが感じた“痛み”みたいなものが伝わって来ないまま、映画は終わってしまった。

そう、かなり長いのに、何となく“第1部”のみを見せられた感じが残るのだ。
先月行われた「第77回アカデミー賞授賞式」の始まる前、“監督賞が欲しい”と明言していた無冠の帝王=マーチン・スコセッシ監督だが、あの「レイジング・ブル」で見せてくれた様な“人間の心の闇の果てしなさ”は、やや薄味に過ぎた気がして残念だった。

何と次回作でも三たび、レオちゃんと組むと言うから、今度は間違いないだろう。
枯れないで!マーチン。葉巻でも吸ってもっとザラザラになって!レオちゃん。
それにしても、キャサリン・ヘップバーン役のケイト・ブランシェットはコワい女優だ。
さすが映画「エリザベス」で、血で血を洗う戦いを生き抜いて来ただけの事はある。

2005.3.17)