シネマ大全 あ行・ア

 アイ,ロボット 2004年 アメリカ

2035年、シカゴ。家庭用ロボットが人間のパートナーとして普及している時代。
ある日、ロボット工学の第一人者である博士の殺人事件が起きる。容疑者は最新型ロボットのサニーらしい。“ロボット3原則”により、絶対に人間に危害を加えられないはずのロボットが犯人なのか?その謎を追及するシカゴ市警の黒人刑事と美貌のロボット心理学者は、やがて、人類の存亡がかかった驚愕の真相に迫ってゆくが…。

“昔が懐かしいよ”

“どの時代?”

“人が人を殺した時代さ”

これは、冒頭に出て来るウィル・スミス演じる刑事とその上司との会話。
映画を観た後によく“大スペクタクルのアクション・シーンがCGバレバレで白ける”等という感想を聞くが、この映画に関しては、そのアクション・シーンがロボット戦争になって来るので、そういう違和感はあまりない。

アイザック・アシモフの原作からインスパイアーされた脚本だそうだが、フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(傑作!)が原作の映画「ブレード・ランナー」みたいに“へぇー、未来ってこうなんだー…”と思わせる設定がもっと欲しかった。

「ブレード・ランナー」は、2019年の設定だったが、何だかそれよりも前の時代みたいな印象を受けた。こういうSF映画は、ごく初めの段階で観客をやっつけて、圧倒してしまわないとダメなんだ。

10年くらい前、映画「世界の果てまでも」のキャンペーンで来日したヴィム・ヴェンダース監督に会った事があるが、彼はこう言っていた。
“多くのSF映画がダメなのは、その設定ではなく、登場する未来の人間の考え方そのものが未来人のそれになっていないからだ。私の知る限りでは「ブレード・ランナー」と「2001年宇宙の旅」だけが例外だ”
試写室で、久しぶりに手塚眞監督に会った。
彼のお父上は、世界で最も有名なロボットの漫画を創作した偉人なので、何となく嬉しかった。

2004.8.13)