シネマ大全 あ行・ア

 アイラン   2005年 アメリカ

2019年。
リンカーン・6・エコーとジョーダン・2・デルタは数百名の住人と共に、閉鎖的な居住施設の中で暮らしていた。住人たちの日常は全て監視されている。施設の外に出られる方法はただひとつ。それは、”アイランド”行きの切符を手にする事…。

しかし、いつしか意味不明の悪夢を見るようになったリンカーンは胸騒ぎをおぼえて、規律だらけの日常に疑問を感じ始める。真実を探ろうとするリンカーン。しかし、その真実はあまりにも衝撃的なものだった。彼の存在に関わる全てはまやかしであり、アイランドの話も単なる作り事。施設に暮らす全ての人々は、死んで初めて価値が上がるのだ。時間が差し迫る中、リンカーンとジョーダンは、まだ見ぬ外の世界へと命がけの脱出を試みる…。

“ここモントリオールは、良い所ではありませんね。やはり、共和国が一番です”“食事も良くありません。早くキムチが食べたいです”。

つい先日、ニュースで流れたシンクロ女子選手のコメントだ。この映画を観て、もしかすると彼女らは心の底からこう思って発言したのではないか、と思えて来た。

かの国の人々とこの映画に出て来る○○○○達は、同じく“人権”という概念すらないのではないか?そういう、ゾッとする怖さを秘めている。人間にとって最も大切なのは、今も昔もこれからも、“育ち=環境”なのだ。

多過ぎるアクション・シーン&娯楽色をユアン・マクレガー&スカーレット・ヨハンソンの魅力が救っている。

途中、出て来る“自動クギ打ち機”のシーンが、キリストの磔刑を思い出させて興味深い。
科学は行ける所まで行くだろうが、“科学と宗教が一致する日”は、いつか来るのだろうか?
娯楽アクション映画の顔をして、様々な深みが落とし穴みたいに隠されている佳作だ。

(2005.7.27)