シネマ大全 あ行・ア

 愛の落日   2003年 アメリカ

1952年、フランス占領下のベトナム、サイゴン。初老の英国特派員・ファウラー(マイケル・ケイン)と自国アメリカから使命を受けてやって来た聡明な青年・パイル(ブレンダン・フレイザー)。二人は、ふとした事から出逢い、友人となるが、ファウラーの愛人である若く美しいベトナム女性・フォング(ドー・ハイ・イェン)に、パイルも恋をしてしまう。お互いを尊敬しながら友人関係を育んで行く彼らだったが、やがてフォングをめぐって二人の間に微妙な亀裂が生じてゆく…。

ネタバレするので、詳しくは書けないが、単なるラブストーリーではなく、アメリカという国がジワジワと、インドシナ半島に介入して行く過程を描いた映画でもある。
’80年代の半ば、私は落合信彦の本を良く読んでいた。何十冊も。
「2039年の真実」「勇者還らず」「北京より愛をこめて」…。
それによると、ベトナムに麻薬を持ち込んだのは、中国の周恩来の作戦で、主に売春宿で娼婦から米兵に安価で供された。
これにより、アメリカ社会は戦争が終わって30年近くたった今でも、麻薬による犯罪に苦しめられている。周恩来はアメリカに勝ったのだった。

話がそれたが、この映画はもっとサスペンス仕立てにしても良かった気がする。
サスペンス、切羽詰った状況にこそ、愛は育つ。
いつも思う事だが、恋愛映画というのは、登場人物が観客に惚れられなきゃダメなのである。

2004.8.21)