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 I am 日本人 2006年 日本

アメリカ在住の日系三世、エミー・ワタナベは、ハイスクールを卒業したばかりの明るい19歳。
日系一世のエミーの祖父は、武士道精神を持ち、質実剛健がモットーだった。エミーはその影響を受け、日本の歴史や文化、伝統などに興味を持ち、 憧れを抱いていた。憧れが嵩じて、エミーは日本への留学を決意。しかし、日本に着いたエミーの目に飛び込んで来た光景は、祖父から聞いた日本とは まるで違い、古くから伝わる伝統や文化などは、何処にもなかった…。

森田健作・原案、製作、脚本、主演による作品。
“21世紀の森田健作”は、何と日系三世で19歳の超明るいアメリカ人女性だった!この発想が、面白い。彼女と中国人留学生とが、英語で延々とお互いの国を激しく非難し合うシーンが凄い。

“大和魂とは何か?” “日の丸は是か非か?”という、大変、困難なテーマに真正面から挑戦している力作だ。実際、こういう“ストレートな映画”には、なかなかお目にかかれない。うつむき加減で、気難しそうなフリをしている方が、ずっと簡単だ。森田健作という“常に直球の人”にしか作れない映画だ。

この映画には、下町の商店街の“気の良い人たち”以外にも、タイ人留学生、オカマ、ダメな大学生などが、続々出て来る。剣道の試合、お祭り、お見合い、そしてアメリカ・ロケのシーンも実に効果的だ。

日本は、かつての有名なテレビ・ドラマ「俺は男だ!」の時代とは、大きく変わってしまった。今思えば、あの頃は、全てがシンプルで純粋だった。この映画の持つバリエーションの豊富さは、そのまま、現代ニッポンの多様性、複雑さにつながっている。

神が死んだ後、正義がカミング・アウトし、忠誠心もとうの昔に居場所をなくした。“熱血漢”が、生きにくい時代になった。この数十年の間に、多くの“大切な何か”が失われた事には皆、うすうす気付いている。

しかし、本当の所は、日本人の大半は、まだ“下町の商店街の気の良い人たち”なのではないか?そのハートの中の本当に大切な部分は、まだ失われていないに違いない。久しぶりに、そんな事を考えさせてくれた。 自分が出ているから、言うのではない。先入観を持たず、多くの方に観て頂きたい直球勝負の作品だと思う。

2006.2.2)