岡村通信 No.36   「キノコ奉行の左側」 2003年9月29日


先日、某テレビ局の記者が慌てて、「小泉総理のナイゾウ・カイカクが…」と言ってしまったシーンを
たまに思い出しては福田官房長官の様なイヤらしい含み笑いをしてしまいそうになる近頃の私ですが、いかがお過ごしでしょうか?

【 最近観た映画の感想 】

映画『シモーヌ』 http://www.simone.jp/

CGで作られた、超!魅力的なバーチャル女優・シモーヌ。
彼女が実在している様に見せかけ、大成功する映画監督・アル・パチーノ。
彼の、時々見せるとぼけた様な表情がC・チャップリンそっくりなのは、映画の神様へのオマージュか?映画にとって最も大切なのは、そのムード作りだという事を改めて認識させられる一本。
撮影所というは、本当はもっと人が多くて雑然としているものなのだが、この映画に出て来る撮影所はほとんど人がおらず、ハリウッドなのに何処かムードがヨーロッパ的なのだ。
作り手のある種の美意識と、“あり得ない話の閉じさせ方”の上手さを強く感じる。

そう、これは寓話なのだ。何より、そのムード作りが見事だ。
映画の中で、パチーノ監督が「シモーヌの“メリル・ストリープらしさ”はもっと減らそう!」と言う台詞が出て来る。ずっと前に倍賞美津子さんが「彼女の、自分にカメラが向けられた瞬間に“あ、私、何かしなくっちゃ!”という感じが大嫌い」と言っていたのを思い出した。
メリル・ストリープはとても魅力的な女優だが、その意見にも一票入れたい。
ホンに演技とは謎だらけだ。

【 9月16日火曜日 午後2時半 香川県木田郡庵治町】

東宝映画『世界の中心で、愛をさけぶ』 原作・片山恭一
http://homepage3.nifty.com/writersgym/mystery/sekai.html
(行定勲監督・大沢たかお、柴咲コウ、山崎努ほか) の撮影二日目。

お葬式で、突然の雨が降り出すシーン。私の役はこの葬儀の司会者だ。
今は、1986年6月24日の午後、という設定。
この日は祭壇向けのカットで、前日に撮影した参列者向けのカットとは全く別の場所の、本物のお寺で撮影する。人工の雨降らしで私もビショ濡れになってしまうが、炎天下なのでかえって気持ちがいい。
エキストラの生徒達は昨日と違う子たちだが二つの場所の合成である事も含めて、映画を観た人は気付かないだろう。 本番は、一発でOKとなった。

その後、大雨の中での出棺のシーンを撮るが、途中でポンプ車の水がなくなったり、何だか天気が昨日と微妙に違っていたりで、なかなか進まない。
走り去る霊柩車の後ろの扉が開いてしまい、お棺が飛び出て下に落ちてしまったりもした。
良かった、中身がカラで…。
その一瞬は、何だかフェリーニの映画の中にいる様な気分になった。
撮影の準備を待っている間に、葬儀指導の向井さん(本職)に訊いてみた。

「こんな風に、出棺の時だけ大雨が降る、なんて事は過去にありましたか?」
「何度かあります。涙雨、って言うてるんですけどね」
「不思議ですね。そういう時は何かを感じますか?」
「ええ。やはり感じますね」

よく見ると、向井さんの顔はあの鈴木宗男議員に似ているが、彼よりは人生を達観しているのではないかと思う。 やがて撮影が再開された。大雨の中、かつて愛した女性の出棺を、遥か遠くから一人見送る重蔵(山崎努)。その向こうには海…。それは、まるで…一枚の古い絵の様だった。
素晴らしいシーンが撮れているはずだ。

「カット、OK!」の声がかかっても、山崎さんは重蔵のままだった。
私は「お疲れ様でした」と声をかける事も出来なかった。名画に声はかけられない。

映画の撮影は戦争やお祭りと同じで、皆、ある種の興奮状態にあるが

必ず終わりが来るものだ。 ここが世界の中心であるかどうかも判らず、愛を叫ぶ事もなく、私の出演シーンは終了した。全体の撮影は、オーストラリア・ロケも含めて12月まで続き、公開は来年の5月の予定だ。

【 私の最新の出演作品です  是非ご高覧下さい 】

テレビCF 『キリン一番搾り・きのこ炙り焼き篇』 放映中
役所広司さんの左側に座っている黒いセーターの男が私です。
15秒バージョンは、このURLでご覧になれます。
http://www.kirin.co.jp/about/toku/ad/IS/index.html

映画「『デコトラの鷲(しゅう)〜祭りばやし』 
10月11日、東京・池袋シネマサンシャイン、大阪天六ホクテン座をはじめ、順次全国公開。
(香月秀之監督/哀川翔、こずえ鈴、柳沢慎吾、ルー大柴、小西博之、石橋蓮司、さとう珠緒ほか)
http://cs-tv.net/movie/press/press_detail_05072.html
派手さが命のデコトラ(デコレーション・トラック)を転がし、年中旅を続ける鷲一郎が年に一度、故郷の浅草に帰る時がやって来た。三社祭の季節だ。実家に戻ると、ブロンドの若い娘・ルーシーが住みついていて驚くが、たちまち恋に落ちアメリカからはるばる父親を探しに来たという彼女のために一肌脱ぐことを決意するのだが…。
私は、若い妻と名古屋から浅草へ新婚旅行に来た花婿を演じています。

映画 『著作者人格権』http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/1493/gyangu.htm
不定期上映。 10月19日(日)午後(詳細は未定)。日本映画学校にて。入場無料
(細野辰興監督/木下ほうか、澤井隆輔、大谷志保、高橋明、パスタ功次郎ほか)若き鬼才と言われた映画監督・鬼迫が営む弱小プロダクションは、新作のクランクイン3週間前にプロデューサー補に製作費を持ち逃げされる。八方塞りの果てに鬼迫は、映画監督に認められている「著作者人格権」を逆手に取り想像を絶する“全く新しい製作システム”を思いつく…。
私は、銀行の貸し剥がしに遭い、追いつめられた町工場の経営者を演じています。

映画 『13階段』http://13kaidan.goo.ne.jp/
(長澤雅彦監督/山崎努、反町隆史、田中麗奈、大滝秀治ほか)
ビデオ&DVDが発売・レンタル中。
どんでん返しの連続する真犯人探しの謎解きを縦軸に、“死刑”というあまりにも重いテーマをこの極刑に関わる被害者、加害者、刑を執行する者の多角的な視線を通して描く。
私は冒頭、刑務所の取材をする、あるテレビ局のディレクター役です。

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いつの間にか、今年も、もう、あと三ヶ月ですね。
この頃、急に気温やフトコロが寒くなったりしますが、どうかお身体を大切に…。

もし良かったら、あなたの近況を教えて下さい。
待っています。

ではまた!