岡村通信 No.33   「愛情は降る星のごとく」 2003年6月27日


すっきりしない天気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

【 最近観た映画の感想 】

『ザ・コア』
地球の中心にある核(コア)。その回転が止まったので、何と地底を旅して、核爆発によって、人類を救おうという、あり得ない話。あり得ない話だけど、現実ではあり得ない事を見せるのが映画の使命の一つだ。

これは危険を承知で、人類を救うために参加した運命的なプロジェクト。
自己犠牲、強い信念、未曾有の冒険、革命的な実験…あ、何かに似ているな、と思った。
先週、自分の番組で、私は篠田正浩監督に「ゾルゲは坂本龍馬に似ていますね」と言った。
どちらもある種の革命家で、そして危険を承知で命を懸けて、命を落とした…。

「ザ・コア」でも、英雄的な行動によって、次々とメンバーが命を落として行く。
「スパイ・ゾルゲ」と「ザ・コア」の共通点を探すとすれば、“命の使い道”という事だろう。
危険な考えだが、本当に命を捨てても成し遂げたい事があり、そういう瞬間があるというのは、もしかすると幸せなのかもしれない。
思いつめなくてもいいが、思いついた時、思い切れれば、思い切る。
命は大切だが、その使い道もまた同じように大切なのだ。 

『二重スパイ』
女スパイがラジオのDJをしている、という設定がすごく生きている。
ハン・ソッキュ演じる脱北者が実は北の二重スパイだとわかるシーンでは、本当にドキドキした。
そう、ラジオでかかる曲名によって、彼は指令を受けていたのだ。
A・ヒッチコック監督の「バルカン超特急」を彷彿とさせる。 
韓国映画独自の文法を貫き、全体がゴツゴツとしてはいるが、ポルトガル・ロケも効果的で、なかなか見せる一本。

『マトリックス・リローデッド』
こちらの方は、その“映画の文法”など、どうでもいいと監督は言っているようだ。
予告編にも入っていた、ネオ(K・リーブス)がたくさんのスミスと戦い、多くのスミスが空中に散るシーンでのネオの棒の構え方は、明らかに座頭市(勝新太郎の)のそれだ。
この映画のためにわざわざ作ったという高速道路のシーン等、見せ場はいっぱいなのだが、どうも映画全体の骨格を感じない。映画の背骨を遂に発見出来なかった。
だから、こんなに楽しめてサービスたっぷりなのに、全然お腹にズッシリ来ない。
そこがどうにも弱い。背骨がなければ、映画は一人で立っている事が出来ない。

【 6月22日 午後1時半 青森県 ワーナーマイカル・シネマズ・弘前 】

「20代の頃は、“オレが、オレが”だったけど、今は、肩の力が抜けて、とても楽です」
「以前、映画『風の絨毯』のロケで、イランに行っていたんですが、あちらでは、何かトラブルがあっても“全ては神の思し召し”と言って、全く慌てないんです。“これは、何かもっと更に良い状態がやって来る兆しなんだ”と本当に信じられないくらい楽天的なんです。すごく多くを学びました」

’90年の映画『天と地と』名古屋キャンペーン以来、時々ご一緒させて頂いている榎木孝明さんとの、約40分間に渡る『スパイ・ゾルゲ』トーク・ショーin弘前は、多くの示唆に富む、楽しい時間となった。彼の近衛文麿役は、一本の串が通っている好演。

【 私の最新の出演作品です  是非ご高覧下さい 】

映画 『スパイ・ゾルゲ』 http://www.spy-sorge.com/ 6月14日より公開中。
(出演/ イアン・グレン、本木雅弘、岩下志麻、葉月里緒奈、ミア・ユー他)
日本とドイツの最高機密情報を盗み出し、モスクワに送り続けたスパイ、R・ゾルゲ。 ハンサムにして強烈な個性。誰をも惹きつけるその人間的魅力。スパイであると同時に透徹した目を持つジャーナリスト。そして、プレイボーイ…。巨匠・篠田正浩監督、渾身のラスト・フィルム。
私は、2・26事件の際の朝日新聞主筆・緒方竹虎を演じています。

映画 『17才』  http://www.bc.wakwak.com/~actressclub/17age/
6月21日よりテアトル新宿で公開中。
(木下ほうか監督/三輪明日美、猪俣ユキ、松田龍平、徳井優、田口浩正、水橋研二、奥貫薫ほか)
17才のアコとヒトミ、18才のリョウ。 高校、教室、キャバクラ、おしゃれな屋台、ラーメン屋、ウエストポーチ、新宿のカフェ、停学、先生、自転車、あじさい、学ラン、病院、レコードを持った少年。大人でもあり、子供でもある。大人でもなく、子供でもない。だけど、大人になってしまうのが怖かった。そして生きていくための理由が欲しかった。 17才という武器を身につけて…。
私は、ヒトミの恋人のフランス人に尋問する刑事を津田寛治君と共に演じています。

映画 『著作者人格権』  http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/1493/gyangu.htm
不定期上映。 6月27日夜、「17才」と同時に上映。両監督のトーク・ショーもあり。(細野辰興監督/木下ほうか、澤井隆輔、大谷志保、高橋明、パスタ功次郎ほか)
若き鬼才と言われた映画監督・鬼迫が営む弱小プロダクションは、新作のクランクイン3週間前にプロデューサー補に製作費を持ち逃げされる。八方塞りの果てに鬼迫は、映画監督に認められている「著作者人格権」を逆手に取り、想像を絶する“全く新しい製作システム”を思いつく…。
私は、銀行の貸し剥がしに遭い、追いつめられた町工場の経営者を演じています。

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うっとおしい梅雨ですが、これが終われば、もう夏。
どうかご自愛下さい。

もし良かったら、あなたの近況も教えて下さい。
待っています。

ではまた!