岡村通信 No.32   「ソラリスの陽のもとに」 2003年5月27日


地震、台風、SARSと、落ち着かない世の中ですが、
いかがお過ごしでしょうか?

【 最近観た映画の感想 】

『めぐりあう時間たち』 http://www.jikantachi.com/home.php (公開中)

1923年、1951年、2001年… 時空を越えて描かれる女性3人の一日。
彼女らを貫く一本の串の名は、ヴァージニア・ウルフ作「ダロウェイ夫人」。 
小説における、ジョイスの“意識の流れ”の方法そのものを使って映画手法として利用した感のある佳作。ああ、こういうのもアリだな、と思って唸ってしまった。いや、違う。映画を観る、という行為は元々こういう事なのではないかと思う。
つまり、人が目を閉じている、その瞬間が、映画を、夢を見ている時間という事。
“意識の流れ”を感じる、そのひと時が。同じ作者の「オルランド」(’92・傑作)も未見の方は、是非。
原題の「The Hours」をこの邦題にした宣伝部にも拍手!

『ソラリス』 http://www.solaristhemovie.com/ (6月21日公開)

旧ソ連の巨匠、A・タルコフスキー監督の傑作「惑星ソラリス」のリメイク。
人の死後も、“意識の流れ”だけは続くのか?
“意志を持った海〜ソラリス”の目的は何か?
それは最後までわからない。 
だいたい“目的は?”等と考えてしまう事自体が、我々地球人の欠点かもしれない。
何処かラテン系のお気楽さの香りがするジョージ・クルーニーは、死んだ妻をいつまでも諦められない精神科医、というよりは、プレーボーイの小児科医に見えてしまうので、どう考えても、これはミスキャスト。いつの時代でも俳優はイメージが全てなのだ。

『ムーンライトマイル』 http://www.moonlight-mile.jp/top.html (6月下旬公開)

結婚式の直前、凶悪犯の流れ弾に当って死んでしまった婚約者。
生き残った花婿と、死んだ娘の両親との心の葛藤と、回復、成長を描く。
死んだ人間とどう付き合うかは、本当に難しい。
私自身も同じような事でこの2ヶ月ほど悩んでいたので、何度も泣いてしまった。
ダスティン・ホフマン、スーザン・サランドン、ホリー・ハンターというアカデミー賞スターの 顔合わせなのに、“演技合戦”の様になっていない所に、この監督の品性を感じる。
画面に出て来る色々な物に貼ってあるフランス語の単語シールは 新婚旅行に備えて二人が学習していた時のもの。それが時に悲しくて、時にユーモラスで可愛い。
フランス語の持つ、お洒落なムードが痛みを少し和らげてくれている。

【 5月7日 午後 静岡県 奈良間公民館 】

前夜遅く、午前3時頃に寝て、朝6時に起きる。 ロケ車で、少し山合いへ移動。
ここが、NHKのテレビ放送50年記念ドラマ「川、いつか海へ」
(倉本聡・脚本/小泉今日子、椎名桔平、柳葉敏郎ほか)の控え室だ。

メイクしていると、何と部屋の中を、窓から入って来たツバメがかすめ飛んだ。びっくりして、反射的に身体をのけぞらせると「ここでは珍しくないですよォ。 こんなに驚いた人は初めて!」とキョンキョン。
想像していた以上に顔が小さい。
「突つかれるかと思ったんですよー」と言うと、「まるで、ヒッチコックの『鳥』みたいですね」 と切り返された。

小泉さんは美しく、心配された雨も降らず、山々の緑はキラキラしていて、空気がうまい。
実にいいムードだ。
黛りんたろう監督とは初めてだったが、常に画面の隅々まで観察しているのに驚く。
そして、どの様な瞬間も周囲の人達への気遣いを忘れない人だ。
ハイビジョンと総合テレビでの放送は12月の予定です。

【 私の最新の出演作品です  是非ご高覧下さい 】

映画 『スパイ・ゾルゲ』 http://www.spy-sorge.com/ 
(6月14日公開)(出演/ イアン・グレン、本木雅弘、岩下志麻、葉月里緒奈、ミア・ユー他)
日本とドイツの最高機密情報を盗み出し、モスクワに送り続けたスパイ、R・ゾルゲ。ハンサムにして強烈な個性。誰をも惹きつけるその人間的魅力。スパイであると同時に透徹した目を持つジャーナリスト。そして、プレイボーイ…。巨匠・篠田正浩監督、渾身のラスト・フィルム。
私は、2・26事件の際の朝日新聞主筆・緒方竹虎を演じています。

映画 『宣戦布告』 http://www.sensenfukoku.jp/official.htm
5月21日、DVD&ビデオ、発売。
(石侍 露堂監督/古谷一行、夏木マリ、杉本哲太ほか)
日本海沿岸の海。一隻の国籍不明の潜水艦が日本の海岸近くで座礁した。
浮上した潜水艦内からは、戦闘服に身を包んだ男たちが出現し夜の闇の中に、姿を消して行った…。この国は、まともにケンカも出来ないのか?
私は一般市民が犠牲になった敦賀市内の病院前に現れるテレビ局のレポーター役。
非常にデリケートな、しかし絶妙のタイミングで、昨秋、劇場公開。

映画 『KUMISO』 http://www.kumisou.com/ 5月18日、ビデオ・レンタル開始
(香月秀之監督/松田敏幸、津川雅彦、石橋蓮司ほか)
ある日、裏社会の組織の組長が突然、亡くなった…。 大変だ、組葬だ!
伊丹十三監督「お葬式」のヤクザ・バージョンともいえる、人間味あふれる作品。
私はまたまたテレビ局のレポーターとしてお葬式のシーンに登場します。

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短かった春が終わって、もう6月。
また梅雨がやって来ますね。 僕は青森の映画祭に出掛ける予定です。
朝夕の気温の差が激しい毎日ですが、どうかご自愛下さい。

もし良かったら、あなたの近況もお知らせ下さい。
待っています。

ではまた!