岡村通信 No.30 「スローなデスにしてくれ」 2003年3月30日


やっと桜の季節になりましたが、お元気でしょうか?

【 最近観た映画の感想 】

「猟奇的な彼女」
未見の方は早く観て欲しい。何よりも主人公の二人がキュート。
初めから映画自身が可愛い。
所々、描き方が下手でわかりにくい部分もあるが、“彼女”の圧倒的なパワーは そんな事なんかブッ飛ばしてしまう。
監督は観客に対して、作品のあちこちにイタズラや罠を仕掛けて楽しんでいる上 映画というものが時間の芸術だという事を熟知しているしたたかさがある。
ラストでは泣いてしまった。 劇場では、高校生もお婆ちゃんも、泣いていた。

「CUBE 2」
前作から5年、正体不明の立方体(キューブ)の集合体に閉じ込められた人々は 果たしてここから殺されずに、脱出できるのか? 
余計な説明、回想シーン等を排したストイックな脚本、メタリックな美しい画面、  全く予想がつかない展開…。今の今の現実世界の他にもう一つの“平行現実”が 進行していて、立方体によっては、時間の進む速度が違っている…。
謎を残したスリリングな93分間は、映画の知的な興奮に満ちていて、至福。

「スパイ・ゾルゲ」
篠田正浩監督、渾身のラスト・フィルム。1930年代、日本で活躍し、世界を変え た一人の怪物の半生を描く。 上海、ロシア、ドイツをも舞台にした、最近の邦画の スケールを越える大作。時代のムード、危機感の具現化、そして近衛文麿役の 榎木孝明が素晴らしい。しかし、緒方竹虎役の俳優、あれは何だ? 
6月14日公開。

【 古尾谷雅人さんの事 】

急な事で、とてもショックだった。 ’88年のTBSテレビ「東芝日曜劇場」で 同級生を演じてから、ある時期、親しくさせて頂いていた。 
私が酔って弱気になると、いつも励ましてくれた。
わからない。強い人だったのに…。 本当にわからない。

表現者というのはすべて、非常に高くて危うい塀の上を、心細く歩いているのだ と思う。
あの日、彼は運悪く、向こう側に落ちてしまったのだ。 残念でならない。
いつも松田優作を意識していた。
今頃は天国で優作さんにこっぴどく叱られているに違いない。 
私の中では、まだ彼とは別れていない。そんなのは、まだずっと先の事だ。

【 NHKFM・ラジオドラマ 4月5日 土曜日 午後10時〜10時50分 】

FMシアター「カーン」(脚本/映画 『宣戦布告』の小松與志子 )
http://www.nhk.or.jp/audio/
(出演/近藤正臣、結城しのぶ、佐戸井けん太、宮里駿、吉野悠我ほか)
大阪生まれの野良犬・カーンと耳が不自由な少年の、知的で、泣ける物語。 
私は冒頭のカーンの飼い主と、後半の近所の犬・1の役。 是非お聴き下さい。

公式サイトの「シネマ日記」の項目はほぼ毎日更新しています。
http://home.catv.ne.jp/hh/boston/

もしも時間がありましたら、あなたの近況などをお知らせ下さい。

私の花粉症は筋金入りですが、すべてはいずれ落ち着くでしょう。

季節の変わり目、どうにか、どうかご自愛を!

ではまた!