岡村通信 No.25 「黄昏の二人」

2002年11月17日
 

サムライの月を、いかがお過ごしですか?
先日、初めて高尾山に登りました。 紅葉のピークにはほんの少し早かったけれど 空気もおいしく、気持ちの良い、文字通り、黄金の時間が過ごせました。

【 最近観た映画の感想 】

『ハリーポッターと秘密の部屋』
サービス満点で、前作ほどお子様ランチではなく、楽しめる。ちょっと長いけど…。
これが遺作となってしまったリチャード・ハリスの声が、かすれて弱々しく 晩年の渥美清を思い出してしまった。 次回からの校長役には是非、ピーター・オトゥールに登場して欲しい。

『ウェイキング・ライフ』
人間の進化とは?死とは? 哲学的な対話集。しかも、イーサン・ホークやJ・デル ピーが出演していながら、実写映像の上に後でペイントしたという実験的アニメ。 これは野心作だ。 試写の直後、隣りの席にいた手塚眞監督の顔が一瞬、アニメーション化して見えた。

【 11月9日 土曜日 晴れ 京橋・第一生命相互館ビル・1F 】

映画 『保存液』(上馬場健弘監督/中島ちあき、吉永雄紀、西山洋市ほか)
シーン24 “数日後・麻子の会社の廊下” の撮影

廊下を早足で急ぐ麻子。前方から部長が歩いて来る。

部 長
(私)
「おー、木口。最近よく外出るじゃないか。
この間までは俺にどやされて、しぶしぶ出かけていたのになあ。」
麻 子
(神林理央子)
「えっ、そうですか?」
(/映画『ギプス』ほか)
部 長  何だかこの頃、態度がでかくなって、ずいぶん営業らしくなってきたって、島岡さんも言ってたぞ。」
麻 子 「(時計を見て) あ、ちょっと遅れそうなんで… 失礼します!」

これはこの作品の中では数少ない現実的なシーン。タイトルもそうだが、謎に満ちた脚本だ。 監督の上馬場君は10年ほど前、NHKの朝ドラ「君の名は」に出演した時に ADをやっていた人。 私の事を覚えていて、声をかけてくれたのはうれしい。 実に粘り強い演出で、彼は大物になる予感がする。

  【 11月11日 月曜日 曇り 東銀座・東劇ビル3F/松竹本社 】

  インタビューのコツの一つは終わった後の人間関係など考えない事だ。

「ずっと寅さんを観ていて、昔は、“ああ、こういう人っていたよなあ…”   って懐かしかったけど、最後の方になると、“こんな所はもう世界中の 何処にもない”って、まるでSFを観ているようでした。」
山田洋次
監督
「いつの頃から日本人はこうなっちゃったのかなあ。 かつてはもっと、つつましくて、謙虚だった。笠智衆さんのように…」
「いつの間にか、多くの人が損か得かだけで物事を考えるようになって しまいましたね。 それでいて、近頃は皆、何だか不安で…」
監督 「飢える、凍える、というのは明らかによくない。 だけどそうでなければ “行け行けドンドン”ではない、もっと身の丈にあった幸せというのが 必ずあるはずなのね。」
「そういう、“ちゃんとした日本人”を描こうと思って葛飾柴又以外の 場所を探すとすれば…    だから、山田さんが時代劇を撮るのは必然だと思いましたね。」
監督 「ああ、そうか…」

この日は淀川長治さんのご命日。 淀川さんが映画 『たそがれ清兵衛』を観たら きっと、「あんた、もう一本時代劇、お撮りなさいよ!」と言うに違いない。 映画好きの金正日は寅さんと釣りバカシリーズの大ファンだという。
彼はこの映画をどう思うだろうか。 映画を通じた突破口はないのだろうか?

【 私事ながら、ハヒフヘホと散りゆく秋にズンと来る映画を… 】

映画 『ひまわり』 ’00年(行定勲監督/麻生久美子、袴田吉彦、津田寛治他)
一人の女性をめぐる、切なくも不思議なムードを持った作品。
私は冒頭に起こる海難事故を伝えるニュース・キャスターを演じています。
11月28日 木曜日 深夜2時25分〜4時30分 テレビ東京で放送予定です。

かわさきFM 『岡村洋一のシネマストリート』 http://www.kawasakifm.co.jp で山田洋次監督とのロング・インタビューをノーカットで放送します。
11月19日 火曜日 午後2時から3時まで 79・1MHZ 電話でも通常の電話料金のみで聴けます。 0180−99−4791

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もしもよろしければ、あなたの近況などを教えて下さい。

この頃、私の周りでは風邪を引いている方が多いでがんす。
私は今の所、大丈夫ですが…
どうかご自愛下さい。

ではまた!