2011/09/17  last correction 2012/04/09  koduc@me.catv.ne.jp


     こ の 研 究 の 目 標 と 方 法 に つ い て 

1 研究の目標と方法、および、そのために拠りどころとする主な資料 

() 明治の代表的な流行り歌を特定する。
国立国会図書館のウエブサイト、近代デジタルライブラリー(KDL)から拾い出した唄本の中に現れる歌を集計して、最も多くの頻度で現れる歌を明治の代表的な流行り歌とし、併せて当時唄われたとされながら上記唄本にあまり多くは現れなかったいくつかの唄について、同時代および以後の資料により検証する。 参照: どんな歌が流行ったか

(2)それらはどのように流行ったのかを、分かった所から少しずつ明らかにしていく。
その背景、伝播経路、それらの歌が主にどんな人々の間で/何時頃/どこで/どのように、歌われ/聞かれたかをできるだけ明らかにする。 −先ず KDLが所蔵する唄本全体の変遷から明治時代の流行り歌の潮流を概観した後、同時代の資料を拾って個々の流行り歌の生い立ち、流行の過程、変遷、背景など、コンテクストを明らかにしていく予定。

() 新旧二つのジャンルの歌の構造的特徴の違いを明らかにする。
唱歌・軍歌という新しいジャンルの歌と、従来からの俗謡との間にある構造的特徴の大きな違いを明らかにするために、特定した代表的な流行り歌を、歌詞・リズム・旋律の三つの方向から分析する。
既往の研究では歌詞に偏りがちだった俗謡の旋律について、まず「日本俗曲集」の採譜の信頼性を当時の録音との比較によって検証し、出来るだけ同時代の他の楽譜や論文も参照して当時の旋律を再現し分析する

2
 流行り歌の構造的特徴を解析するための鍵とする主な着眼点

() 歌詞構成と表現: 文語と口語の区別、七五調など歌詞構成の規則性/不規則性、はやし言葉の有無。 歌詞についてはその主題よりもむしろ、歌い手が顔を出すか、歌い手の気持が誰かに向けられているか、滑稽味や皮肉を狙ったものかなど、その表現に注目する。

(
) リズムの構造的特徴: 2拍子における強弱の逆転あるいは律動(basic beat)の中断、ピョンコビートと逆ピョンコビート、シンコペーション、拍の頭をはずした(オフビートな)歌い出しなど、主としてリズム構造の自由度に注目する。

() 旋律、特に音階の構造的特徴: diatonic major/minor、4-7抜きなどの5音音階、小泉文夫提唱の4種類のテトラコルド(TCと略す)と俗謡に多く現れる二つの中間音を持つ2種類のテトラコルド、− 以下これらすべてのテトラコルドを粗く2分して、「都テトラコルド」「律-民謡テトラコルド」と呼ぶ(注1) ー 同じく小泉文夫提唱の4種類の基本音階、 および核音の位置に注目する。 俗謡の旋律構造については、最終的に半音階を含む「都節タイプ」と、含まない「田舎節タイプ」の2種に大別する。 これはほぼ上原六四郎提唱の「陰旋・陽旋」に相当する。(注2)

() 歌詞と旋律の関係: 歌詞のシラブル構成と音楽的フレーズ構成の関係、歌詞の話し言葉としてのリズム・抑揚と唄われる旋律との関係。


                 どんな歌が流行ったか         トップページへ

           ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(1) 唄本に現れた明治の俗謡に数多く現れるふたつの中間音を持つ2種類のテトラコルドを、論文 [POPULAR SONG OF THE MEIJI ERA] では、 2つの中間音を持つ都節TCの意味で「miyako-2-TC」、律TCと民謡TCの組み合わせの意味で「ritsu-minnyou-TC」と呼称している。 この資料編では俗謡に現われたこの2種類のテトラコルドと小泉の「都節TC」「律TC」「民謡TC」の3種類、これらすべてを、より粗く半音階の有無によって2種類に分類した。 即ち、半音階を含む「miyako-2-TC」と「mioyako-1-TC」を包含して「都TC」と呼び、半音階のない「ritsu-minyoo-TC」・「ritsuTC」・「inyoo-TC」の3者を包含して「律-民謡TC」と呼び、それぞれ中間音が1つあるいは2つあり得るものとした。 (論文 [POPULAR SONG OF THE MEIJI ERA] p15参照) 

(2) 上原六四郎 「俗楽旋律考」(1927版)の前文で、兼常清佐が、、、(この脚注未完 2011/07/1)