2019年1月11日

 2018年11月7日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉(情報交換)が行われました。そこで取り上げられ、県に示された2019年度に向けた、主に高校教育にかかわる要求項目(主要項目)を紹介します。「かながわ定時制通信制教育を考える会」や「神奈川高校教職員連絡会」の会員も参加し、県の担当者に要請しました。


Ⅳ、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて


 子育て・教育・文化・スポーツなどに関する神奈川県の教育行政は、「Ictを使えば人は要らない」「正規職員でなくて臨時職員で十分」「浮いた人件費で別のプロジェクトを」「管理を強め少ない職員でも労働効率アップ」「仕事の中身を行政の指示通りのものに」など、県民要求に目を向けた教育行政ではなく、国や財界の要求に目を向けた教育行政になっているのではないだろうか。強力な財務省・総務省からの財政統制を受け、同じように財政統制を受けている文部科学省の強力な行政指導を受けつつ、神奈川らしい独自の教育行政を進めづらいのは十分理解できるが、神奈川県の教育行政が一にも二にも汗を流さなければならないのは、県民の健全な子育て・教育環境の整備と県民自身の文化・スポーツ要求に正面から応えることだろう。

 例を挙げるならば、図書館司書の不足でレファレンス・サービスの低下した県立図書館、正規採用をせず臨時的任用教員の多数採用で出産育児休暇・病気休職などの職員が出た時に本来の臨時的任用教員が不足する公立学校、過大規模でパンク寸前の特別支援学校、進学率が相変わらず全国最低位の全日制高校進学率、資格ある職員を配置することを決めたにもかかわらず資格はずしの規制緩和を進める学童保育指導員など、県下にこうした事例は枚挙にいとまがない。

 昨年は、私立高校の高校生の家庭で年間590万円以下の収入の家庭への授業料無償化が決まった。神奈川の子どもたちの子育て・教育環境改善の点で重要な前進である。これを嚆矢として、教育委員会の本来の仕事である、子育て・教育・文化・スポーツの事業は、県民の創意と工夫をもととし教育行政が指示命令などを出すことのないように励まれることを望む。

 以上の観点から、今年度も下記の県に対する要求項目を申し入れる。真剣なご対応を望みたい。


1.子どもの権利に関する項目

(1)子どもの権利の実現について
① 教育基本法や学校教育法、学習指導要領、教科書検定基準などの改定により、特定のイデオロギーにもとづき「愛国心教育」や「道徳の教科化」「武道に銃剣道」「マナーキッズ体幹遊び教室による礼法指導」など、教育の国家管理の傾向が強まっている。子どもを主人公に、憲法、子どもの権利条約と教育の条理にもとづく教育を貫くとともに、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。

② 教育課程は、その地域と子どもたちの実態に合わせて学習指導要領と調和をはかり、各学校ごとに校長をはじめとした教職員の協議で編成することを確認し、各学校の主体性を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行なわないこと。

(2)入学式・卒業式について
① 憲法19条「思想・良心の自由」、20条「信教の自由」、21条「表現の自由」に照らして、卒業式・入学式における「日の丸」「君が代」の強制をやめ、「国歌斉唱」時の起立が強制ではない旨の告知を生徒・保護者に対して行うこと。

 「保護者につきましては、指導の対象ではございません」とのことだが、式の中で起立し、その流れで「国歌斉唱」となり「君が代」を歌わざるを得えなかったり、そこで座るということ自体困難で、精神的圧力になったりしている状況について、県はどう考えているのか。配慮のある対応をするよう、県として各教育委員会に指導すること。

2.国・県の教育行財政に関する要求

(1)全般に関して
 ① 新学習指導要領の教科時数増や内容増の実施については、教員の配置をはじめ、教材などの整備のための予算を十分に措置すること。また、各学校の実態に応じて学校の自主的最良を尊重すること。
 
(2)就学援助・経済支援について
 ① 就学援助について以下の点を市町村へはたらきかけること。
、就学援助制度をわかりやすく周知させるとともに、だれでも気兼ねなく申請できるように、例えば、川崎のように申請しない家庭もふくめ全家庭が学校に提出する方式や教育委員会や市区町村役所・郵送でも申請できるようにすること。

、神奈川県内の各自治体における生活保護や就学援助等の制度の申請に際し、相談窓口の相談者に対する対応が、相談者の人権を侵害することのないよう周知徹底はかること。

、就学援助の認定基準を上げること。生活保護基準引き下げに連動し、いま、困っている人が就学援助からはずれることのないようにすること。生活保護基準引き下げにより、枠から外れてしまった家庭はどれくらいあるのか。昨年の回答でも、制度を受けられなかった家庭の数を県として把握していないとのことだったが、再度お聞きする。県民の実態を把握することが県としての責務であり、それを公表すること。
  経済格差の拡大から子どもたちの学習権を守る立場から、生活保護基準と同水準になっている市町村に、それを引き上げるよう強く働きかけること。
、就学援助が入学前から受けられるように、認定を早く行うよう市町村へ働きかけること。

、修学旅行や遠足、野外活動などの行事の費用は、高額な上、通常は事前徴収である。それに間に合うように事前支給とすること。また、現地での交通費や食費なども事前に支給し、現地での活動に支障のないように各自治体に働きかけること。

、民生委員の所見についてはどの市町村でも不要にすること。寒川町では申請するときに民生委員の所見が必要と記入されていますが実際には不要になっている。県内の実態を調査して、それが必要と記入されている場合は削除させること。

、年度当初に申請をしないと4月からの認定(支給)が受けられない市町村が多くある。年度内に申請し、4月の在籍が確認されれば5月以降の申請でも4月に遡って認定(支給)を認めるよう働きかけること。

、2010年度から国はクラブ活動費・生徒会費・PTA会費を支給対象項目に入れている。全市町村で支給するように働きかけること。

、申請書は全児童生徒に配布するよう働きかけること。

④ 高等学校等進学者数の割合が97.9%と、高等学校等への進学が実質的に準義務化している現状がある。子どもの貧困化・格差拡大が社会問題化するなかで、小中学生に設けられている就学援助制度を高等学校にも新設する必要があると考える。更に、高校授業料の無償化を復活し、高校への県としての給付制奨学金を拡充すること。

                                              
(3)県費旅費に関して
① 17年度から旅費の政令市移管が実施されている。旅費支給(支給打ち切りなど)の実態、教職員自己負担、保護者負担、PTA負担などの実態を調査して公表すること。毎年要求しているが実施していない。サンプル調査でもいいから誠意ある態度を示すこと。

② 修学旅行の下見は1名で、芸術鑑賞、社会見学などの引率に学年の教員全員が参加できない、部活動の練習試合引率は私費で、など、本来あってはならない実態が広がっている。これに対する見解を明らかにすること。

③ 政令市以外の旅費予算水準が心配される。前年比大幅な増額になるよう手立てを講ずること。

④ この間、学校旅費の過去10年に渡る増減状況について、学校配当旅費総額と教員一人当たり旅費と残金をそれぞれ明らかにすること。

 
(6)県立高校について
① 法的根拠のない「観点別評価」「定期試験の共通化」「1単位授業35週分確保」「教科書選定への介入」「卒業式・入学式での国歌斉唱の強制」を一律的に県立高校に押しつけないこと。

② 「1単位授業35週分確保」の強調のなかで、教科の時間数が増え、特別活動の時間数が減っている。とりわけ、学校行事の時間が減らされ、文化祭や体育祭の準備の時間が減らされている。特に、文化的行事としてこれまで各校で開催されてきた芸術鑑賞教室は、ほとんどの学校で実施されなくなった。高校生に文化を伝える仕事を学校が放棄している。この実態を県教委はつかんでいるのか。つかんでいるとしたら、どのように考えているのか、見解を明らかにすること。

③ 県立高校の耐震化について
ア 耐震性のない全国の公立高校619棟(2017年4月1日文科省調べ)のうち209棟は神奈川県の公立高校で、実に全国の3分の1を占め、耐震化率(76.3%)は全国最下位である。県内の高校のうち県立高校だけの耐震化率を明らかにすること。

イ 耐震化を2023年度を目標に完了予定としているが、具体的な県立高校の耐震化工事及び老朽化対策(改築、修繕)の完成までの計画を策定し、学校名と棟名をあげること。

④ 私費負担軽減について
 「教育の無償化」が叫ばれているなか、授業料を徴収していながら、さらに学校徴収金として「教育振興費」などの負担を強いるのは、公費でまかなうべき県立高校のあり方として問題である。公費(県費)の大幅増額が求められる。特に、神奈川県立高校の私費負担は全国・他県や横浜・川崎の市立高校に比べて突出して大きなものがある。「奨学給付金」があるというがそれは全国一律基準となっており、神奈川の県立高校の生徒は高額な私費を負担することから他県に比べると大きな不利益を被っている。制服購入や修学旅行積立金とあわせると年間10万円程度の負担が保護者にかかっている。この金額は授業料負担額の1年分に近いものである。
 大きな負担になっている教育振興費などの私費負担を軽減する方策をどのように考えているのか、明らかにすること。

⑤ 現業の民間委託25校を見直し、現業職員の採用を再開すること。民間委託方式では学校現場との連携が不十分となり、急を要する校舎の修繕・修理などは、教職員の対応になっており、学校現場での多忙化につながっている。文化祭・体育祭等の学校行事においても現業職員の技術的な指導や援助が必要になっているなど、学校教育における現業職員の業務は教育活動の一貫となる重要なものだと考えるが、県としての見解を明らかにすること。

⑥ 専門学科教員、実習教員の退職不補充を改め、採用を継続すること。

⑦ 学校図書館司書の採用数を大幅に増やすとともに、現在臨任司書として勤めている者の採用幅を広げること。

⑧ 教職員の庶務事務を担当する学校事務センターを解消し、学校事務センターからの民間企業への再外注をやめ、学校事務室の3人体制の事務職員を4~5人に増やすこと。

⑨ 毎年続く「庶務事務システム」の混乱について、原因を明らかにすること。

⑩ 全公立高校展などを強制せず、学校判断の自主参加に改めること。

⑪ 経済困難課程の増加にあわせて、返還不要の給付制奨学金制度について、その給付条件を緩和して多くの家庭で利用できるよう拡充すること。貸与型の奨学金についても、奨学金受給者が一定の収入額を得るようになるまでは返還猶予する制度を拡充すること。奨学金制度について広報活動を促進すること。

⑫ 冷房機器を県立高校の図書準備室・技能員室・体育準備室・芸術科家庭科以外の特別教室・視聴覚室・教科準備室など総ての下野に設置すること。


                                      
3.児童生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する要求

(1)神奈川県は全国最悪レベルの小中高生の暴力行為がつづき、学級崩壊、不登校、陰湿化するいじめ問題も深刻な実態にある。その解決は緊急にして最重要課題である。
① 神奈川の深刻な校内暴力、不登校などの実態から、それを未然に防ぎ、子どもたちの精神的不安解決や、保護者・教職員の相談にも大きく役立っているスクールカウンセラーと相談員を県独自にも現在の配置数を大幅に増やす特別予算を確保すること。
② 保健室登校の生徒を指導する補助員を配置すること。

(2)現在の保健室は精神面からも子どもたちをささえている。その今日的役割を考慮して、すべての学校に養護教諭を複数配置する県独自措置をとること。県立高校養護教諭複数配置125校のうち専任配置は5校に留まっている。今後とも複数配置校の数を増やすとともに、臨任でなく正規職員での配置とするよう努力すること。


4.児童生徒がよりよい学習生活を送るための学級編成についての要求

(1) 教職員の多忙化が年々深刻になる中、子どもたちに向き合う時間が不足している。中央教育審議会も少人数学級の緊急性を答申し、政府も8カ年計画で30人・35人学級の実現を明らかにしている。ゆきとどいた教育を実現するため、教職員定数の改善と学級規模の縮小(35人学級~30人学級、定時制25人)を県独自予算で計画的に実現すること。
  教員配置をともなわない神奈川県の「研究指定校方式」による全学年35人学級は、県民からみると神奈川は全学年35人学級が実現しているように受けとるのが普通である。年度進行で教員を配置しての35人学級の学年を増やしていくこと。


8.県立高校再編・条件整備・入試改革・就学保障に関わる要求

(1)「県立高校改革実施計画」については、子どもたちの希望と実態、学校現場の実態を直視し、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させて高校教育充実を図ること。
① 「県立高校改革実施計画」による県立高校統廃合は見直すこと。
 「県立高校改革実施計画」による統廃合で県立高校を20~30校減らす一方で、すでに30余の県立高校では1学年9クラス以上の過大規模校となっている。過大規模校は明らかに教育条件が低下し、準備室を含め教室不足となり、授業の多展開など困難になる。さらに生徒指導上の困難さも予測され、生徒数が多いため会場確保や学校行事に制約が多く、生徒の集合や移動にも時間が多く割かれ、防災上の問題も生ずる。これら過大規模校に起こる教育上の困難はかつての急増期における過大規模校で多くの教職員が経験したことである。
 また、「高校改革推進計画(2000年~2009年)」では25校が削減された。その結果この10年間の全日制進学率は92.5%から88.0%にまで大きく低下した。このことから、今回の改革実施計画で打ち出した通りに20~30校の削減を行うことになれば、全日制進学率が80%台にに落ち込むことは明らかである。

② 前回の改革で打ち出した、適正規模6~8学級の考え方は誤っていたという認識に立っているのか。また、それはなぜか、説明を求める。

③ クリエイトスクールや国際高校、専門学科高校など、県教委のいう適正規模を下回る学校と8学級を上回る過大規模校との格差をどのように説明するのか。

④ 過大の規模の学校になれば生ずるであろう教育の上の困難・弊害についてどう考えるのか。

⑤ 経費削減を第1に考えるのではなく、学校規模をこれまでの1学年6~8学級を基本とすること。

⑥ 現に存在する1学年9クラス・10クラス規模校を8クラス募集に引き下げること。

⑦ 県立高校改革実施計画」による県教委による各県立高校への「指定」をやめること。
 教育行政機関が各高校に、一方的に「指定」する特色を押し付けることは、本来各学校が自主的に作り上げる特色や教育目標・教育内容に教育行政が権力的に介入する違法行為である。また、生徒の学力・能力・個性などに合わせるとして特色を「指定」することは、そこに生徒を振り分け差別化することにつながる。高校教育は「リーダー育成」や「グローバル化に対応」する教育に見られるエリート養成や国や経済競争への貢献など特定の目的にそったた学力・能力・個性を育てるのではなく、生徒が自ら学び成長し個性を磨くのをサポートする場である。「スーパーサイエンススクール」や「スーパーグローバルスクール」をめざすなど、「指定」を通して高校間に競争を持ち込むことは、公平な教育の機会や予算の配分を損ね、生徒や教職員の歪みの招来も危惧され、教育の崩壊に道を開くことになる。

⑧ 開校から15年経過した県立厚木清南高校は単位制の全日制普通科、定時制、通信制三課程を併置した全国唯一のフレキシブルスクールである。全日制普通科の授業が終わるのが午後4時半(90分授業制)、午後5時半からは定時制の授業が始まる。放課後の会議・打ち合わせなどはどこでやるのだろうか。
 また通信制を含めた在籍生徒数は2000名を超える。そして、近年、全日制普通科入学性の1割程度の生徒が卒業できず、生徒指導上の問題も多い状況にある。学校の諸施設を三課程で利用し、朝から夜まで授業があり、生徒も教職員も過密な空間と時間の中で過ごしており、多忙化が懸念されている。

ア他県に例がないといわれる、敷地内に三課程併置という学校のこれまでの課題をどのように把握しているのか。

イ諸課題を検証し、現在の教育目標・教育方針とともに三課程併置というフレキシブルスクールのあり方を見直すこと。


(2)インクルーシブ教育について
① 教育環境の整備、教科指導・教科外指導などを含め、「合理的配慮」を保障したインクルーシブ教育を行なうには、従来の学校教育費のて10倍の費用がかかると文科省は指摘している。る神奈川のインクルーシブ教育へ十分な予算を確保すること。

② 昨年度(2017年度)からインクルーシブ教育実践推進校3校において、インクルーシブ教育がスタートし、学年に7人の教員が加配された。また、昨年、県教委は「厳しい財政状況の下にあっても、必要な教育関連予算の確保を図っております」と回答しているが、2学年、3学年まで進行しても、少なくとも各学年7人の加配を維持すること。

③ パイロット校では、1クラス定員は35名から37名程度である。T-T、少人数、個別指導など多様な指導とのことだが、教育の質を落とさずに普通科教育を実施するには、1クラスを20名程度にすること。

④ 高校卒業後の進路を保障するための配慮(インターンシップ)を特別支援学校並みに実施すること。保護者が志願を決断する時、この点が大きな不安の一つである。


(3)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
 
国連子どもの権利委員会が、『学力的な優秀性と子ども中心の能力形成を結合し、かつ、過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと』を日本政府に勧告している。
  神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学などと顕著に実体化している。高校入学問題が義務教育全体、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。

① 13年度入試から、「生徒の受入れを拡大することを基本方針とし」、公私立高校が「実現を目指す定員目標を設定する方式」に変更して、全日制高校進学率が一定改善された。
 17年度には学費補助を590万円まで増額したことによって、私学への進学者が増加し、全日制進学率が高くなったものと見込まれる。しかし、なお多数の子どもたちが全日制高校を希望しながら進学できず、定時制や通信制に不本意入学させられている現状は早急に改善しなければならない。
 県は学費補助を近都県並み(東京都700万円、埼玉県610万円)に引き上げて、希望する子どもたちが私学を選べるように条件を整備するとともに、公立全日制高校の定員を増やし、当面、1999年度策定の「県立高校改革推進計画」で掲げた最低目標値の全日制高校計画進学率93.5%の達成をめざして条件整備を図ること。

 ② 知事が主宰する公私立高等学校設置者会議は13年を経過して、当初県民に約束した進学率の目標からは大きく後退しているが、学費補助増額で改善できる見通しが立ってきた。これまでの体制を大幅に改善し、現在オブザーバー参加とされている、現場を一番よく知っている中・高教員代表、PTA代表を中心メンバーとし、高校生、中学生の意見表明も保障する組織に再編すること。

③ その年度の高校募集定員計画にその年度の中学校の進路希望調査を活用できるように、その調査を5月と現行10月の2回実施すること。

④ 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を早急に現行35人から30人に縮小させるとともに、25人定員をめざすこと。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級以下の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。

⑥ 義務教育修了者が自らの進路を決めて、希望をもって門出できるように行政が条件整備に責任を果たすべきである。毎年数百人の子どもたちが進学も就職も決まらないまま中学を卒業している。さらに、高校1年生の中退者(14年度)も全日制437人、定時制507人、通信制624人と、1,567人を数える。その多くは、16、17歳でドロップアウトしていると心配される。貧困の世代継承を断つ政策の観点からもこの問題を重視して、その後の子どもたちの生活実態を追跡調査し、それらの子どもたちを生みださない抜本的対策を県民とともに検討して実施すること。


(4)高校入試について
② 旧学区外進学者は増えていたが50%前後に落ち着いてきている。地域づくりの観点からも学区問題を重視し、全県一学区制から当面、以前の中学区制にもどし、希望する子どもたちが安心して近くの高校に進学できるように改革すること。
 昨年も指摘したがアンケート結果に見る学区自由化の肯定的意見は、合格者の意見であり、不合格者も含めた受検者・保護者の意見ではないことも考慮し、その弊害も分析すべきである。そういった人たちも含めたアンケートを実施すること。また昨年の回答で「各高校の特色などについて主体的に調べる、学校説明会に積極的に参加するなど、生徒・保護者の県立高校の進学に対する意欲が高まったという回答も7割を超えております」とあるが、全県1学区になったことで、中学の進路指導で情報が得られないとの声があります。塾などを頼りに自ら調べざるを得ない状況があり、負担になっている家庭もある。

③ 子どもたちは徒歩や自転車で通える学校に行きたくても学力的に遠くの学校を選ばざるを得ない等の問題がおきている。交通費の負担や部活動によっては早朝の登校や遅い帰宅になるなど、親は費用の面や犯罪などに巻き込まれないか、さらに東日本大震災のような大災害があった場合などの心配もある。子は親への負担を心配してアルバイトをするなどの弊害が起こっている。以前の中学区制でも学区外の行きたい学校に通うことはできたことから、全県一学区制をやめること。当面、全県一学区制によって高額になる交通費に対する補助制度を創設すること。

⑤ 全員面接は、自己肯定感を抑えて「望まれる人間像」への人間改造が迫られることが心配され、子どもたちに道徳主義を押し付ける危険性がある。また、内気な子や不登校の子などにとっては人前で表現すること自体が精神的プレッシャーになるなど子どもの負担が大きい。面接官の高校教諭の負担も大きく、先生方から面接で差をつけられないので意味がないという声もある。面接の一律実施をやめること。

⑨ 定時制高校の入学試験を全日制高校と同様に1回にすること。これによって入試期間の短縮ができる。現在は、2次募集の入学試験の合格発表日は3月28日となり、新年度の時間割や持ち時間が決まるのは4月中旬となっている。また、全日制高校不合格者の入学試験の再度の機会は、各定時制高校の2次募集で十分である。


(5)定時制高校の充実について
① 夜間定時制高校の共通選抜を100%募集として全日制高校と同様に分割募集ではなく1回にすること。これによって入試期間の短縮が可能となる。現在は、2次募集の入学試験の合格発表日は3月末となり、新年度の時間割や持ち時間が決まるのは4月中旬となっている。

② 経済格差の拡大・貧困化の拡大を考慮し、かつて制度化した定時制高校の給食費や教科書代への補助について、削減したものを復活させ、充実すること。

③ 夜間定時制給食は、経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。現行制度を見直し、給食制度を復活すること。

④ 昨年度の回答で、「全日制・定時制の併置校については、全日制と定時制で図書を共通利用できることから、全日制単独校と同じ予算を配当しております』とあるが、全日制と定時制の生徒では読書傾向に差があり、単独校と同じ予算では十分な数の図書を購入できない。全定併置校については、図書費の増額を行うこと。

⑤ 夜間定時制は、全日制に比べて臨任や非常勤の比率が高い。また、不登校、障がい(身体、知的)、病弱、家庭の経済困難、複雑な家庭事情、日本語に不自由、日本社会に不慣れなどの配慮を必要とする生徒の増加や取り出し・TT授業や複数担任制の導入など、夜間定時制の生徒の状況を踏まえ、クリエイティブスクールやインクルーシブスクールと同様に専任教員の配置をさらに増やすこと。

⑥ 生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、夜間定時制専任の事務職員、現業職員、司書を配置すること。

⑦ 定時制には様々な配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、定時制高校にスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を図ること。

⑧ 夜間定時制の適正な学校規模は、1学年2学級以下とすること。

(6)修悠館通信制高校の学習環境充実について
① 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられている。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。
 生徒は広域通信制のように毎日学校に通って、個々の状況に応じてわかるように教えてもらえることを期待している。少なくとも定時制高校並みの教員配置をして、遅れを取り戻して頑張ろうとする子どもたちの期待に応える条件整備をすること。

② 毎年一校で数百人の除籍者・退学者の実態は県民保護者に大きなショックをあたえている。この原因をどのように分析しているか。また、これを改善するためにどのような施策を講じるか明らかにすること。

③ 修悠館高校の2018年度の志願者、合格者、入学者、タイプごと履修状況、履修届を提出しない生徒数、退学者数(17年度)を示し、その理由も明らかにすること。

④ 「残す」との県民に約束をし、施設も残っている湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズに多面的にこたえる施策として、小規模通信制として再開すること。

(7)高校生の就学保障・経済的支援について
① 学費の公私格差を縮小するとともに、学費補助制度の大幅な拡充・増額を図ること。公私立高校への入学に「入学支度金制度」を新設すること。 

② 経済的支援について、生徒及び保護者、教員によく知らせること。
 
③ 大学・短大・専門学校に進学を希望し合格しながらも経済的な理由で進学をあきらめる高校生が増えている。県として入学時納入する支援金制度を検討すること。


以下、省略

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