2003年2月14日

 「定時制高校を守る市民の会かわさき」は、昨年の12月20日、川崎市教育委員会教育長に対し、「川崎市立高等学校教育振興計画(案)」の、主としてその中の市立定時制高校5校を再編成し、2校に削減してしまう案について公開質問状を提出していました。
 この質問に対し、市教委教育長が1月20日に回答をしました。回答は、1から16におよんでいます。しかし、未回答な項目や十分なデータや資料を示してない回答、明確に答えていない項目などがあるため、「市民の会かわさき」は1月27日、「『公開質問』への回答について」という声明を発表するとともに、4点にわたり再質問を市教委教育長に行いました。
 以下に、その声明と再質問を資料として紹介します。

「公開質問」への回答について

2003(平成15)127

定時制高校を守る市民の会かわさき

代表浅野栄子

 

川崎市教育委員会は120日、本会よりの昨年1220日付「公開質間」への「回答書」をだしました。個々の回答へ対する見解とは別に、全体を一読した感想を取り急ぎまとめましたので公表いたします。

回答では「振興計画()」について、市民に広く理解を求め意見や要望を聞くために「市民説明会」を開催したと説明しています。しかし、「振興計画()」で唯一具体的に記述されているため、本来なら一番深く理解を求める必要があり、また意見・要望を積極的に聞くべき、定時制に直接関係する生徒や保護者への働きかけが不十分なままである事には触れていません。また、説明会で寄せられた意見・要望も具体的には公表はされておらず、「市民説明会」の実態や意見を明らかにしないまま「・・振興計画策定委員会において精査・検討し、これからの市立高校の教育に資するものについては、振興計画に反映し・・」と述べており、計画案に沿った意見・要望は聞くが、都合の悪いものは無視をすると明言するに等しい内容になっています。これでは、「市民説明会」や「生徒の声を聞く会」等は、単に「市民に対して一応話した」との実績づくりのために開催したことになってしまいます。

私たちがこの「公開質問」をあえて出したのは、提出趣旨にも書きましたように「・・説明内容に対して質問しますと、同じ答えの繰り返しや『今後設置される検討委員会で決定します』等の答えが返ってくるばかり・・」だったからです。しかし、今回の回答も今までの説明会やシンポジウムでの答えと同じような状態で、具体的なものはあまりありません。また、たとえば「回答6」のように、質問では「潜在的な定時制希望者の存在」についての見解を聞いているのに、「・・定時制課程を第一希望として入学している生徒の割合が少ない・・」と質問とかみ合わない回答が見られます。さらには、質問に対してまともに答えていない箇所も多くあります。「考え方が違う」とか「状況の把握が間違っている」と考えるのでしたら、是非その見解を示していただきたいと思います。

定時制の生徒にとっては人間関係づくりが大切であることは認めていて、そのために「定時制教育の活動の場の独立」をあげています。しかし、「学校の独立」のみに関心が向き、学校内での「生徒の活動の自由を確保」することへは配慮されていない回答です。また、川崎市のホームページ上の「振興計画()Q&A」のA6のAでぱ、「同一校に置かれている全日制課程・定時制課程の課程間相互の併修」を学校間連携の例として示していますが、回答と矛盾しています。

通学区域についてはデータを示し、再編成してもかまわないとしています。しかし、横浜弁護士会は「せめて30分くらいで通える場所に学校があって欲しいというのは、生徒たちの生の声である」とし、教育の機会を与えるためには場所的な意味が重要なことを、横浜市への「勧告」で触れています。現実に、川崎市教委の調査でも生徒の通学時問は「30分以内が63%」となっています。しかし、「(再編成しても)・・生徒は1時間以内で通学出来るもの・・」と答え、地域の中にあるから学校へ通えている事実に気づいていない事は問題です。このままでは、横浜弁護士会が指摘しているような「生徒の学習権を侵害」するような事態が起きかねません。さらに、近くに定時制のない区からの通学率は極端に低くなっていますが、全市的な観点からこの問題にどのように取り組むのでしょうか。

各種の調査結果の使い方やデータの示し方に偏りがあり、実態を正しく把握し対策を立てるための「振興計画()」ではなくなっています。生徒アンケートでは、「昼夜開講の定時制課程の設置」に対して「賛成22%」・「反対58%」ですが、この結果からなぜ3部制高校が導き出されるのでしょうか。また、「様々なデータによる現状の分析から、夜間を中心とした定時制課程を第一希望としている生徒は、現状の定時制課程に在籍する生徒の約半数である・・」と説明していますが、根拠となるデータは示されていません。さらに、大きな問題になった「横浜総合高校」の実態について何も調査していないことは、なによりも一番の問題であると考えます。

定時制教育のあり方については、昭和55年度に設置した川崎市立高等学校定時制教育研究協議会以来、「長い年月をかけて研究・検討」したと述べています。」しかし、平成123月に「これからの川崎市立高等学校のあり方について」を報告した、川崎市立高等学校教育将来構想検討委員会とそれ以前の3つの協議会・委員会とでは委員の構成が大きく違い、定時制教育のあり方に対する基本的な姿勢が異なっています。偏りのある立場で作成された計画を、定時制の統廃合を唯一の具体的内容として「市民に対して一応話した」だけと言わざるを得ない「市民説明会」や各種の説明会を経て、振興計画策定委員会にとって「資するもの」だけを受け入れ、無理にでも今年度中に策定しようとしているのはどうしてなのでしょうか。なぜ、幅広く意見を取りいれず、しかも急いで策定する必要があるのか明確な理由を説明してもらいたいと思います。

以上述べました内容に関し、以下の諸点につき対応されることを市教委に対しお願いします。

1.回答の14について、多くの疑問がありかつ重要な問題である「振興計画()」を、なぜ「今年度中に策定」しなければいけないのか明確にお答え下さい。

2.質問に対して回答のない45613について、回答を示してください。

3.「夜間を中心とした定時制課程を第一希望としている生徒は、現状の定時制課程に在籍する生徒の約半数である」ことを具体的なデータで説明してください。

4.川崎市のホームページ上の「振興計画()Q&A」の記述内容やデータのうち、今回の回答と比べた場合、矛盾していたり誤解を与えるおそれの強いA6のAや資料のCを削除してください。また、資料のFと関連して「生徒の自宅からの通学時間」がわかるデータと、A7で記述されている「今後の生徒減少の状況」がわかるデータ、さらに資料E以外で生徒の「多様な生活スタイル」・「多様な就業状況」がわかるデータを掲載してください。

なお、お忙しいところ恐縮ですが、川崎市のホームページヘの対応を含め、ご回答は210()までに文書にてお願いいたします。

以上

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