シリーズ 今、定時制高校では F
いろんな彼ら、でも、どこか輝いている彼ら
二次募集の合格発表を見に来たA君が、関係書類を受け取ると事務の窓口でつぶやいた言葉「ああ、よかった」。たまたま居合わせた新一年担任の私は、それを耳にし、笑顔をみて「これは春から縁起がいいわい」と直感した。彼22歳。何となく、一年で関西の高校を中退。五年ほど陸送運転手で自活。定時制にいきたいと言ったらクビになったという。
Bさんは炭鉱離職者のために建てられた市営団地から、仕事のあと雨風ものともせず、自転車で30分かけて通ってくるカンボジア女性。18歳。
中学時代、いじめや対人関係が不調で300日以上も欠席したCさん、Dさん、Eさん。貧しくて中学卒業ですぐ左官屋に見習いに入り大ケガをして、トンカツ屋に転職し、入学してきた、チョンマゲ姿だったF君。LD(学習障害)児ぎみのG君。
同輩のイヤな転編入生が卒業するのをみてから入学してきた、二十歳のH君。気まぐれのように教室に現れたり、給食をとると帰ってしまうJ君。親方と二人きりでソーラーシステムを設置して歩き、一校時はきまって欠席の全日制中退者のK君。・・・・・
クラス開きで一言「お互いいろいろな事情で定時制に学び、貴重な時間を生かそうとするのだから、迷惑にならず理解し合う気持ちで ― 」
それから、アッという間の一年間。しっかり登校、授業は聞く、ノートはとる、質問はする。つきあいは意外に紳士で、担任より大人。
当然なことと言えばそれまでだが、かえって新鮮な雰囲気を放った彼らは、クラス替えされてチョット寂しそう。また一言。Cさんに「ムリせず仕事さがして、転編入の人とも少しずつ馴れ染むようにして、そんなこんなして大人になってゆくんだよ」 ― 彼女コックリ。
彼らを見ていて、今定時制にかけられている「定時制再編計画」にいう「三年卒業制」や「実務代替」「定通併修」などは、「余計なお世話」であり、重点校方式(重点校でない定時制は、入学者が2年連続15名を下回ると即募集停止となる)は、彼らの学習機会さえも奪うものだと思われてくる。