2005年4月17日

  三度も入試の混乱を引き起こし、
 「15の春」と定時制を泣かせ続けている県教委と横浜市教委は


責任をとり、公立全日制の定員を大幅に拡大せよ!



 05年度の高校入試は、02年度、04年度入試に引きつづき、大きな混乱を生みだしました。定時制の二次募集において志願締め切り後、当初募集定員を大幅に変え、募集定員増(全県で100名の増)と、その募集定員も上回る合格枠がそれぞれの定時制に押しつけられました。

 横浜翠嵐高校の場合、本来2学級規模で従来は70名募集の学校でありました。しかし、今年度は当初1学級増の3学級120名募集とされ、二次入試では欠員分の27名を募集しました。ところが、志願者が66名となったため、急遽さらに1学級増とされ、67名の募集となりました。結局、さらに合格枠が増やされ、受検した74名全員を合格させることになりました。

 このような志願締め切り後の募集定員と合格枠の拡大は、あまりの競争率の高さから志願をあきらめた人には、きわめて不公平な入試となりました。何のための募集定員なのでしょうか。公示されている募集定員が信用できなくて公平な入試が行われるのでしょうか。定時制でこのような募集定員と合格枠の変更ができるのなら、全日制でこそ行われるべきでしょう。

 そもそも、募集計画の策定に大きな誤りがあり、その誤りの根本原因がどこにあるのかも明らかであるのに、県教委はそれを抜本的に是正せず、同じ誤りを繰り返し、矛盾をすべて定時制に押しつけてきました。横浜市教委も、自らの市立定時制募集停止がこの混乱の大きな原因であることを認識していながら、募集再開の手だてを取ろうとしませんでした。

 私たちは、三度も入試を混乱させた県教委と横浜市教委の責任を厳しく追及するとともに、来年度から募集計画を抜本的に改め、公立全日制の定員を大幅に拡大することを強く要求するものです。

04年度前期 05年度前期 05年度後期 05年度二次
 全日制   定時制   全日制   定時制   全日制   定時制   全日制   定時制 
 募集人員    17,953     970   17,152    1,260   21,416    1,474     85     731
 受検者数   49,089    1,589   44,183    1,836   29,091    1,016     296     752
 競争率    2.73     1.64    2.58     1.46    1.36     0.69    3.25     1.03
 合格者数   18,002     875   17,224    1,126   21,581     847     91     697
 不合格者数   31,087     714   26,959     710    7,510     169     211      55

  04年度入試     05年度入試      前年比   
 公立中学卒業者数        67,958       63,987      -3,971
 県内公立全日制希望者数         55,514       52,192      -3,322
 県内公立全日制募集定員       41,666       38,720      -2,946
 県内外私立高校希望者数        7,769        7,527       -242
 県内外私立高校募集定員       22,600       21,700       -900
 定時制希望者数         658         812       +154
 公立定時制募集定員         2,320        2,590       +270

<全日制を大幅に減らし、定時制を増やす

 05年度入試は、公立中学校卒業者数が3,971人減少するからとはいえ、全日制の入学定員を3,846人も減らし計画進学率を0.3%下げました。

 逆に定時制ついては、全日制を不合格となった子どもたちの「受け皿」の役割を担わされ、1学級の募集定員が昨年度より従来の35名から40名に増やされ(全日制は39名)、また7校の県立定時制についてそれぞれ1学級増として、定時制全体で270名増の募集定員とされました。

  

<私学の空枠を温存することが問題

 募集計画の問題点のひとつは、中学校卒業予定者の81.6%が県内公立全日制を希望しているのにも関わらず、県内公立全日制の募集定員枠がその60.5%しかないという点にあります。まず、計画進学率を定め、私立全日制の枠が決められると、県民の子弟の希望がどうであろうとも、県内公立全日制の枠は自動的に決まってしまいます。

 全国最低水準の私学助成と深刻な不況下で私学進学者は、ここ数年私学枠より約2000名も下回っています。初めから埋まらないことが予想される枠を残しておくことが、公立全日制高校に進学できない子どもたちを大量に生み出す根本的原因であるということを、私たちは何年も前から繰り返し主張してきました。

 05年度入試の定員策定で私学枠が900名減となったものの、計画進学率を0.3%下げてしまったため、公立枠と私学枠の比率は、0.7%私学枠比率が増える結果となりました。また、私学助成が十分改善されていない状態では、昨年度や3年前の混乱が繰り返されることになると、われわれは警鐘を鳴らし、公立全日制の入学定員を大幅に増やすことを要求してきました。

  

<3人に2人が落ちる二段階入試を見直せ

 結果は、我々が懸念してきた通りの事態となりました。全日制の前期入試は、競争率が2.58倍となり、受検生3人に2人が不合格となり、定時制においても5人に2人が合格できませんでした。04年度入試から始まった二段階入試は、初めから15歳の子どもたちの3人のうち2人に、不合格という体験をさせる入試となっています。これほど酷な入試があるでしょうか。

 「合格者も喜べないで、友達の不合格に涙し、クラス全体がひっそりしている」 「不登校の子が定時制を第一志望にしたのに、落とされてしまった。ショックで、後期選抜が受けられなくなった」 「クラスの受検者の半分以上が落ちたので、クラス全体が落ち込んでしまった」 「心の切り替えができないまま、私学受験、後期選抜と追い込まれていく」(関係者の声)

 私たちは、2回の実施でいくつもの問題点が明らかになった二段階入試を直ちに見直すことを要求します。当面来年度入試ですぐできることとして、定時制において、前期選抜での募集定員枠の上限(今年度は50%)を引き上げることを求めます。

  

<公立全日制の定員を大幅に拡大せよ

 さらに根本的には、募集計画そのものを抜本的に改めることが必要です。

 まず、計画進学率を段階的に上げていくことです。次に、私学の募集定員を実績に見合った人数に修正するとともに、空枠を解消していくことです。そのためにも、私学助成を大幅に増額し、授業料等経費の軽減と奨学金の対象者拡大など、私学進学への家計補助をすすめることです。
 そのうえで、公立全日制募集定員を中学卒業者の希望に見合った定員に段階的に近づけていくことです。

 全日制を希望している人が、残らず全日制に進学できるようにするとともに、定時制を希望している人はすべて残らず定時制への進学が可能となるようにしなければなりません。

 しかし現状では、全日制希望であるが、不合格の可能性が高いということでやむを得ず定時制を希望する人が増えています。そのため、不登校などのために、初めから定時制を第一希望としている人が、定時制に入学できない事態となっています。入学定員の策定の誤りのために、全日制と定時制の同時入試のメリットが十分生かされていないといえます。募集定員計画を抜本的に改めることにより、こうした問題は解消されます。

  

<定時制の良さが生かされるように

 この間の入試は、全日制を不合格になった子どもたちを定時制に詰め込むために、定時制の定員を「安全弁」のように都合よく使い、矛盾や問題点をすべて定時制に押しつけてきた入試でした。そのため、これまで評価されてきた少人数で、家庭的雰囲気、面倒見の良いという定時制の良さが失われかけています。

 私たちは、「15の春」と夜間定時制を泣かせ続けているこれまでの募集計画を抜本的に改め、公立全日制の定員を大幅に拡大することによって、定時制の良さが十分に発揮され、不登校の子をはじめとして、いろいろな問題をかかえた子どもたちが、定時制で生き生きと学ぶことができることを強く求めるものです。

 04年度入試の終結に際しての声明「公立全日制定員減による「15の春に泣かせる入試」は、今年限りでやめさせよう」 と02年度入試に対する声明「『15の春』を泣かせ、学習権を侵害した県教委と横浜市教委は失政を謝罪し、「再編計画」・入学定員策定を見直し、港高校や横浜商業定時制の募集再開を」も参照して下さい。

トップ(ホーム)ページにもどる