2000年1月20日

シリーズ 県立高校統廃合計画を斬る A

統廃合の根拠(小規模校ではまずい)は、誤りである

              ― 小規模校のほうが教育面で優れているという事例研究がある ―

  県教委は、11月の教育委員会で「県立高校改革推進計画」を決定した。この計画の第一の特徴は、県立高校を約30校削減することを最優先にしていることである。計画は、県内公立中学校の卒業者数が2006年まで減少傾向が続き、高校の数を減らさないと学校の小規模化が進み、「やがて、1学年3〜4学級の学校ばかりになってしまうところもあり、学校運営上、さまざまな課題が生じてきます」と危機感をあおっている。

  しかし、この議論は、全日制高校への進学率をある水準までに押さえることを前提にしており、全日制高校進学希望者すべてを全日制高校へ入学させることを保障してはいない。また、1学年3〜4学級ばかりの学校になるというが、学級規模を1学級40人として算定しているからこうした学級数になるのであり、30人学級で計算すると、すべて県教委が適正規模という6学級以上となる。

現に720名以下の県立校は約4割    各県でさまざまな「適正規模」

 このような批判に対して、県教委は学級数ではなく、学校全体の生徒数が問題なのであるという。そこで、次のように「学校の小規模化がもたらす影響」をということを強調し、それを統廃合の根拠としている。

@多様な教科・科目の展開が困難となる。  A学校行事などの面で活気がとぼしくなる。

B部活動では、活気ある活動ができなくなる  C教員一人当たりの校務分掌が多くなる。

  こうした影響が出るので、適正な学校規模は、生徒数で720人から960人であるとしている。

  しかし、神奈川県内には現に生徒数が720名以下の県立高校が60数校、全体の約4割に達している。県教委は、それは退学者が出たためであるというが、退学者が多く出たというのなら、全体の人数が720名以上になるように次年度には入学定員を見直してきたかというと、そうしたことはこれまでに全くない。つまり、この約4割ほどの学校は、新入生が定員通り入学しても、720名以上にはならないことを前提にしているのである。

  次に、小規模化の影響として指摘されたことは、神奈川県内固有の影響というより、全国どこの地域でもあてはまる影響である。しかし、この間各県で統廃合のために持ち出された「適正な学校規模」は、それぞれの県でさまざまである。新潟県では、「適正規模」は1学年4学級以上、岡山県では3学級以上、長野県では2学級以上というように、「適正規模」といっても特に根拠があるわけではない。これらの3県で「適正規模」ということであれば、神奈川県でも適正規模でなければならない。つまり、小規模化の影響ということで大々的に問題とした課題も、工夫次第で克服することはできるのである。

日本や諸外国において、小規模校の優位性が実証される

  小規模化の影響は克服できるだけでなく、現在では小規模校のほうがより大きな規模の学校より優れているという事例研究が、多く示されるようになってきている。

  国内においては、「これまで1000校以上の学校を調査してきたが、一人ひとりにゆきとどいた質の高い教育や・・・・生きいきとした授業と学びは、ほとんどの場合、小規模校の学校で実現していた」(『ひと 97年7月号』)という佐藤学氏の研究が小規模校の優位性を詳しく、具体的な数値をあげて紹介している(詳しくは『ニュース50号』を参照して下さい)。  

  さらに、アメリカにおける学校規模の問題を研究している八尾坂修氏(奈良教育大)は、『月刊高校教育』(99年10月号)で次のように言う。「コットンは・・・小規模校における生徒の学力を大規模校のそれよりも優れており、逆の場合はまったく存在しないことを見出している。またレイウッドは、小規模校研究のハイライトとして、中等学校生徒の学力面(大学進学率)、生徒指導面(危機に瀕した生徒、バイオレンス、ドロップアウト)、学校風土についての有効性を指摘している」

  以上、「適正規模」というまったく根拠のない理由で進められる、今回の県立高校統廃合計画は、根本から見直し、再検討することが必要である。

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