2023年9月15日
 

私費会計について思うところ (その2)

神奈川県立神奈川総合産業高等学校・定 教諭 福島 昇

 
 
 前号からの続きです。依然として縮⼩傾向がみられない私費負担についての投稿です。
  

3  4つの問題点

 ①私費会計の処理がすばやくできないことも

 会計担当者は授業の空き時間に⾦融機関へ⾜を運ぶことになります。空き授業時間は教材研究に費やしたいところです。

 教員補助事務担当者が⾮常勤として各校に⼀⼈配置(私の勤務校では水曜⽇が公休日。勤務日は毎朝 10 時に金融機関へ⾏ってくれます。仮に A さんとします。A さんの勤務時間は 8:30〜17:00)されているではないか、という声が聞こえてきます。定時制勤務(13:00〜21:30)の私費会計担当者からすれば、A さんに頼みにくいものがあります。

 例えば、予算執⾏伺いの校⻑決裁が⽕曜の 17 時以降になったとします。A さんの机に依頼のメモを置きます。A さんは⽊曜の 10 時に⾦融機関に⾏ってくれることになります。しかし、A さんが 1 ⽇年休の権利を⽊曜⽇に⾏使すると、⾦曜の 10 時に⾏ってもらうことになるので、決裁⽇から3⽇経てしまいます。「予算執⾏は決裁後すみやかに」でしたね。カレンダーの⼟休祭⽇の並び、学校⾏事または会議のスケジュールと常ににらめっこ状態です。

 ②私費会計の処理は常に「事故」と隣り合わせ

 ⽀払先への振り込みするとき、当⽇決済が必要な場合は⾦融機関に 13 時までに⾏かないと間に合わないことがあります。定時制の勤務時間外になります。管理職が出張等で校内にいないために決裁に時間がかかることがあれば焦りも出てきます。

 たまに忘れかけていた起案が決裁されて⼿元に戻ってきます。勘弁してもらいたいです。持ち回り決裁はチェックミスなどの会計処理上の「事故」の起こす可能性がありますので避けたいものです。

 その他にも保護者や⽣徒への残⾦の返⾦事務は⼤規模校ほど⼤変な作業です。以前、少額返⾦は直接⽣徒への返⾦と受領サインで OK でしたが、今では相当な理由を除いて、振込返⾦をするよう監査で指導されるようになりました。返⾦額は⽣徒⼀⼈ひとり異なるので、「返⾦のお知らせ」の定型⽂に流し込む⾦額が異なります。

 さらに財務処理事務端末から⽣徒基本情報として登録されている振込先の⾦融機関⼝座番号・名義⼈の存在の確認作業が三者⾯談時に必要です(ご家庭によっては⼝座変更して学校に届けていない場合があるため)。送⾦する⾦融機関や⾦額によって、返⾦額から差し引く振込⼿数料が個々に異なり、起案も⼤変です。

 ③「随意契約」のハードルは高い

 ⽣徒数に応じた「アイミツ」基準を作成できないものでしょうか? ⼤規模校では必要で、⼩規模校では不要。同じ教材を購⼊するのに、学校の規模により⼿間かかったり、かからなかったり。

 そもそも、地⽅⾃治法施⾏令第 167 条の 2 第 1項 1 号〜9 号に随意契約可能な規準を根拠とした予算執⾏がなぜか⾼いハードルになっている。業者との会計担当者の間で癒着が⽇常化する恐れがあるからか? 教職員が世間に信⽤されていない証の⼀つです。

 ④Net 決済が世の中の流れ

 Net 決済の導⼊に消極的な学校の理由としては、ボタン操作⼀つによる⼈為的なミスを懸念しているため。「組み戻し」が発⽣すれば振込⼿数料とは別に組み戻し⼿数料がかかります。⾦融機関の受付窓⼝で紙⾯による取引では、決済前にミスがあれば取引を中⽌して、決裁書類を⼀時的に学校へ持ち帰ることができます。

 Net 決済ではボタン⼀つで確定してしまうので、「あっ!」と思ったときはあとの祭り。Net 決済における最終ボタ
ンを押す⼈は、会計担当(主任)者であり、管理職ではないと思います。Net 決済による⼈為的なミスを管理職として責任は負いたくないし。私費が存在し続ければ、その会計事務も時代とともに進化が必要です。

4.最後に

 授業中の合間の隙の中で、会計処理する緊張感(ストレス)は結構重圧です。GIGA スクール構想は保護者・⽣徒に多⼤な負担をもたらしていることは既知のとおり。現場の教職員も多⼤な時間とエネルギーが費やされて疲弊しています。

 「学校の必要経費−公費=私費」と単純な⽅程式ですが、私費を最⼩にならしめる議論は永遠の課題になりつつあります。私費=0にすることは、1995 年に解決したフェルマーの⼤定理よりも難しい問題かもしれません。ここにきて増税ですか?格差拡⼤の社会にもっと拍⾞がかかりますね。(終)
 
私費会計について思うところ (その 1)
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