2022年8月26日
「教育機会確保法」施行を受けて
相模原地区に 県下3校目の公立夜間中学が開校
中陣 唯夫 (自主夜間中学ボランティア)
「人間の尊厳」をしっかとつかまえる夜間中学の誕生
学校教育―公教育は常に時代や社会を反映している。そして常に社会と時代の風に吹かれている“葦”である。
とりわけ、戦争、貧困、家庭事情、いじめ、不登校、障碍……などで教育の機会を逸した「学齢超過者」、義務教育を終えないまま来日した若者たちにとって、公立・自主を問わず夜間中学という教育の場は、端的に時代と社会を反映している。
全国でわずか31校(8都府県25市区)の夜間中学を増やしてほしい。それは、教育に関わる人間の尊厳を賭けた要求として切実なものがあった。これを支援したのが公立に学ぶ生徒の4倍はいるといわれる自主夜間中学の取り組みである。
この事態に2014年に政府は、都道府県と政令都市に一校の夜間中学を設置する方向を打ち出す。ついで16年、12万人とも推定される人々の要求に応えるべく「教育機会確保法」(略称)が成立、今日の増設の動きにつながったのである。
多くの祝福で、開校式・入学式が学びの素晴らしい予感の場に
こうしてこの4月、本県相模原市立大野南中学校に分校―夜間中学が誕生した。
23日(土)、午後2時から教室が設定されている県立神奈川総合産業高校会議室で開校式、4時から入学式が行われた。開校式の出席は18名の新入生と首長や自治体関係者等に限られたようだが、新入生の篤い思いの挨拶があり、厳粛のうちにも清新なものだったという。
入学式は新入生を中心に、保護者や関係者、学校関係者、相模原市や厚木市の自主夜間中学のボランティアの方々もこの日のために招かれて、60名を超える人々が参列。
宮坂賀則校長(本校兼務)や来賓らの祝意と励ましのあいさつやメッセージ、在籍する中学の吹奏楽部とギター部の心のこもった歓迎演奏、共同の学び舎となる県立高校定時制生徒代表の挨拶などが、新入生を主人公に親愛と激励を込めて展開され、それが「全員集合」のパチパチと写される記念写真に結実した、素晴らしい第一回入学式となった。
新入生18名の学年在籍数、国籍、年代等は次のとおりである。
学年 1年13名 2年1名 3年4名 国籍 日本籍6名
外国籍12名(中国、フィリピン、タイ、ネパールなど6ヵ国)年代 10〜20代11名、30〜40代3名、50〜60代4名
公立夜間中学は31校から36校へ 福岡市、静岡、茨城、福島市にも
14年に政府が出した方針―都道府県に一校……の緒に着いたばかりだが、これまで設置のなかった福岡市でこの春、静岡県で来年、福島市で再来年と開校が予定されている。
この流れ、「教育は人間の尊厳の保障である」という学校の新設は今までなかったものである。もちろん、まだまだ「課題」はある。しかし、教育は社会の根底的な営みであるとともに創造的なもの。一つ一つ花咲かせたいものである。
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