2021年7月1日
これまでの弊害がコロナ禍で臨界に達した
教員免許更新制は小手先の手直しではなく、
早急に廃止を!
3月、萩生田文科大臣は教員免許更新制の抜本的見直しについて早期に結論を出すように中央教育審議会(中教審)に諮問しました。
教員免許更新制については、これまで何度も見直しや廃止が訴えられてきましたが、コロナ禍でついに文科省も重い腰をあげざるを得なくなりました。
しかし、「安倍教育再生」に固執する自民党文教族は、小手先の手直し(「実質化」)で乗り切ろうとしており、こうした策動を許さず、今こそ即時廃止の大きな取り組みを教育現場からまき起こしていきましょう。
教員免許更新制は弊害だらけの制度で、教育現場を苦しめてきた
第1次安倍政権が「教育再生」を謳い2009年度から導入した教員免許更新制は、それまで一度取得すると生涯有効であった教員免許を10年ごとに行われる講習を受けなければ更新できないとしました。講習は、期限前の2年間のうちに大学等で開設される講義を30時間以上受けなければならず、受講費(約3〜5万円)や交通費(週5日)は教員の自己負担です。
幼稚園から高校までの教員が一堂に会し受ける講習ついては、「講師の専門分野の話を聞くだけで、現場で直面する課題を踏まえた内容になっていなかった」という声が当初から聞かれました。
また近年、教職員の仕事量の増大と長時間労働のもとで、「講習で強制的に時間が取られるのは大きな負担であり、やめてほしい」というのが、多くの教員の率直な思いでした。
さらに、退職者や学校を一時離れた人の場合、最後の免許更新後10年経過すると、免許が自動失効してしまい、講師を引き受けることができず、現場は教員確保に苦労してきました。また、うっかり更新を忘れてしまうと失職となり、学校を混乱させてきました。
全国高校PTA連合会や全国市長会も廃止を要望
中教審は、1月「『令和の日本型学校教育』」の構築を目指して」(答申)を発表し、そのなかの「教員免許更新制の実質化について」において、「教員免許更新制は、・・・・・採用権者が実施する研修との重複などの負担感が課題として指摘されてきた」、「教員免許更新制や研修をめぐる制度に関して・・・・・総合的に検討していくことが必要である」と「更新制」について検証や検討の必要性を指摘しています。
中教審はこの答申をまとめるに際して、昨年秋に教育関係団体等にヒアリングを行い、「更新制」についての意見や要望を聞いています。そこでは、多くの団体が「更新制」の問題点を指摘し、見直しや廃止を訴えています。
廃止をもとめる諸団体
全国高等学校PTA連合会
すでに導入から10年を経過しており、ぜひ早急に検討に入り、廃止してもらいたい。
新任の場合には10年経験者研修と更新講習時期が重複し、金銭的、身体的、精神的負担感は計り知れません。退職者の場合、最後の免許更新から10年を経過すると免許が失効状態となり、講師を引き受けられないことになります。
様々な面で不都合が生じており、重ね重ね廃止を切望します。
全国市長会
「包括的な検証」ではなく、「抜本的な見直しを含めた検証」とすべきである。
現場の教職員の負担感はかなり大きく、研修に対する満足度は低い。そうした実態をふまえ、教員免許更新制を取りやめるべきであると考える。
全日本教職員組合(全教)
教員免許更新制が教員の多忙化を増大させ、未更新者が教員未配置の要因となっていることは明らかであり、教員の更新講習に係る負担は大きい。ただちに廃止すべきである。
日本教職員組合(日教組)
「研修との重複などの負担感」「迅速な人的体制の確保」、・・・・などの課題を徹底検証し、「実質化」ではなく、廃止を検討する必要があります。
抜本的な見直しを求める団体
全国特別支援学校長会
教員の大きな負担になっている。代替教員等を探す際に、免許を更新していないために採用できないことも多い。ぜひ、総合的に見直しを検討して頂きたい。
ポイント化などの手直しではなく、研修は自主研修中心で
他方、教職員組合の弱体化を狙ってつくられることが多い全日本教職員連盟は、ヒアリングに際して廃止や抜本的な見直しを提起せず、「教育委員会主催の研修をポイント化するなどして、10年かけてポイントをためていくような免許更新制の改革、実質化を進めていただきたい」などと答えています。
本来研修は自主研修が中心であるべきであって、管制研修をポイント化し、10年かけてポイントを貯めていく研修は、生徒のためになる生きた研修とはいえません。このような手直しは、教員免許更新制の悪しき存続につながります。
コロナ禍、教員免許更新制の弊害を保護者・首長等に訴え、即時廃止の運動を広げよう
中教審は、今回の答申のなかで、「新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの現職教員が、免許状更新講習が数多く開講されている長期休業期間中も含め、子供たちの学びの保障に注力しなければならない状況が生じている」と記しています。
そして注で、コロナ禍「土曜日に授業を行う場合や学級を複数グループに分けて指導を行うなど、通常時とは異なる業務の発生も考慮した人的体制を確保する必要」に触れています。
さらに、「教師の勤務の長時間化や教師不足の深刻化といった近年指摘される課題との関係も視野に入れつつ・・・・将来にわたり必要な教師数の確保とその資質・能力の確保が両立できるような在り方を総合的に検討していくことが必要である」としています。
これまでの長時間過密労働や教員不足がコロナ禍で激烈化し、そしてついに教員免許更新制の弊害が臨界に達したことに、中教審も直面し見直しを検討せざるをえなくなったといえます。
コロナ禍の今、教職員の業務量の増大と長時間労働のもとで、教員免許更新制が教員の大きな負担となるとともに、講師など教員確保の障害となっていることを保護者・県教委・首長に訴え、「実質化」や「ポイント化」などという小手先の手直しではなく、諸団体と協力・共同して、即時廃止を求める運動を広げていくことが強く求められています。