『レクイエム』考

4.レクイエム考
 
V.セクエンツィア SEQUENTIA
 
(D)コンフターティス Confutatis (Andante イ短調 4分の4拍子)

 最初は男声によるTuttiで烈しくも"confutatis maledictis, flammis acribus addictis:"(呪われたものは退けられて烈しい炎に委ねられます)と呪われしものを告発する。弦の奏でる何かを削るような旋律が、男声合唱のじっとりしたリズムとうまく調和して禍禍しさを演出しているが、次の女声の清らかさはどうであろう。さきほどの烈しい形相とは打って変わって、弦は世にも甘い清い旋律を奏で出し、女声はsotto voceで"voca me cum benedictis."(私を祝福されしものとともにお呼び下さい)と懇願するが言い終わらないうちにまた禍禍しさにかき消される。この対比は二回繰り返されるが、あまりに単純で見事な対比の例である。特に二回目の女声のメロディは悲痛で美しく(ランドン版がこの単純な色彩対比の場面にティンパニを用いて飾り立てているのは少々行き過ぎと言わざるを得ない。加えて細かいところになるがジュスマイヤー版の22小節目、第一第二ヴァイオリンのF音に特異にアクツェントがついている効果について、まだわからないが粋を感じもする)そして次であるが、"oro supplex et acclinis,"(ひれ伏し跪いて私は懇願する)の部分からは、対立していた男声と女声が一体となり、弦の伴奏が3連音に変わって静かに不協和音をたたえ出す。厳かな声の旋律と上昇下降を緩やかに繰り返す弦、そして優しい木管金管の和音が儀式の厳粛性を醸し出すようだ。40小節目の最後の解決しない和音は、次の曲〈ラクリモサ〉へと綺麗に場を引き継がせる。(譜例5 未解決音)

 

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