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ナンシー関 〜そのツッコミ魂忘れまじ〜


<その他ナンシー関に関するあれこれ>

 ナンシーさんに関することで追悼に入らないものをなにか書いていこうと思います。よく分からない雑文になる可能性も多々あると思いますが…。


その一 ほとんど意味のないナンシーさんゆかりの地訪問記

 東京近郊のナンシーさんゆかりの地といえば、三軒茶屋や祐天寺といった彼女が住んでいた界隈だろうかと思う。エッセイを読んでいるとそんな地名がたまに出てきたりしていた。今回は前にボン研究所のトップページのエッセイに出てきたラーメン店であろうと思われる祐天寺「イチローラーメン」と中目黒「ビッグママ」(追悼記事に行きつけという風に出ていた)を特に事前準備も無しに、見つけられたらいいな…などと思いつつ散歩をしてみました。
 ボン研究所のエッセイの該当部分を抜き出してみるとこうである。

-前略- 私は祐天寺というところに住んでいるのだが、6月くらいに駅前にラーメン屋がオープンした。何回か行ったのだけど、そこにものすごく低音で喋る人(多分、店長)がいるのだ。これが並みの低音ではない。ゲタさんとかゾウさんより全然低い。それも、異常に響く。ものすごくクッキリとした声。
男性の場合、低くて響くなんていうと「いい声」ということになるのだろうが、その人の声は完全に「いい声」という域を逸脱してるくらいに「いい声」なのだ。逆に、何か日常生活に支障をきたしているのではないかと思えるほどの物件である。-後略-2001年11月29日記

 いい声の人がいるというだけの事なのだけれど、なにか気になる。特に「何か日常生活に支障をきたしているのではないかと思えるほどの物件である」という一節は尋常じゃないのではと興味を抱かせるに十分だ。しかし、店の人に聞いてみようなどということは全く考えていない。普通にオーダーしてラーメンを食べているうちに、その人の声が聞こえたらラッキーというだけのことである。
 かつて一度前を通ったことがあるので場所は分かるが定休日など確認していないし、2時近くだったので、やっていなかったらしょうがないという気持ちで行ってみる。小雨の中、祐天寺の駅に降り、改札右手に行くと駅より徒歩十秒という好立地にそのラーメン屋はある。営業していたので、まずはラッキーということで店内に。お洒落な内装だ。淡いオレンジと白の2色を基調として照明などにも凝っているようだ。黒と白などで渋くまとめるより、オレンジを取りいれていることでふんわりとやわらかい印象で、嫌味がない。
 店内はカウンターのみで、10席ほど。客の入りは半分ほど埋まっている感じでちょうどよい混み具合である。店員の方は少し年嵩の人と20代中盤ぐらいの若者の二人であった。イチローラーメンが基本のラーメンのようで650円。チャーシューメンが850円。これに味付玉子やメンマ、大盛りなどオプションをつけるようである。椅子は流行りの(というのもなんだが)足がつかない程度に高いものだが、背もたれもわずかにあって、割と座りごこちがいい。ナンシーさんのまるっこい体も難なくおさまりそうな感じがする。
 ラーメンと味付玉子を頼む。この段階で二人の店員は多分、ナンシーさんの文章の方ではないのではという気が強くなった。特に声が低くもないし、いい感じに響くでもないようだ。ただ、接客は丁寧で気持ちいい。少し待ってきたラーメンは背脂がのって、体が温まりそうだ。……ともう「いい声」から離れつつあるので簡潔に書こうと思う。ラーメンは美味しかった。特に味玉が。半熟の加減と黄身についたタレがたまらなく。和風だしに背脂という組合せもなかなかよい。
 ということでただラーメンを食べ終わり、スタンプカードを貰って(5回来店毎になんらかのサービスがあるようだ)出てきてしまったのだが、もしかしたらここではないのか。といっても駅前に最近できたラーメン屋といったらここしかないだろうから、ここということで。なんの検証もないのであるが、店の雰囲気もラーメンもよかったのでよしとしよう。
 次に中目黒へ向かうのだが、一駅なので歩くことにした。ナイアガラという鉄道ファンには一目置かれる?カレー屋を横目に線路沿いにひたすら歩く。途中線路を見失いそうになったが、中目黒駅前にできた高いビル(何というビルなのだろう)を目標に歩き、線路沿い(ガード下)の飲み屋街に行き当る。まずこの飲食店の連なりを見て歩いて、探そうと思う。ビッグママの場所は分からないし、夜のみ営業だろうから、見つかったとしても外観を覗くだけである。中華屋やラーメン屋その他の店の中でスナックらしき、小さな店やその看板が出ていたりするが、ビッグママは見つからない。山手通りを渡って、代官山方面のガード下も覗いてみたが、あまり飲食店がないようで、見つからない。なにか行事で餅つきをしていたようだが。
 線路沿いから少し離れて中目黒銀座という商店街があり、ここを次のターゲットに。小さなスナックがあるという感じはないし、古本屋などの方に目が行ってしまって、ビッグママを探していたのかさえ定かではなくなってしまった。さらに、かつて行ったことのあるラーメンの有名店「八雲」が目に入り、散歩で小腹が空いたこともあり、2軒目ということで入店してしまった。つけそばを頼む。……このあたりでビッグママのことはほとんど忘れてしまっていたし、主なポイントにはなかったので、捜査は勝手に終了ということにした。ということでラーメンを食べて散歩をしただけの日曜日でした。(02/12/1記)


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そのニ ひと昔前のプレイボーイにナンシーさんが…

 引き出しの奥をいじっていたら、ちょっと昔の週刊プレイボーイが出てきた。たまに買っていたのだろうか、そんな気もするがよく覚えていない。浅香唯がアイドル全盛の頃のようで、付録のような小さな写真集がついていた。1989年の2月14日付の号だ。
 いろいろ感慨深い中で、後ろの方にある読者の投稿ページ「生録ひろば」にナンシー関の連載らしきものを見つけた。「ナンシー関のけしごむ偉人伝」というタイトルのページ4分の1ぐらいの小さなコラムである。「小林一茶です」というコメント付きのけしごむ版画は歴史上の人物だからか、臨場感のようなものは欠けるが素朴でいい。文章は次のようなもの。

「小林一茶」
小林一茶(1763〜1827、宝暦13〜文政10)信州生まれ、江戸後期の俳人。
 「継続は力なり」というが、まったくだ。小林一茶の代表句に「やせがえる 負けるな一茶 ここにあり」というのがあるが、一茶がもし生涯この一句だけを残したとしたら、果たしてそれは「弱者への共感あふれ朴とつとした独自の句境」と評されたろうか。「オレがちょっと言ってやったら、門田その日4の4よ」とか、わけのわからないことを言う、タニマチ・メートル・オヤジといっしょにされたかもしれない。

 これだけの文章だけれど、芸風がなにか完成しているのを感じる。なんとなく、この文章を読んだのがナンシーさんの文を読んだ最初だったような気もしてきた。架空のオヤジのセリフ「オレがちょっと言ってやったら、門田その日4の4よ」など、当時の門田の状況の微妙なニュアンスも伝えていて、絶妙なのだ。(と思う、門田の晩年の感じが思い起こされるような気がする)
 他のプレイボーイの号はないのでこの連載の、他に取り上げられた人物は分からないが読みたいな。この号でのナンシーさんのけしごむ版画は小林一茶だけではなく、「ナマロクくん」というタイトルにちなんだ少年のものやバレンタインデーにちなんだ「チョコほしい?」との言葉付きの女の子の版画など、実はナンシーさん盛り沢山なのだった。ページの枠外にも老若男女の特にキャラクターのない小さな版画がたくさんある。ナンシーさんの未収録の連載はかなり初期にさかのぼれば、かなりあるのではないかと思ったのだが、どうやって掘り出して行こうか、やってみようかとも思う。(02/12/5記)


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その三 テレ東、日曜ビッグバラエティ「花の生涯2002」(題字 森繁久弥)にて

 事前に2ちゃんねるにてチェックしていたので、この番組でナンシー関が登場するのが分かっていた。ビデオしたので以下に2分あまりの放映内容を書き出してみます。
 直前にはナンシーさんとほぼ同年齢で死去した日も近かった、伊藤俊人さんだった。


 「異色のアーティスト、消しゴム版画家、ナンシー関さん」とナレーションに続いて、おびただしい数の消しゴム版画が画面に映される。(いろんな大きさ、形状のものだ)
 「みなさんも一度は消しゴムを削って遊んだことはありませんか。この消しゴムを生涯の職業としたアーティストがいました。テレビでお馴染みの有名人たちをモデルにした版画、さらに笑いを誘う絶妙な一言」この間画面に出たのは、大橋巨泉(遊べよ、ばかやろう)、玉置浩二&田原俊彦、鈴木宗男。
 「作者の名はナンシー関。さまざまな雑誌に連載を持ち、版画のほかにもテレビやタレントの鋭い批評でコラムニストとしても活躍していた彼女ですが、その実相はあまり知られていません。」この間に、週刊文春「テレビ消灯時間」(真珠夫人)、週刊朝日「小耳にはさもう」(片平なぎさ)、噂の真相「顔面至上主義」(薬丸裕英)、CREA「小さなスナック」(第23回)が映される。
 続いて、何冊かの著作が映される。左手の甲に「カッターと生きる」の自画ハンコを押したナンシーさん本人が登場。カッターと生きる、とつぶやいて笑う。なにかの会で花束を貰って笑うナンシーさんの絵。
 「何百を越す版画の数々、いったいなぜ作り始めたのでしょう。」というナレーションの問いかけに答えるように、ナンシーさん本人の言葉が続く。(仕事場らしきところでハンコを前にして)
 「これが消しゴムだっていうことに気づいた時に、あの、分かった時に、その人が驚いてくれればそれで、私はいいと思いますんで。」
シャチハタのインクでハンコを押しながら、「あの、えーとこれはスタンプなわけですけど、私はこういうスタンプとかはんことか好きなんですね。それで彫ってることが楽しいっていうのが一つあるんですけど。」
 ナンシー関、敷島(だと思う、テロップは入らず)、山田五郎の三人が映った写真が出る。ナレーション「ナンシー関とはどんな人物だったのでしょう。公私共に親しかった山田五郎さんは」
以下、山田氏の話。「あー、なんかこの子、女子高出身の子だなあ、という印象が強かったですよね。あのー、意外に面食いだったりしてね、美形キャラに弱かったりするところとか、あと、わりかし凄い優しい細やかな気遣いしてくれる所とかね、そんな凄く女の子っぽいところがあって、(飲み屋の写真挿入、5、6人いるが誰なのか僕はわからない)しかもなんか、人の事はよく気がつくんだけど、自分の事は非常に迂闊(うかつ)だったりしてね。消しゴムを彫るカッターの刃、出しっぱなしのままカバンの中に入れといて、もの探して慌てて手つっこんで、ざっくり切ってみたりとか。なんか、そんな自分のことには、以外に迂闊な一面もあったりして、愛すべき人柄だったんですよね。」先ほどの写真などがリフレインする。
ナレーション「時代を切り取った消しゴム版画はもう見ることはできません」


 ナンシーさん本人のVTRもあり、よかった。最初に出てきた消しゴムの数が壮観だった。キャプチャーがあればアップしたいところだ。番組は森繁久弥をゲストに迎えていたので、是非とも本人からのコメントも聞きたかったが、無かったようだ。(早送りして見たものでたぶん…)
 あと、アーティストという紹介のしかたが、敬意を感じて嬉しいところだ。



その四 ナンシー関、急逝後に出た本(2002.6.12〜2004.6.12)

 出版された順で(古い方から)一覧表にしてみました。

著作名 出版社 出版年月 頁数・値段(税込) 備考
ナンシー関のすっとこ人名辞典 飛鳥新社 2002/07 186p ¥1,200 カラフルな版画が素敵な一冊。
秘宝耳 朝日文庫 朝日新聞社 2002/07 ¥546 僕はこの文庫の解説を読むためだけに買いました。
天地無用―テレビ消灯時間〈6〉 文芸春秋 2002/09 230p ¥1,300 本人以外がタイトルをつけた最初の本でしょうか。
冷暗所保管―テレビ消灯時間〈4〉 文春文庫 文芸春秋 2002/10 ¥440 この解説は読んでないなあ。文庫は解説が肝か。
何はさておき 世界文化社 2002/11 195p ¥1,050 タイトル名に味がある。単行本未収録が集まった貴重な本。
リリー&ナンシーの小さなスナック 文芸春秋 2002/12 301p ¥1,500 急逝により突然終了となった対談。リリーさんの追悼が最後になった。
何がどうして 角川文庫 角川書店 2002/12 ¥480 世界文化社の単行本は角川なのか。
ナンシー関の約百面相 河出書房新社 2003/02 ¥1,260 この本は記憶になし。すっとこ人名辞典みたいなのかな。
ナンシー関―トリビュート特集 KAWADE夢ムック 河出書房新社 2003/02 191p ¥1,200 トリビュートは辞書検索によると
感謝[賞賛,尊敬]のしるし,(…への;に対する)賛辞,捧げ物
ナンシー関の記憶スケッチアカデミー 角川文庫 角川書店 2003/03 ¥500 これにも解説あるのかな。絵の大きさは大丈夫だろうか。
何をかいわんや 世界文化社 2003/05/29 217p ¥1,260 値段が少し高めなような。未収録コラム本の第2弾。
ナンシー関のボン研究所 角川文庫 角川書店 2003/06 ¥500 未読です。HPのコラム以外にもなにかあるのか。
ザ・ベリー・ベスト・オブ「ナンシー関の小耳にはさもう」100
朝日文庫
朝日新聞社 2003/06 ¥693 どんな基準での100なんだろう、未読。これにも解説か。
無差別級 河出書房新社 2003/06/21 246p ¥1,470 未収録対談集シリーズ第一弾。桂三枝や小宮悦子とも。
雨天順延―テレビ消灯時間 5 文春文庫 文芸春秋 2003/07 ¥420 未読、解説要チェックか。
ナンシー関大全 文藝春秋 2003/07/26 349p ¥2,940 豪華な追悼本だ。店頭でパラパラ見ただけだが。古本屋要チェックか
何を根拠に 世界文化社 2003/10 243p ¥1,260 映画コラムが面白い。筋や俳優とは無関係の独自の視点が。
ナンシー関 消しゴム版画 メディアファクトリー 2003/10/03 327p ¥3,990 版画のみを集めたもの。高校生時代の作品もあるらしい。
超弩級 河出書房新社 2003/12/18 237p ¥1,365 第一弾に比べるとサブカルな人が多いような。群さんとのがいい。
ナンシー関の記憶スケッチアカデミー〈2〉 カタログハウス 2004/01 95,46p ¥819 頁数が変則なのは、後ろから後半は読むようになっているので。
赤パソコン青パソコンは読む価値あり。
ナンシー関 大コラム 世界文化社 2004/02/21 ¥1,575 未収録なコラムはもうないと判断したのだろうか、世界文化社。
超高校級 河出書房新社 2004/03/18 227p ¥1,365 対談第3弾。新旧いろいろあるみたい。
ナンシー関超コラム テレビCM編 世界文化社 2004/04/20 ¥1,575 シリーズ化するのか、世界文化社、できる。とはいえ未読
耳のこり 朝日文庫 朝日新聞社 2004/05/14 ¥546 存命中最後の作品だったか。やはり解説が気になる。
ナンシー関激コラム 世情編 世界文化社 2004/06 ¥1,260 世情とは「鳩は怖いぞ」みたいな日常エッセイかな。
だったら是非読みたい。

(著作名、出版社、出版年月、値段はAmazon,co.jpをそのまま使用しました。また頁数は横浜市立図書館の蔵書検索を使用しました。)


追悼本、単行本の文庫化、未収録のコラム集・対談集、そして版画集。さらにコラムを再編成した本。あらゆる形のものが出た感はありますが、今後どうなるんでしょう。。。