3/25/01〜5/22/01

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5/22
  職人、と呼ばれる人が大学の近くにいて、研究室に入ってから今まで2年ちょっと、ずっとお世  話になっている。この方はガラス職人。俺などから見るとまるで魔法のようにガラスを操る。すで  に60年以上、ガラスを加工しつづけてきたのだそうだ。   今日は新たに一人、大学内の職人さんに会った。   キャンパス内の時計店で、自分の指先のように小さいピンセットを操る時計職人。今年で勤続68  年、うちの大学で働く人たちの中でも最長老で、「本郷キャンパスの主」と学外向けの広報誌に紹  介されたこともある。あの大人二人がかりでも抱えきれない幹のイチョウ並木が、まだ二階屋くら  いの高さしかなかったころに勤め始めたとか。   扱うものは違うけれど、職人という職業(?)が同じためか、お二人に共通する点がたくさんあ  った。戦前に奉公勤めでその道に入り、徒弟制度の中で技を身につけたこと、その後60年以上その  道一筋で勤めてきたこと、大学内外の生き字引であること、お喋り好きなこと、朗らかでよく笑う  こと、聞き上手なこと。俺はひと目見たときから大好きになってしまったこと(と書くと生意気か  もしれないけれど)。   今回、オチはない。ただの駄文。
5/20
  おおた綾乃さんから「キャベツのうまたれ」が届く。昨年、おおたさんがしょうのさんに送った  ものをおすそ分けしてもらったものと同じもの。使いきってしまったのでおおたさんにお願いして  送ってもらったのだ。   博多では焼き鳥にキャベツがつきもので、このキャベツにかけて食べるものだと聞いた。実際、  キャベツにかけて食べるとうまいんだ、これが。うちの母親と妹にも大好評のとっておき調味料な  のである。   で、早速今日、皿に千切りキャベツだけを盛り、うまたれをぶっかけて食べた。   ……うまい!!そうそうこれだよこの味なんだよ。クセになるんだよこのすっぱさが。   送ってくださったおおた綾乃さん、この味をお裾分けしてくださったしょうのさん、本当にあり  がとうございます。俺は幸せです。   …あ、とてつもなくくだらないこと思いついた。キャベツだけのサラダを見て。   「フルムーンサラダ 〜kabidz ounli(cabbage only)〜」   そういえば。博多ではキャベツの「ザク切り」にかけて食べるって書いてあるけど、これってど  んな切り方なんだろう…?ヒートホークで切るとか?<違
5/19
  イチロー、佐々木、中田。すごいなあ。本当にすごい。なんの疑問も差し挟む余地がない。21世  紀最初の国民的英雄だ。事前の期待が大きく、そして期待をはるかにぶっちぎる活躍を見せている  のがイチロー。現時点、ア・リーグで打率3位、安打数と得点と盗塁数で1位。これは新人王どころ  か下手すりゃ年間MVP取っちゃう勢いだよなあ?   中田もすごい。恐るべきチームメイト層の厚さと(先日撤廃されたが)EU外枠のせいで出番こ  そ少ないけど…。値千金の活躍をする回数のほうが出場回数より多いというのはどーゆーこっちゃ?   ……人外?   天才って、いるんだなあ。   でもね、今のところ海外で活躍する日本人選手の中で俺が一番尊敬するのは20世紀最後の国民的  英雄、野茂英雄。   奪三振記録、ノーヒットノーラン、オールスターに最多得票で出場、最優秀新人賞。これだけ長  く大リーグで投げていながら今年もノーヒットノーランを達成したその実力。   あの人の活躍って絶対イチローや佐々木に勇気を与えたと思う(もちろん、その勇気がなければ  大リーグに行かなかったわけじゃないだろうけど)。”最初の一人”になるという偉業は他のなに  にも増してすごいことだと思うのだ。   俺にとってそれがどのくらいの評価かというと…そうだなあ、イチローがTy Cobbくらいの成績  を残したら(23年連続首位打者、最高打率.420、生涯打率.367)野茂に並ぶかな?ってくらい。あ、  サチェル・ペイジ(雑想5/13/00参照)並の伝説を残すのでもいいや。   海外のニュースページを回って知った英単語〜。    single (動詞)ヒットを打つ    double (動詞)ツーベースヒットを打つ    plunk  (動詞)(死球を)当てる    streak (副詞)連続の 例:Ichiro extends his hitting streak to 23 games.                  イチローは連続試合安打記録を23試合に伸ばした。    top   (名詞)表 例:top4 = 4回表    bottom (名詞)裏 例:bottom5 = 5回裏    starter (名詞)先発投手    setupper(名詞)中継投手    closer (名詞)抑え投手、日本で言うストッパー   うーん、役にたたねー。
5/18
  友人某君の携帯電話がこわれたそうな。   メモリーも復帰不可能で、この2年9ヶ月で電話帳に登録した150件のうち、半分以上が永久に  失われたとのこと。えらく落ちこんでいる。   彼のことではないが、携帯番号をお互いに交換していれば友達、もしくは携帯の電話帳に登録し  ていれば友達、という感覚の若者がたくさんいるらしい。また、一日に20通以上の携帯メールをや  りとりしないと不安、なんて人もいるんだそうだ、今の世の中には。   こういう人たちが携帯の電話帳を失ったら、自分の人間関係が完全崩壊したように感じて絶望す  るんだろうなあ。   消えるのはたかが数字の羅列。当たり前だけど、電話は人間関係を築く一手段であって人間関係  そのものではない。電話番号が消えても人間関係が消えるわけじゃないのだから、もう一度登録し  なおせばいいのさ。連絡先がもう手に入らない?そんな相手と今後連絡をとることがありうるのか?
5/17
  ようやく本格ミステリで「これは面白い」と言えるものを読めた。   森博嗣の推理小説はすごい。「すべてがFになる」で驚嘆。続く「冷たい密室と博士たち」でも  すごいものを見せられた、という感じ。うまく言葉にできないけど、なんだか詰め将棋の棋譜を見  せられているかのような感触だ。とにかく無駄がなく、見せすぎないのがいい。主要登場人物が徹  底的に理系人間であるのも波長が合う。言葉遣いもしばしば感心するほどうまいし…俺にとっては  ほとんど欠点がない。   現在、3作目を読んでいる。いきなり8作目を貸そうとしてくれた人がいたが、これは辞退。各  作品がストーリー的にはそれぞれ独立しているとはいえ、シリーズものの順番を違えて読むのは気  持ちがわるい。作家の成長と登場人物の成長とを楽しみたいし。   さーて、犀川助教授がなにやら結論に達したようだ。3つ目の謎解きを楽しもう。
5/8
  ちょっと生意気なことを言ってしまった。   「若いんだから批評家ぶるな」と叱られた。   もっともだと思う。
4/27
  最新号のベルセルクを読んで3回ほど凍った。   まずはグリフィス立ち姿の見開きで背筋が震えた。   「どうやら俺は自由だ」で脳髄が硬直した。   「俺は俺の夢を裏切らない」に…いやむしろそのあとの「それだけだ」では、蝕以来ずーっと重  ねてきたグリフィスについての考察が木っ端微塵に砕かれた。   グリフィスのせりふが出てきたのはあの「…げる」からだけでもほぼ5年ぶり。ガッツがグリフ  ィスの言葉を聞いたのは94年9号(8巻最後)以来なんと7年ぶり(実時間)のこと。だから、  というべきか、それなのに、というべきか、せりふの一つ一つがすべて核爆弾クラス。   いやいやいやいや、はふー。もうため息しかでません。   ガッツに心を揺さぶられることがないと気づいたとき、グリフィスは何を感じたのだろうか?喜  びか、悲しみか、哀れみか、怒りか。少なくとも俺には、彼が喜んでいるようには見えない。「俺  は自由だ」と言ったときのグリフィスの表情やガッツを見る目の中に、空恐ろしいほどの虚無感が  あるように見える。   それに対して、「夢を裏切らない…それだけだ」と言いきったときの表情からは明確かつ断固と  した意思を感じる。   ガッツにも、ガッツに心を揺さぶられないということにも、何の関心も感情も、ましてや感傷な  ども抱いておらず、ただ夢のみを追いかける自分をしか感じていないということだろうか。   まっとうに考えれば以上のようになる。しかし、ちょっと違った見方をするとまったく異なる結  論になりそうだ。   物語のこの部分でガッツとグリフィスを再会させ、「俺は自由だ」とグリフィスに言わせたこと  はどういう意味を持つのだろう?あえて再会させずに物語を進めたほうが、グリフィスがガッツへ  の関心を失っていることを示すには効果的であるように思える。むしろ、夢の追求を後回しにして  も確認しなければならないほど、いまだにグリフィスにとってガッツの存在が大きいのだというこ  とを暗示していると考えることもできる。   いずれにせよ、この180話がここで出てきたこと、すなわちここでガッツとグリフィスが再会  し、言葉をかわすシーンが挿入されたことがどのような意味を持ってくるのかは、ベルセルクが終  了した後でもじっくり考えるべきだろう。「再会」の意味ではなくて、「再会するシーンをここに  入れたこと」の意味を。   そして気になる終わり方、キャスカの振り返る姿。   これまでの展開から、キャスカには赤ん坊の気配を感知することができるらしい。グリフィスを  みてその受肉先である子供の存在に気づいたら…それこそガッツにとって胸の張り裂けそうなシー  ンになることだろう。   また、キャスカに対するグリフィスの思いの一端が出るかもしれない。長い間議論の対象となっ  ていた「なぜ蝕でキャスカを犯したのか?」という論題の答えを知ることができれば、掲載紙の9  周年と同時にすばらしいプレゼントをもらえることになるのだが…。   ああ、次号はいつだ?   ゴールデンウィーク後!?ゴールデンウィークいらないから早く出してくれ〜!!
4/24
  この72時間で睡眠時間5時間。んー、アホだ。   日曜日を有効に使わないと死ぬってことだな。   飲み会あり。   ○さん(男性)のあえぎ声を生で聞くという珍事を起こしてしまった(←微妙な言いまわし)。   二度と聞きたくねぇ…。
4/16
  某社の役員面接終了。ちなみに4/6の某社とは別の会社。なんかもうほとんど内々定出すため  の手続きとゆーか単なる顔合わせとゆーか。イヂワルな突っ込みもまるでナシ。こりゃあ行けただ  ろ。結局就職活動で本当に会社を訪問したのは10日に満たないという高効率就職になってしまっ  た。さんざっぱら考えこんで自己PRとか作ったのはなんだったのやら。   さてさて、これで就職活動は終わり。研究に力を入れないとな。あ、未取得の単位もちゃんとと  らないと洒落にならんな。気をつけないと。   さて、ヒカルの碁。いいですねぇ。ヒカルが一コマも出てこない回って久しぶりだね。   ノルマンディー秘密倶楽部が終わったのは痛いなあ。好きだったんだけどなあ。友人Kも嘆いて  いるに違いない。   和月伸宏の今回の連載はなんだかこう、華がないなあ。えーと・・・あ、「ZOMBIE PO  WDER」にそっくりなのか。あれは連載終了直前に人気が出たというわりとかわいそうな作品だ  ったよな。アクションはわりとうまかったし、ギャグとかも結構面白かったんだが。   連載終了直前に人気が出たといえば日本橋ヨヲコの「プラスティック解体高校」もそうだったな  あ。ヤングマガジンだけど。あ、この人の漫画は必読クラス。最近短編集が出た。現在は「コミッ  クIKKI」という雑誌で連載を持ってる。すごいです。   ベルセルク最新話・・・うーん、ここでいきなり会うとは思えないんだけど。タッチの差でどっ  か行っちゃうとみた。グリフィス。   カラー扉絵、ガッツもグリフィスも微妙に体型が歪んでいるように見える。同柄の全プレポスタ  ーに応募する気がおきないのはそのせいか。   ハネムーンサラダの穴埋めの「鬼っぷり」は水準以上のできだと思ふ。昨年のギャグマンガ部門  で賞をとった作品だよな、これ。明るく笑えていいんじゃないでしょうか。最終ページのトドメを  さすコマがちょっと見栄えしないのが難点といえば難点か。   「ホーリーランド」も読ませる作品になってきた。後は言葉で進めずにストーリーで進めてほし  い。「以来、僕はコントロールを失ってしまった」のコマは、描けば2話分くらいのボリュームに  なるはず。その手間を惜しまずに進めてほしいところだが…。   「蛮勇引力」は・・・未知数すぎて何もいえない。「戦え!アナウンサー」は次回が楽しみすぎ  る。「コイズミ学習ブック」終わりは悲しい。「今日はここまで」・・・味気ない4コマだ。味気  ないのも味といえば味か。   さて、そして「エアマスター」である。ベルセルクがまたしばらくバトルなしで進みそうな現在、  一番アツイ漫画である。っていうかむしろベルセルクのバトルよりアツイかも。勝敗が読めないし。  マキが感じているプレッシャーが画面から溢れ出してきそうだ。アクションも静止と動作のコマの  間合いが絶妙で思わず息さえ止まってしまう。この間合いと演出力を保持したまま絵柄がもっと改  善されれば完璧なドル箱になるんだけどなあ。11巻はサイン会で買ってしまったことだし、コミ  ックス揃えようかね。
4/14
  「サトラレ」の映画版をみた。最強の破壊力。全編哀しみに満ちている。コミカルであるらしい  場面でさえ悲劇に見える。役者の演技の上手下手はよくわからないけれども、悪くはなかったんじ  ゃないだろうか。少なくとも俺には不満はなく、むしろかなりうまかったように思えるが。   原作をうまくアレンジして原作以上にいい作品になっていると思う。後半一時間、泣きっぱなし  になってしまった。滂沱。   なんて哀しい生き物だろう、人間も、サトラレも。   漫画を原作とした他メディアの作品を誉めるというのは俺には珍しいかもしれない。   踊る大捜査線も見たくなってきた。
4/12
  体中の毛の中で、どの毛を抜くのが一番痛いかと聞かれたら十人中九人くらいは「鼻毛」と答え  るのではないだろうか。格別だからなあ、あの痛み。うん、痛いぞ、あれは。   かくいう俺もそう思うけど、もし前期の質問をされたらもう少し限定した答えを返すと思う。す  なわち「入り口付近の鼻毛」である。奥のほうはあまり痛くないのだ。   今日、帰り道でえらく鼻がむずむずした。鼻をかんでも一向にむずむずが消えない。で、ちょっ  とさわってみると…あ、出てる。仕方ない、えーと、きゅっとつまんで…鼻毛って抜くの痛いんだ  よな…えーい、いったれぇ!(ぷちっ)…あれ、あんまり痛くなかったぞ…げっ、なんじゃこの鼻  毛は!!3cmくらいあるぞ!!   …これだけの長さがあるということは、よほど奥のほうに毛根があったはずで、つまり鼻毛とい  えども奥のほうのやつはあまり痛くないんだなぁと新しい発見をした一日だった。   蛇足。上記のを抜いたあとに比較のため入り口付近のやつを抜いてみたのは秘密である。まして  ややっぱり入り口のほうは涙が出るほど痛くて、ふと阿呆なことをしている自分に気づいてしまっ  たなんてのは墓までもっていく重要機密である。
4/8
  いやはやまったく、世の中うまくできている。   悩み事のタネは尽きないものではあるが、本人の努力次第で解決できるものでもあるわけだ。   さあ、努力努力。ここが一つの天王山。
4/6
  某社のセミナーに参加。   自己PRを1分以内、志望動機をやや掘り下げて説明、などなど短い面接。1:4のグループ面接  なんでまあプレッシャーは少ないんだけど…。いやー、さすがに緊張はしたなあ。   セミナー後、同じ面接を受けた人と意気投合。残念ながらお互い時間がなかったのでメールアド  レスを交換した。九州と筑波の人であった。   …もしあの人たちがなんかの間違いで俺の名前を検索使用なんてつもりになったらこのページは  一発で見つかっちゃうんだよなあ。んー、オタクがばれてしまう…ま、いいか。   大学へ。本日は花見。研究室に配属になった新4年生の歓迎会でもある。   いきなり駆け付けビール1本飲まされる。Yさんに。きっつー!   その後もかぽかぽとビールばっか飲んでいたが、さすがライトアルコール、酔っ払いはしても意  識はしっかりしたもんだ。   しばらくして酒が回った先生が恒例の一人カラオケ(ア・カペラ)を始めた。ん?4年生が唖然  としている…。ふ。昨年の俺のようだ。俺はお前でお前は俺なんだよ!(?)   その後、偶然となりで花見をしていた数年ぶりの友人を見つける。ちょびっと参加して帰る。   帰りがけにヤングアニマル増刊嵐を買う。酔っ払っているとどんな画面も静止画にしか見えなく  なることが判明した。ぬう。酒飲んだら漫画を読むなということだな。   で、だ。酒のことを差し引いてもあまりにあまりな内容だな、この雑誌。過去の増刊号の中でも  最低の誌面かも。本誌レギュラー陣の絵が崩れてるし、読みきりに特筆すべきものがないし。今後  の内容次第では増刊号は買い控えることになるな。   …げ、次号ベルセルクのプレゼントありかよ…。
4/2
  おくればせながら「クロ號」の1巻を購入。これは、いい。何度でも読み返したくなる漫画とい  うのはとても貴重なものだが、これはその最たるものだ。   青年誌と呼ばれる雑誌群(ヤング○○という名前がついてる雑誌で、かつ性描写を中心にした売  り方をしていない雑誌。モーニングも含む)にはたいがい6〜8ページ程度の短編漫画が載ってい  るものだが、その中でも「クロ號」は白眉だと思う。
3/26
   朝。    電車でお腹がぴーごろぴー。    仕方がないので途中下車、急いでトイレに駆け込んだ。    埋まった個室は一つだけ、のこりは全部開いてる。    だけどおいらは待つしかない。扉の前で待つしかない。   …何故駅のトイレは一つしか洋式個室がないんだろう?ああ腹が立つ。こちとらネンザで和式個  室は使いたくても(そりゃあもう使えるものなら使いたいさ、猛烈に!)使えないんじゃいっっっ  っっだーもー早くしてくれ何分経ってるんだ!!   5分経過。ようやく出てきたのは茶髪にピアスの高校生。入れ替わりに個室に入ったら……めち  ゃくちゃタバコくさい!よく見りゃ2本も吸殻が転がってる!   っっっっっっがががああああ!!!今度見つけたらもー容赦しねぇ!!
3/25
  ヤングアニマル最新号感想…ってどのくらいぶり?   ベルセルク。いやー、ここまでネジクレて絡み合っていたとわ。ファルネーゼはわかっていたけ  ど、一見まともそうに見えたセルピコもまあずいぶんとゆがんでいる。ベルセルクの世界って幼児  期を精神的に健やかに過ごした人間っていないよなあ。誰もがトラウマを持っている。   前回と今回については説明的独白が多い。とくにファルネーゼの方について述べているものが多  く、これらをすべて是とするならばファルネーゼについては解釈の余地が少ない。セルピコに対す  る執着と隔意が両立していることの原因が大体わかったかな?   ファルネーゼが「愛情に飢えている」ことと「脅えると他者を傷つける」ことは完全な悪  循環をしているように思える。   愛情が与えられないという状況において恐怖を感じたとき、    すがりつく相手がいない       ↓    一人で脅える       ↓    恐怖を与えるものと同化して周囲を傷つける       ↓    人が遠ざかる   というプロセスによりさらに愛情が遠くなり、どんどん悪化していったのではなかろうか。   結果、恐怖と、なによりも孤独に飲まれようとしている。愛玩動物を飼うのは孤独を忘れるため  か。しかしなつかない動物はかえって孤独を増す。孤独は恐怖へ、恐怖は火刑に結びついて、動物  を焼き殺す。火刑を執行するさびしげな表情には「私を嫌わないで。私を一人にしないで」という  切実な叫びがあるように思う。   というわけでファルネーゼのトラウマは孤独感、これに尽きる。   さて、前編でセルピコ自身「なぜ自分が拾われたのか」という疑問を発しているが、これは単に  小鳥を飼うのと同じ感覚だったんじゃないだろうか。結局は誰かにそばにいてほしいということだ  と思われる。   セルピコへの「多少の理不尽な注文」とやらの理由は、多分、過剰な孤独感から人間不信になっ  ていたためではないかと推測する。ただの義務感で側仕えをしている人間(セルピコの前任者たち)  はちょっと不条理な注文をするとすぐに離れていっただろう。自分の側に使える人間が、単に義務  感からそうしているだけだとしたら、孤独なファルネーゼの心にはたまるまい。セルピコが自分に  仕えているのが単なる義務感だけによるものではないことを確かめていたのではないだろうか。た  ぶん無意識的に。…………ごく簡単にいっちゃうと、寂しさの裏返しってやつですか?ええ、そう  ですよヴィトゲンシュタイン先生。   ここには、有力貴族の娘として生まれてしまい、周囲とは基本的に主従という関係しか築くこと  ができなかったことの悲劇が表れているようだ。肉親による無償の愛情があればこれほどの孤独に  陥ることもなかったろうにねえ。結局、愛情薄い肉親がすべての元凶と見た。   幸か不幸か理不尽な注文に耐えてしまったセルピコが、ファルネーゼの執着(あえて愛情とは言  わない)の対象になってしまったのはまあ当然の成り行きだろう。が、最後の最後でセルピコはフ  ァルネーゼを拒絶している。ファルネーゼにしてみれば「いっしょに逃げて」という懇願を退けら  れたのはあまりにも重大な裏切り行為のように感じられたのではないだろうか。   セルピコがファルネーゼをつれて逃げなかった理由はなんだろうか。   まず、現実問題として逃げられる可能性が極めて少ないということは考えただろう。とびっきり  のお嬢育ち、究極のわがまま娘を連れてヴァンディミオン家から逃げ回るのは事実上不可能であろ  う。打算的なことをいえば、逃げて苦労するのはセルピコだけだというのもほぼ確実だし。   次に、兄妹であるという事実。背徳感はもとよりあるだろう。加えてファルネーゼが知らないま  まで逃げることにためらいがあったのではないだろうか。セルピコはこの事実を少なくとも数年間  は自分一人の胸のうちに納めていたわけで、それによる葛藤もずいぶんあったのではないだろうか。  ことにファルネーゼが「主従の関係以上の想い」を自分に対して抱くようになったあとは。ファル  ネーゼも事実を知れば当然悩むはずで、それを知らないままに逃げようとするのは…うまい言葉が  見つからないけど、ひょっとしたら「ずるい」「安易だ」と思ったのかも。   最後に。彼らはおそらく、お互いの孤独感を埋め隠し、お互いの人間性の一部(しいて言えば親  への愛情か)を焼き払い、親の愛を得なければならないという渇望から解き放たれ、親とお互い以  外からの愛情を得たいという飢餓感に縛られている。
 

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