えこし見聞録 0012 Knowledge Record of EKOSI  2006.09.12UP        <<0011      0013>>

 えこし夏合宿06’in 軽井沢 八風の郷 鯉渕史子 


8月7日から9日、軽井沢にてえこし会の夏合宿がありました。

ちょうど7年前の夏、第1回の合宿で、木立の中にたたずむこの邸宅を訪れた日のこと(青春まっさかりのクルオシイ学生の夏でした…)を懐かしく思い返しつつ、心身ともに洗われるような3日間を過ごしました。

バスが到着すると軽井沢は、カンカンと太陽が照りつけおよそ避暑地らしくない猛暑でしたが、日暮れ近くなると、かなかな…と、ひぐらしが鳴きはじめ、何処からともなく小さな沢の音も聴こえはじめました。知らぬまに都会ずれしていた体から、ふっと何かが外されていくような森の感覚をおぼえました。

夕方にはゲストのわりさや憂羅さんと川越の太郎さんも合流、地元農家産のドレッシング要らずのおいしい野菜と、まっくらな森に抱かれた心地よさとでお酒もふかくすすみ、にぎやかなパーティーとなりました。夜がふけはじめるとベランダにクワガタやカブトムシまであつまり、ついには、モンゴルの留学生チョルモンさんが、モンゴルの唄を披露。まるで、広々とした草原をわたる風の風景がみえてくるかのようなのびやかな歌声に、みな甘く酔いしれ、あと一曲もう一曲とせがみつづけました。

真夜中の花火では、まさかこの人までが…と驚くほど、花火を手にした大の大人たちが次々にコワレはじめ、少年少女顔まけのキラキラの瞳で 「火を、火を絶やすなー!」と夜の森で叫んでおりました。線香花火の最後の一つがぽつんと落ちたのを合図に、会はおひらきになりましたが、森が空色にしらんでくるまで皆話し込んでいたようです。

どうしてなのか、東京では慢性的に寝付きも寝覚めも最悪なわたしが、ここでは落ちるようにふかく眠り、すっきりと目覚めました。明け方に寝たはずの憂羅さんはいつも通り早朝に起床し、朝の散歩をし、前夜の記憶も危うく起き出してきたみんなに蕪のお味噌汁のおいしい朝ご飯までととのえていて下さいました。こんな朝(昼近かったですけど…)ひさしぶりだな…と、家族みたいな大きな食卓を囲んでそう思いました。お昼には丸々一玉のスイカを割ってみんなで真っ赤にかぶりつきました。

そして、2日目の夜はえこし会の合宿恒例勉強会&座談会。日が暮れ出すと、森の片隅や沢のほとりに散らばって、それぞれにお気に入りの場所で勉強していた皆があつまりはじめ、終電の心配いらずでがっつりと話し込みました。

そして、すっかり腹ぺこの体にお待ちかねの夏合宿恒例メニュー、クリハラ特製二夜目のビーフシチュー!! いったい何をどう煮込んだらこんな味がでるのか…今年も美味でした。

勉強会が終わってほっとしたこころよさと、もう明日にはここを去る名残おしさとで眠り難く、夜中から急にワイン片手に大貧民大会となってしまいました。はじめは「えこし会でトランプ〜? 」と、にやけつつ、はすに構えていたわたしも、負けず嫌いの血が騒ぎ、本気と書いてマジと読むの世界に没入。「また勝っちゃいました…」と、無欲な林が大富豪をたんたんと歴任したり、ムゴイ圧政が続いたり、のし上がったり急落したりと、波乱万丈なゲームが続く中、わたしは負けつづき…。長椅子やソファーにゆうゆうと座る大富豪たちの足元で板張りに正座で、現実の生活で培われた屈強の貧乏づよさがまさかこんな所で役立つとは…と、憧れの大富豪に一度もなれず、明け方の最終ゲームを見事に大貧民で締めました。

…たかが大貧民されど大貧民。

人生のゆくすえをうつすかのようなこの一夜のゲームを終えて、小鳥たちが囀りはじめ小雨の降りしきる爽やかなキミドリの木立をまえにしばし放心しつつも、むしろ、貧しくとも誇りたかく、がんばって生きていこう…と、潔く腹を据え、人生の教訓を胸に刻む朝となりました。でも来夏はぜひ、勝ってみたいです。


*こいぶち のりこ
 中右史子の名で詩、鯉渕史子の名で評論を発表している。第一詩集『
夏の庭』を7月1日に発刊。


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