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★長崎旅行
長崎旅行
2002年8月14日〜8月20日

8月14日
飛行機にて長崎空港到着。海のうえにぽっかりと浮かぶ特徴的な空港。
レンタカーをして、目的地の雲仙観光ホテルを目指す。
日本で初めての洋風のホテルという山小屋風のこのホテル、
ドアの取っ手が高い位置についていたり映画「シャイニング」に出てきそうな
真っ赤な絨毯の敷かれた廊下が続いていたりと昔の洋館の雰囲気がとても感じよい。
夜は、雲仙観光ホテル内にてディナー。
私たちは数十人のグループだったのでテーブルを縦長につけてもらい、
宮廷気分を味わいながら食事をした。
昔ながらの給仕が運んでくるお料理に、気分もとても盛り上がる。
メニューは、前菜:サラダ、サーモンと枝豆の冷製 肉料理:牛フィレ肉 デザートの4種類。
特に美味しかったのが、ステーキ!!ミディアムレアのお肉は、とても柔らかく
あっさりめのマスタードの粒々が細かく入ったソースと素晴らしく調和していた。
一口ごとに切り分けるたび、幸せいっぱいとなる。
デザートもひと皿に3種類が乗っていて、ちょこちょこと楽しめるような仕組みに。
その中でも、ゴマのアイスが素朴なゴマの風味と、美味しい牛乳を使っているであろう
品の良い味がして夢中になった。

夜は近くの駐車場で花火大会。
お墓参りにも花火をかかさない長崎人の土地だけあって、本当にたくさんの花火が
用意され皆で大はしゃぎで遊ぶ。
花火を遊び終えて真っ暗な夜空を見上げるとそこは満点の星空!
天の川も見える程に大量の星が見え、じっと凝視しているとなんと流れ星まで!!
しばらくごろんと横になって流れ星探しに夢中になった。うー美しい。

8月15日
雲仙観光ホテルを後に、島原観光へ。
鉄砲のように真っ直ぐの水路の両脇に昔ながらの武家屋敷の残る「鉄砲武家屋敷」や
雲仙普賢岳の噴火の被害をうけ、家ごと火砕流に埋まってしまった「みずなし本陣」
などを訪れる。沖縄のような石造りの塀や色鮮やかな花、眩しい太陽がとても印象的。

お昼は長崎名物「具雑煮」を食べる。
具はお雑煮のような、にんじん、ごぼう、こんにゃく等。
お椀を開けると上部に薄い丸いお餅が5つ乗っていて、その下に具だくさんの
おつゆが潜んでいる。とても食べ応えのあるお雑煮。
お出汁がとても利いていたために、おつゆだけでも大満足の一品。

そして夜は本日のメインイベント精霊流しへ!
精霊流しとは、初盆をむかえる人の霊を弔って大勢の人が手作りの山車をひき
町中を練り歩き、最後は海にかえすという行事。
一見、おとなしそうな優雅な行事のように聞こえるが、実際はとても騒々しく
とても死者を見送る厳粛な行事には思えない。というのも、山車をひく人々が皆
たえず爆竹をならしまくっているからだ。その上、いかに派手にやるかが
目的になっているために段ボールいっぱいに爆竹を詰めてそれを頭上に掲げて
点火をする荒技などもあり、まるで男の度胸試しのような事も行われる。

17時ころより町の至るところで爆竹のパンッパンパンッという騒がしい音がしはじめ
20時ころにはピークをむかえる。そのあまりの騒音に耳栓なしではいられなく
町中の人が耳栓をして精霊流しを見に来る。
長崎の人は、火や加薬をあまり怖がらないらしく(お墓参りにも花火持参)
手で爆竹をもち、バンバンとならしまくっている。
山車をひいて町を練り歩くのに参加させてもらった私たちも次第に爆竹にも慣れ、
自ら手で持ったままならしたり、人に気付かれないようにセットして驚かせたりと
派手に精霊流しを盛り上げた。
死者を送るのに、なぜこんなにも派手に爆竹をうちならすのか
一見不謹慎なようにも思うけれど、そこには精一杯楽しく送り出してあげようという気持ち
などがあるのかもしれない。派手な見送りだけに船を海に流してしまった後の
虚無感はとても大きい。

8月16日
軍艦島へ。
長崎にあるという廃虚だらけの無人島。
その形が戦艦「土佐」に似ているので、軍艦島と呼ばれているその特異な島には
むかし海底炭鉱があり、それを収入源として人々が生活をしていた。
当時は日本一人口密度が高い場所とされていたほどの住民が暮らしていたが
約30年ほど前に炭鉱が廃山してから、全ての島人が島を出ていってしまったという
捨てられた島。
この島は、日本ではじめて鉄筋コンクリートのアパートが建てられた場所でもあり、
所狭しとコンクリの建物が島を埋め尽くし、まさにこの世の場所とは思えない空間がひろがっている。

人がいないこともあり、とにかく色が少ない。
緑の芝生と灰色の建物、そして青い海。
独房にも似たコンクリの高い塀に囲まれて、にょきにょきと高層アパート群が密集してたちならぶ。
隣同士が接近しすぎているため、上へ行くための階段も先すぼまり。建物同士は空中で
たよりなげな短いコンクリートの橋で結ばれるなど身の危険を感じる場所もたくさん。
しかし、屋上にはたくさん緑が植えられていたり、愛らしいデザインのすべり台がある
幼稚園があったり、石造りの鳥居と神棚と記念碑などが一緒になって奉られている
神聖な場所があったりと美しい場所もある。

建物の内部は海風によってひどく荒れていて、窓ガラスの破片が廊下をうめつくし
歩くたびにジャリジャリと音をたてる。
学校の中には当時の教科書や教材が土ぼこりをかぶって残されており
一般家庭にはお皿やおもちゃや靴などがそのまま置き去りにされている。
こういう瞬間にふとその裏にある人の存在を感じるけれどあまり実感が湧かない。
今では、私たちが物音を立てなければ全く無音の世界だというのに
30年前には日本で一番の人口密度を誇る島だったなんて!     
当時のものがそのままの状態で残っているけれど、それらが実際に使われていた
生き生きとした印象が全くないために、ちっとも現実味がなくて奇妙な異世界に
入り込んでしまったような感覚をうけるだけだ。

帰りの船では、すっかり魂をぬきとられたような夢うつつの状態だった。
今みてきた塀に囲まれた世界とこちらとでは、近いのにまったく別の空気が
流れているみたいだ。

疲れ果てた体をおして夜はグラバー邸を観光。
そして夕飯。楽しみにしていた皿うどんを食す!!
揚げ麺にピンクのかまぼこやタケノコやベビーコーンなど盛りだくさんの具とあんかけ。
パリパリとした食感と、あんの掛かったしんなりしてきた部分とのめりはりが
とにかくたまらない。なんて美味しいのだろう!!

8月17日〜20日
興福寺で行われるシアタープロダクツの展示会の準備と展示会。

17日(設営)
長崎名物トルコライス(カツ、スパゲッティ、ピラフがセットになった
こってり大人のお子様ランチのようなもの。)を食べて力をつけ
明け方までかかって総勢15名ほどで展示品を縫い合わせたり
明日から行われる展示会の準備の手伝い。
参道にはカラフルな洋服が埋め込まれた大きな布と布を縫い合わせた洋服の道が敷かれ
参道先に建てられた巨大な鉄塔の上にはふわりと布をかぶせた展示品が作られた。
布の裏側にまわると緑やレースの模様がライトに照らし出され本当に綺麗。
最終組は朝までかかって準備をしたというのに、折り悪く接近中の台風の強風にやられて
鉄塔が倒れるアクシデントがあり、本番は少々展示方法が変わってしまったが
なんとか18日から予定通り展示会が行われた。

18日(展示会1日目/ファッションショー)
陽も沈みあたりが暗くなったころ、朱色の寺がライトアップされて
生のバイオリンとアコーディオンの演奏の中、ファッションショーが行われる。
中国スタイルの興福寺とクラシカルな音楽、そしてシアタープロダクツの独特な色と生地の
組み合わせによる洋服の共演によって、とても幻想的な雰囲気に。
日本の文化の誇りでもあるお寺でのファッションショーや展示はとても素敵だと思った。
歴史の深みと重みを持ち合わせるお寺は、現代も過去もあらゆる文化と自然に溶け込む
懐の広さがあり、互いの良さを引き立て合う能力をもっている。

19日(展示会2日目/歌舞伎役者 中村富十郎の舞い・虫聞きの会)
お昼は長崎で有名な卓袱料理を創業360年の老舗「花月」に行く。
部屋の柱には坂本龍馬の刀傷が残されていたり、日本で最初の洋間があったりと
お店の至る所からその歴史を感じることが出来る。
卓袱料理とは、中華のように大皿に盛られた料理を各自がとっていただくスタイルをとり、
特に食前にお吸い物を飲むのが特徴的。
お料理は、ごぼうの牛肉巻きや、お刺身、角煮、ごはん、おつゆ、デザートなどなど
とにかく盛りだくさん。あまりにも沢山なので最後の方はまるで
大食い選手権にでも出ているかのような気分になってしまった。

夜は、興福寺の境内にて人間国宝の中村富十郎さんの舞いが行われた。
薄紙の貼られた木枠の中にろうそくの立てられた灯籠が境内に点々と置かれ
あたりがぼうっと温かい光に包まれる。
さすが人間国宝というだけあって、貫禄がにじみ出ている。その存在感が
手や足や動きの全てに満ちていた。しかし、歌舞伎は同じ演目をたった一度見た
だけではその良さはあまり分からなくて、見比べ、見重ねていくことが大切と
しみじみ思った。

明日には東京に帰るために、今晩が最後の夜。
活き作りの料理屋さんに行って、最後の宴をひらく。
鯛の塩焼き、サザエの壺焼き、伊勢エビ、お刺身などの長崎自慢の魚介類をいただく。
あまりお刺身好きではない私が唯一食べれたのが、ウツボのお刺身。
真っ白で、ぷりぷりこりこりとした身には脂が沢山のっていて、固い白子のよう。
今にも噛みついてきそうなウツボ独特の顔を思い出すと、ちょっとぎょっとしてしまうけれど
本当にまろやかで美味しかった。

あまりにも充実した一週間を過ごしすぎたために、帰る時は本当に悲しくて
長崎の坂を下りながら涙が出そうになった。
長崎の人は様々な文化の発祥の地であるために、プライドを持っているし
色彩感覚が東京とちょっと違う。日本の中でも様々な文化があるのだから
もっともっといろんな地をまわりたい。
次回は長崎おくんち祭り見物と教会巡りを是非しよう。

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