朝倉彫塑館
住所 台東区谷中7丁目18番10号
交通 日暮里駅(北口)徒歩5分
入館料 ¥400
開館時間 9:30〜4:30(休館日 月・金)
東京の中で、最も興味を引かれ大好きな町である台東区界隈は、
昔の風情が至るところに自然と残され、ちょっとした脇道でさえ見落とす事ができない。
その中でも特にお気に入りの場所がここ「朝倉彫塑館」
日本彫塑の最高峰とされる朝倉文夫の自宅兼アトリエがそのまま解放され
美術館となって空間ごと作品をたのしむ事ができるという、聞いただけでもわくわくしてしまう
総合美術館なのだ。
朝倉彫塑館に着いてまず目にとびこんでくるのは、もったりと重く塗られた真っ黒の円みを帯びた外壁。
きちんと窓までまぁるく反っていて、そこから更に上を見上げるとなんと人間のブロンズが!!
まるで番人のように、じぃっとこちらを見下ろしている。「ウォーリーを探せ!」で
ウォーリーを見つけた時のような、ちょっとした喜びを噛みしめながらいざ館内へ。
1階 <アトリエ・書斎・応接室・中庭・茶室・寝室>
館内に入ってまず驚かされるのが、高さ8.5m、広さ175Fもあるとても広々とした
アトリエ。なだらかなカーブを描いた優しい風合いの天井といい、この広さといい
日本のせせこましさなどどこにもない。
高さ4mの天井までびっしり本がつまった本棚がある書斎や
骸骨の標本が不気味に置かれた応接室、おばあちゃんの家を思い出してしまう
畳みの匂いのぷんっとする茶室や寝室など、全てが珍しくその場にいるだけでウキウキしてしまう。
そしてこの1階部分でも特に好きなのが中庭。
建物全体にちょうど取り囲まれるようにしてあるこの中庭は、池がメインの水庭で
どの角度からも池を眺めることができ、四季折々の木々の美しさをたのしむことができる。
今はちょうど新緑の季節のために、全ての木が太陽に一番映える透き通るように鮮やかな
きみどりいろをしていて、それだけで庭は活気に満ちている。
池には、いかにも座ったら気持ち良さそうなくぼみを持った大きな石があり
ひなたぼっこをしたら気持ちいいんだろうなぁー。とすっかりくつろいでいる自分を
想像してしまう。
実はこの中庭、朝倉文夫が自己反省の場として構成した「5典の水庭」と呼ばれるもので
儒教の教えである「仁」「義」「礼」「智」「信」を造形化した巨石を配したのだという。
また、庭の木は一年を通して白い花が咲くように植えられており、常に無垢な心を忘れないように
してあるのだが、完璧を避けるためにも一本だけ赤い花である百日紅を植えたという。
その一本だけ赤い花を植えておくという朝倉文夫のセンスと、庭がこれだけの想いと意味が
込められていたことを知り、改めてその奥深さに感動させられた。
2階 <素心の間・蘭の間>
1階部分よりも更に日当たりの良い2階部分。上から見下ろす中庭は全体が見渡せ
大きな窓から入ってくる風と太陽の光を浴びているとずっとここにいたいと思ってしまう。
蘭の間には、無類の猫好きであった朝倉文夫が作った猫の彫塑が沢山置かれており
猫の愛くるしい表情の瞬間瞬間がとじこめられている。「伸び」「産後の猫」などタイトルも
猫好きならではの観察力が伺え、にやり。
3階 <朝陽の間>
彫塑館の部屋の中でも特に素晴らしいのがこの部屋。
全体のテーマは「円み」。窓、壁、机はもちろんのこと、天井や木枠やバルコニーの柵に至るまで
全てにおいて滑らかな曲線が使用されていて、暖かみと安らぎに満ちている。
そして、これらの円みはどれもとても自然で、作られた機械的な円みではないのだ。
争いごとを嫌い、常に平和であることを望んだ朝倉文夫ならではの究極の設計。
本当にこの部屋にいると、自然と心が穏やかになるから不思議だ。
屋上
最後に驚かされるのがこの屋上。
ただの屋上ではない。なんとそこには庭園があるのだ!!!
階段を登って屋上に出るとそこには大きなオリーブの木が!まるで天空の城にでも
来たかのような夢のような光景。壁には蔦がからまり、バラもたくさん植わっている。
そして木々の間からは、入り口でこちらをじぃっと見ていたヒトの彫塑が背中をむけて
座っている。ドアの横から辺りを見回そうとすると、今度は首から上の彫塑がちょうど
こちらを見据えている。うぅぅ。やられた・・・。
朝倉彫塑館、本当に、本当に遊びごごろに溢れた家であると共に、朝倉文夫自身の哲学が
込められた家である。いつかこういう家に住みたいと心から思う。
(2002.4.4)
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