「職業の話を聴く会」
<システムエンジニア>
栗山真行君講演

講演中の栗山君

 皆さんこんにちは、栗山です。私は大学を出てからだいたい20年くらい、コンピュータ関連の仕事をしてきました。今日はシステムエンジニアの仕事の内容と、どういう人が向いているのか、という話をします。

 まず、コンピュータは大きく分けて、ハードウエアとソフトウエアというものに分けられます。ハードウエアというのは、コンピュータの機械そのもののことで、例えばパソコンとか、みなさんも遊んでいると思いますゲームの機械とか、小さいものですと携帯電話にもコンピュータが入っています。ご飯を炊く電気炊飯器にも、どうやったらおいしくご飯が炊けるか、ということを考えるコンピュータが入っています。また、銀行にはキャッシュディスペンサーというお金を引き出す機械とか、JRに行きますと緑の窓口には切符を販売する機械があります。これはどちらも遠いところに大型のコンピュータがあってそこにつながっています。

 もう一つのソフトウエアは、コンピュータにどういう指示を与えて、どういう動きをさせるかというもので、プログラムと呼んでいます。携帯電話ですと電話がかかってきたら着信音を鳴らすとか、音楽を鳴らすとかの指示をしたり、電話がかかってきたときにボタンを押せば通話ができるというようなことも全てそのプログラムで予め指示を与えておきます。コンピュータはボタンを押したら電話がかかるとか、そういう与えられたことは間違えなく実行できるのですけれども、逆に教えていないようなことはできません。例えば携帯電話でゲームをやりたいと思っても、それは予めゲームのプログラムをその電話に入れておかないとゲームができないということで、そういうことを予め教えておかないとなにもできないというものがコンピュータです。

 そこで、コンピュータにどういうプログラムを作るか、どういう仕事をさせるかというのを考えるのがシステムエンジニアの仕事です。コンピュータのプログラマといいますと、どうしてもゲームをどうやって作るかという話をたぶん皆さん想像されるかと思うのですが、私自身は先程言いました銀行のシステムとか、あるいは生命保険のシステムというような大型計算機のシステムエンジニアの仕事をしていますので、今日はそれについて話をいたします。

 システムエンジニアの仕事といってもなかなか説明が難しいのですが、緑の窓口で切符を販売する機械のコンピュータシステムを作りたいというようなときに、どのようにシステムエンジニアは仕事をしていくのかを例に挙げて説明します。

 切符の販売システムというのは単純にいえば希望の電車や時間とかを入力してその切符を発券したいということです。ところがこれだけですとコンピュータは仕事ができませんので、どういうところから決めていくかといいますと、実際に切符を販売するJRの人とか私鉄の人とかと話をして「何を画面から入力したいのですか?」と訊ねます。そうすると切符を発券するのですから、電車の日時を入れる、どの電車かということで番号を入れる、発着駅、あとは枚数を入れるようにしたいという話が聞けます。「切符にはどういうものを印刷したいですか?」と訊ねると、列車の番号、発着駅、金額を印刷したいという話が最初に出てきます。

 その次に、「コンピュータでどういうことをしたいですか?」ということをお話していきます。「予約と発券の他に何がしたいですか?」と聞くと、例えば現在の予約状況が知りたいというような要望が出てきます。どの電車がすいているか知りたいとか、あるいはその電車だけでなくて乗り継ぎの予約もしたいというような話が出てきます。あとは、人間がなんとなく決めているようなこと、例えば4人だったら2人がけの席を向かい合わせに予約を取りたいとか、あるいは1人だったら窓側から席を埋めてくとか、というようなことを聞くことになります。それから、コンピュータに憶えさせる容量というものは限りがあるので、例えば半年分は管理したいとか、1ヶ月分でいいよ、という話も伺います。

 さらに、「乗客が切符の変更したいときはどういうことをしますか?」とか、「それは何日前まで認めますか?」というような、仕事のこまごまとしたことを聞いていきます。そういったこまごまとしたことを聞かないとコンピュータシステムはできないのです。明文化していないようなことも聞いてそれをプログラムにしていく。そうやって、どのようにコンピュータを使っていくのかを決めるのがシステムエンジニアの仕事です。プログラマがそれをプログラムの形にしてコンピュータに憶え込ませ、それで、コンピュータ発券システムが出来上がるのです。

 システムというのはだいたい1年とか2年とかかけて作りまして、一度作って終わりというのではなくて、使っているうちに、例えば今は電車の番号で予約しているけれども、それだといちいち番号を調べなくてはいけないので、何月何日の何時ごろの電車と入れるとそれが一覧で出てくるような機能が欲しいというようなことを聞いてシステムを直すことがあります。これで一つのシステムが終わって、また他の仕事で新しいシステムを作っていくというようなサイクルになります。小さい規模のシステムですと3か月ほどで作り、大きいものでは2年とか3年とかをかけて一つのシステムを作るというサイクルです。

 システムエンジニアの仕事は、一つは非常に細かいところまで気を遣って考える必要があります。というのは、先ほど説明しましたように、今のコンピュータは細かいところまで教えないとそのとおり動かない、教えていないことはなにもしないというものですので、普段はお客さんが意識して仕事していないことまで、こういう場合はどうするのですか?、あのような場合はどうするのですか?と細かく聞かなくてはいけません。ですので、どちらかというと性格はおおざっぱなほうではなくて、細かいところに気が付くような人が向いていると思います。

 それと、例えば銀行に就職して、銀行のシステムをずっと作っていく場合には銀行の仕事だけを覚えればいいのですが、いろいろな会社に行ってそこのシステムを作っていくということがありますので、先程、通訳の先生がおっしゃったように、その相手の仕事の勉強しなくてはいけない。例えば切符を発券するようなシステムですとその切符をどうやって予約したり管理したりするかというのを勉強しなくてはいけないとか、生命保険システムですと生命保険ってのはどういうときに加入して、どういうときにお金を払って、どういうときにお金をもらうのだということを勉強しなくてはならない。あと、コンピュータシステムは今どんどん新しい機械ができて、新しい技術も出ていますので、それについても勉強していかなくてはいけない。ということで、勉強は嫌いではない、どちらかというと好きな人が向いていると思います。

 また、お客さんと話をして、「どういうシステムにしていきますか?」と聞かなければいけないので、人と話をするのが得意な人というか人の話をよく聞く人、また、お客さんに説明しなくてはいけないので説明をする技術というかそういうことが得意な人が向いていると思います。

 システムエンジニアは仕事ができる、できないが非常にはっきりしています。システム設計をするにしても、プログラムを作るにしても決まった形というのがあまりありませんので、人によっては1週間かかってできないことが、別の人だと1日でできてしまう。同じ仕事をコンピュータにさせるのにある人ですと1時間かかるプログラムを作る、ある人は10分でできるプログラムを作る、というように外から見ていてはっきりわかる仕事です。ですから、仕事がちゃんとできる人はあちこちからよばれますし、そうでない人はあまりよばれなくなる、ということがあります。

 先程の知識の話に補足しますと、私が仕事を始めた20年ぐらい前は、コンピュータの知識は一般の方にほとんどありませんでしたが、今はパソコンがだいぶ普及して本屋さんに行ってもコンピュータ関係の本がいろいろあり、コンピュータをよく知っているお客さんも多くなりました。ですのでそれを上回るような日々の勉強も必要ということがあります。

 このあとは、いただいた質問に対して回答します。
<どのくらいの時間で一つの仕事が終わるんですか?>
システムの規模によって3か月のものもありますし、2〜3年のものもあります。その間は一つのシステムに数人から多いときには百人とか二百人が集まってシステム開発を行います。
<夜遅くまで仕事とか徹夜とかありますか?>
システム完成期限というのがあって、何月何日からそのシステムを使いたいということが決まっていますので、どうしてもその間際になると徹夜で仕事したりとか夜遅くまで仕事をするようなことが度々あります。あと、お客さんの都合で昼間はお客さんがそのコンピュータを使っていて夜だけ使っていいという場合はどうしても夜間だけの仕事になってしまいます。

<大変だったことは何ですか?>
 自分の作ったプログラムがお客さんのところで全然うまく動かなくて、あちらこちらから電話がかかってきてあわてて直したということがあります。
<仕事をしていて楽しいと思ったことはありますか?>
 お客さんから、非常に使いやすいシステムだとか、このシステムができて仕事が楽になってよかったとか話されることがあると非常に嬉しいですね。
あとは、この中にはプログラムを作ったことがある人がいるかも知れませんけど、自分が初めてプログラムを作ってコンピュータの画面を出してプリンタから紙が出てきた時は非常に嬉しかったです。
それから、先程言ったようにいろいろな仕事のシステムを作っていきますので、そこでいろいろな勉強ができて、この仕事はこのように行っているんだということが解り、勉強になるので非常に面白いです。

<自分で使いこなせるようになるまでどのくらいかかりますか?>
 プログラムを作るというのは数か月で簡単なものはできるようになります。ただ、システム設計はどうしても2年とか3年とか先輩といっしょに仕事しながら勉強していかないとなかなか身につかないと思います。
<必要な資格はどんなものですか?>
 資格がないとコンピュータの仕事ができないというものではないですが、目安としては通産省、今の経済産業省の情報処理技術者試験、あるいはソフトウェアメーカーで実施している認定試験などがあります。これは会社に入ってから勉強して資格を取ることが多いです。会社によってはそのような資格を持っていると手当が多く出たりとか、あるいは昇進が早いということがあります。それと、最低限パソコンを使いこなせないと仕事が進まないということがあります。仕事場では1人1台みなパソコンを持って、パソコンで仕事をしていますのでパソコンを使えないと今は仕事ができません。

<どうすればこの仕事につけますか?>
 専門学校でコンピュータ関係の勉強をするという方法もあります。ですが、学生のときには一般的な勉強をして会社に入ってからコンピュータの勉強するというのでも充分に間に合います。会社で勉強してゆくゆくは自分で独立してソフト会社を作るということもできます。私も会社を辞めて独立しています。システムエンジニアで一緒に仕事をしている人たちも独立している人が多いです。それは、会社に入っていても独立しても仕事の内容はそれほど変わらないということもありますし、コンピュータのシステム開発という仕事はなかなか減りませんので、一つのシステム開発が終われば次の開発というように声がかかるためです。そのため独立しても仕事を継続することができる場合が多いです。
<給料とか報酬とかはどのくらいなんですか?>
 ソフト会社に入って、あるいは一般企業に入ってシステムの仕事をしているぶんには人と変わりません。あとは独立することによってその仕事の具合により給料が高かったり安かったりすることがありますので一般的にどのくらいとはなかなか言い難いです。

解りにくかったとは思いますが、これで私の説明は終わります。ありがとうごさいました。


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