SSCnote.ホ−ムペ−ジ: 宇宙開発・提言
                                        * ******  **
==SSCnote.HP-5813 Oct 2018=======****SPACE ***=
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                                       (since 8 Apr 1999)
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 わが国宇宙開発への意見・提言:
   宇宙開発への思い入れを、個人的な提言として適宜発信・更新します。

Update181013
 ★ 続;今こそ情報収集衛星の姿を! -本来の役割を果たすには(2)-(20140330→17>181013改
 -情報収集衛星の大規模災害対応等の実績を概観


 情報収集衛星の動向が、昨年の特定秘密保護法成立以来、海外事案ではフィリッピン台風(2013年11月~12月報道発表)、マレーシア航空機消息不明事案(2014年3月)等、
国内事案では中国漁船等の違法操業(2014年11月)が初めて、引き続き12月5日には西之島噴火活動が報道発表されている。 これらは衛星画像の判読・分析の結果であるが、少なくとも昨年の宇宙基本計画パブリックコメント回答(2013年1月)で情報収集衛星を”国民の期待に応えるために被災推定地図等のHP公開に努める”といった事を果たし始めたとまずは理解し、今後のさらなる国民への還元を期待するとともに、大規模災害等の被災状況に応じて加工された衛星画像の迅速な公開を加えた一層の情報開示を注視したい。
 2014年11月打上の高分解能衛星ASNARO(GSD<50cm)の初期運用・画像校正・検証が順調と伝聞・憶測するが、その成果の公開・活用を促進するためには、情報収集衛星を含めて我が国では未制定のリモートセンシング法・データポリシーが喫緊の課題と提起しておきたい。
 
2015年9月9日及び11日に突然のこととして情報収集衛星の画像処理画像の公開についてと間髪入れずに平成27年台風18号による大雨等の被災画像が計画以来初めて公開され、理由はともあれ本キャンペーン目的の一端が達成できた。
 陸域観測衛星「だいち」、「だいち2号」搭載”合成開口レーダー(SAR)”による詳細な地殻変動解析・検出が可能になったこと、および昨今の多くの火山噴火時の緊急観測結果からも我が国に多数存在する主要活火山の定常的・リアルタイムな火山活動の監視及び異常を検知し火山噴火予知への活用・貢献が期待されるところであるが、より高い精度やリアルタイム性の向上のために、情報収集衛星・レーダー衛星の情報開示が肝要で、期待する。7>151130
 平成28年4月14日以降、熊本・大分地方に九州を横断する断層型大地震が発生・継続している(熊本地震と公表)が、国土地理院/JAXAはALOS2_SAR干渉解析による地殻変動状況を発災4日後から公表している。一方政府からは4月23日現在発表がない。広域に亘る被災状況の把握には情報収集衛星・レーダー衛星(3機運用中)は状況把握、今後の安全・減災対策に有用であり、一刻も早くその目的を遂行してほしい。さらには今回の地震の被災状況と一連の地殻変化等をみれば単なる地震という表記では想像できない大地震/大震災という激甚災害が窺い知れる。8>160423

 以下に情報収集衛星計画開始以来の実績を概観した一覧表を示す。
17>181013
 
参考内閣衛星情報センター・関連報道発表

 今後への期待を込めて課題を列記して置きたい。
1)情報収集衛星の事業目的;「外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集を主な目的」に見合った期待成果を上げること。 特に大規模災害等への取り組みが疎かにならないことを望む
2)大規模災害時における画像情報の有効性は改めて云うまでもない。しかしながら我が国では「だいち」運用終了後は現時点でも情報収集衛星システムを除いては海外衛星の画像情報に頼らずを得ない。 内閣官房の特別管理秘密として情報収集衛星の衛星画像情報の取り扱いを定めているレベル一の画像処理が行われたものは極秘対象としても、その中から大規模災害時などの固有のニーズに対応する分析・利用に供するために一定の加工処理をした画像(レベル一処理の画像の質を下げるなど)を行った上で迅速に公開・開示し、復旧・復興に活用してもよいのではなかろうか。 今後をさらに注視したい
3)既に過去の国内の災害時に関係機関に提供したとされる被災推定地図等を改めて国民に報道発表することも情報収集衛星理解が進むことになるので一考されたい
4)2014年末には特定秘密保護法が施行され、特別管理秘密に指定されている多くの衛星画像が移行するとみられるが、過去の大規模災害や地勢の情報を含む衛星画像は一定の処理、期間を経たのちには何らかの指定解除の運用がなされることを期待したい
5)情報収集衛星は、
国民が期待する視点と費用対効果を加えて、我が国なりの官(軍)民両用(デュアルユース)ルールを構築し、柔軟、効率な運用基準策定の上運用されるのが肝要と思うが如何か。 このような配慮をすれば特定秘密の傘のもとで全てが覆いかぶされる懸念が多少は払拭されるのではないか
6)2014年11月パブコメ「新宇宙基本計画(素案)で上記の問題提起した(20141113提出済み)
7)2014年11,12月と情報処理した作図情報とはいえ立て続いての情報公開は何を意味するのか。特定秘密保護法施行目前での批判回避対策?、「新宇宙基本計画(素案)」のパブコメ対策等々勘ぐりたくなる
8)高分解能衛星ASNARO(GSD<50cm)の軌道上稼働の成果を公表・活用するためには、我が国では未制定のリモセン法・データポリシーが喫緊の課題と云えよう*。 ASNAROが当初の成果を得ながら情報が流れないとすれば、我が国においてデータポリシーの制度策定が遅々として進んでいない事と相まって、ASNAROの一義的な能力は2015年3月打上のIGS光学5号に近く、3・4号より高いことから昨今の外交・安全保障上の締め付けもあるのではないかと勘ぐりたくなる。 このまま法整備が進まず/意図的な遅延?では、多くの機会損失を生じるばかりでなく関係している企業のビジネスに大きなマイナスインパクトが生じ、リモセン=IGS/先進リモセン衛星(JAXA)=独占(企業も含め)=特定秘密といった我が国特異な構図が続くことを危惧する。
Update161116
*2016年11月9日国会にて遅ればせながら宇宙関連2法案が成立した。
a)情報収集衛星に関連して、商業衛星等で取得した高解像度画像の画像データの取り扱いを定めた衛星リモートセンシング法
もう一つは
b)民間企業等が打ち上げ事業を行う際に政府が1回ごとに許可すると、損害賠償保険加入を義務付けた宇宙活動法
何れもこれらが適正に運用されることで宇宙ビジネスが可能になったわけであるのでぜひ有効に活用したいものである
9)突然のこととして2015年9月9日情報収集衛星の画像処理画像の公開についてと、間髪入れずに9月11日には平成27年台風18号による大雨等の被災画像が計画以来初めて公開され、理由はともあれ本キャンペーン目的の一端が達成できた
10)陸域観測衛星「だいち」、「だいち2号」搭載”合成開口レーダー(SAR)”による詳細な地殻変動解析・検出が可能になったこと、および昨今の多くの火山噴火時の緊急観測結果からも我が国に多数存在する主要活火山の定常的・リアルタイムな火山活動の監視及び異常を検知し火山噴火予知への活用・貢献が期待されるところであるが、より高い精度やリアルタイム性の向上のために、情報収集衛星・レーダー衛星の情報開示や予知システムへの組み込みが肝要で、期待する。7>151130
Update170215
11)”地球観測衛星30周年記念シンポジューム”が20170213にソラシティーで開催されたので公式の場に久しぶりに顔をだした。
 MOS-1が我が国地球観測衛星のルーツになりますので、最近のデーター利用の動向も知っておきたいと出かけた次第です。静かに潜伏したつもりでいたのでしたが多くの皆さんに見つかってしまいましたが、それはそれで旧交を温めることが出来た。
 MOS-1時代は地球観測をけん引すべき科学的分野が、衛星技術に対して脆弱であったが、近年では利用分野の拡大と、見るデーター利用から数値データーを予測するデーター利用になりつつありまた「ひまわり」を含めた各種データ―(海外も含めた)の同化が積極的に行われる時代になってきたのかと認識を新たにしたところです

Update 171011→180129→180817追記
12)雑感;我が国の安全保障や自国防衛等の整備には北朝鮮課題が大きく関わっていることは事実で、IGSもその一環であり多くの財政が充てられている。昨今はミサイル迎撃力向上や敵地攻撃能力保持等々など国家間の争いに対する普通の国になりつつあることを憂いたい。第二次大戦の終戦前後を少年期はあるが多少なりとも体験した人間の心として悲しい。
追記;情報収集衛星の開発が始まった1998年以来、今30年度で20年経過するがこれまでにと投入累計経費は1兆3千500億円になろうとしている。
年平均6百数十億円、さらには過去7年に至っては年百数十億円の補正予算が加わり、年平均7~8百億円となっている。これら数値はレーダー/光学各3機体制を維持し、さらに次世代衛星の開発を続け、加えてデーター中継衛星システムを組み込むとなると固定費として一層増加する事が予想される(年間1000億円?)。この動向は注視することが肝要。情報はCAO-HPより、予算推移;https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/h29_suii.pdf
、29年度補正案および30年度予算案;https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/h29h30_yosananan.pdf
→2018年8月に光学4号運用停止で光学2機/レーダー5機体制。

New180313→Update181013
13)鹿児島・霧島山(新燃岳)噴火緊急観測がALOS-2;L-SAR、TerraSAR-X、ASNARO-2;SAR-XおよびASNARO-1光学、および情報収集衛星(180311)で行われた。 ASNARO-2;SAR-XはNECが開発・運用・画像販売する衛星で、2018年1月18日打ち上げられ、現在は機能・運用確認フェーズ中ながら初画像を2月4日に、そして新燃岳噴火に伴う緊急テスト撮像を行いました。NEC-HP;
http://jpn.nec.com/press/201803/20180313_01.html
30年7月豪雨観測→30年9月北海道胆振地震



New

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続;今こそ情報収集衛星の姿を! -本来の役割を果たすには-(20131205)
     -特定秘密保護法案と衛星画像の在り方を問う-

 東日本大震災発災・福一原発事故の被害状況を発災(2011年3月11日)から緊急観測を行っていたJAXA・陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」が運用終了後(2011年5月)は、日本は情報収集衛星を保有しながらその後の大震災からの復旧・復興状況や大規模災害や環境監視等への衛星観測による国民が理解できる手段を持たないまま現在に至っていることは大変残念である。(地球観測目的のALOS-2、-3、ASNAROからの衛星画像入手も、まだ目途が立っていない)
 
 一方、今臨時国会(2013年秋)における特定秘密保護法案議論の中で、莫大な国民の血税を投入している情報収集衛星の衛星画像が、現行の国の行政機関が保有する特別管理秘密の対象文書数約41万件のうち8割にも相当する約30万件が”その解像度が機密になることから”対象になっていることが明らかになった。
 さらに関連して、福一原発事故直後の国家としても過酷な被害状況を調査するために必要となった衛星画像も東電などには情報収集衛星画像は”機密保全への対応が講じられない”という理由で非公開とされ、代替えとして米国・商用衛星画像を購入し、提供したことが明らかにされた。
 
 血税で運用している情報収集衛星システムを、単純に特別機密文書数(衛星画像数)を投入費用との関係で見てみると
・9000億円超を投入したシステムのビジネス成果に単純換算すると
9000億円 ÷ 30万枚 = 300万円/枚
の価値があるとみる。 これ自体が如何というのではなく、どのように活用されたかという見方をすると、
・東電に提供するために別途購入したその費用は、
4800万円/55枚=約87万円/1枚
 
は少なくとも、二重投資ということになり、このほかにも行政予算の中には民間企業からの商用衛星画像の購入費が多く計上されていることも考えると、機微に属する衛星画像としてもそのままを機密対象として国民の安全に還元しないことは極めて効率が悪いといえよう。
加えればその成果の欠片も納税者である国民に情報公開されず。還元もなしは誠に残念なことである。
 
 しかも、昨今の我が国での多くの災害においても国民に公開されることがなかった被災状況推定地図がやっとマニラ・レイテ島での台風災害への支援の一環として初めて内閣官房内閣情報調査室から提供、公開されたが、それは(被災状況推定地図)はあまりにも被害の実態を把握、受け止める情報としては情報が少なく、いち早く世界中に広く公開された商用衛星画像と見比べてもプアー、かつ、これが被災地においていち早く必要とする被災状況情報として果たしてこれでよいのか疑問を持つところである。 現地・現場を自然の姿で知っている当事者、関係者にとっては解析された地図だけでなく、リアルなあり姿、すなわちを衛星画像(写真)が合せて必要ではないであろうか。 これが素直な感想である。
 
 そこで、国(政府)が機微だという”情報収集衛星画像の分解能の非公開”に抵触することなしに国民や世界が期待する緊急時に期待する衛星画像の提供の運用手法を提言したい。
 情報収集衛星は当初の公開情報ではその画像分解能は光学画像で1m、レーダー画像で1-3mとされ、その後の複数回の性能向上で現時点では、おおむね光学40cm、レーダー1m迄になっていると報道情報から推測される。
 
 衛星画像の分解能は利用・必要面(国家安全保障、災害状況・・・)からその要求値が異なることは当然で、
・国家機密といわれる国家安全保障上で必要とされる分解能のレベル
・災害時の緊急時情報収集(地震、水害、火山噴火等々・・・)のための分解能レベル
・長期にわたる自然環境変化や汎用的な地図等のための分解能レベル
・その他
 
 それでは、これらの要求に対してそれぞれに適した衛星システムを保有することができればそれに越したことはないが、費用対効果やリソース等の重複性などを考えると精査する必要があろう。 現状においては特に緊急性がある災害や事故に対し、今唯一現存する衛星画像取得ができる情報収集衛星を機微にて抵触することなく利活用することは一考に値するのではないだろうか。
 
 そこで情報収集衛星システムが持つ固有の性能(衛星画像の分解能、画像処理能力の限界他)は機密扱いでも、画像処理の過程で画像の質を下げる技術を活用して重大な災害等の状況を伝えることは技術的にはできるはずで、情報収集衛星画像の取り扱いの運用面でのルールを決めての活用はできるのでぜひ検討、実現してほしい。
 
 情報収集衛星の衛星画像を、分解能が知れてしまうので公開しないことと、国民の安全・安心のためにも使わない(使わせない・公開しない)こととは別次元の課題で、生命を守るためには画像を加工処理して使えばよいことで、これは情報収集衛星当事者も理解できるはず。
 前出のように、安全保障に必要な画像の分解能に比べれば、災害や事故状況の把握には外国の商用衛星程度の0.5~1mでよく、目的や利用の仕方での画像の加工処理ルールを決めて情報公開すればよいでしょう。 官(軍)民両用(デュアルユース)を国民が期待する視点で効率、柔軟に運用することが肝要と思うが如何か。
 
 情報収集衛星システムでは単に衛星画像の分解能だけで目的が達成できるのではなく、シャッターコントロール能力、画像加工、情報分析(識別・分析力等)、加えて地上の情報などの総合的な分析能力が整って初めて完成・達成するものであって、その過程で国民の期待や国際貢献する安全・安心への情報公開・提供が実現できれば、本来の情報収集衛星の姿が見え、国民の同意も得られるのではないか。
 
 国民の期待に沿った衛星画像の情報公開を期待したい。
 
関連;
宙の会・論壇投稿記事;今こそ情報収集衛星の姿を! シリーズ~パート4


New20170117→Update20170404→20171116→20171231→20180129→20180208/20180218
 ★ 
超小型衛星打ち上げロケットSS-520-4の顛末を追跡する→SS520-5/TRICOM-1R打上成功(2月3日)
 2018年2月3日、SS520-5機による衛星軌道投入実験が成功したとの吉報とその後の関係者の記者会見をWEBで拝見した。
羽生先生はじめ関係者のご苦労・安堵がにじみ出た会見と拝聴しておりましたが、4号機の後、JAXA内外から多くのアドバイスを得た上での今回の実験成功が有るとのことのご発言には、多少回り道をした経過となりましたが、先生はじめ若い関係者の皆さんには多くの体験と教訓として得るものが多かったのではないかと感じた。先生方の今後の研究等に必ずや生かされることを祈念する。
 また、質疑の多くで民生部品の活用がスポットライトを浴びていたが、先生が身近にある民生部品や技術を如何に宇宙用に適した吟味・選択をすることが大切であることを強調しておられたと感じ得たことは喜ばしい。既に地上技術・部品等が宇宙システムに利用されることは至極当たり前になって来ている時代であり、選別・吟味する技術やマネージメントが鍵となることが理解いただけている

*信条;技術はうそをつかない! 許される失敗と許されない失敗がある!

20180218
*ISAS/JAXA;SS520-5ブログで成果を公開;http://www.isas.jaxa.jp/home/propellant/ss520launch.html

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 超小型衛星打上専用のロケットとして期待されたSS-520-打上(20170115)は、打ち上げから約20秒後にロケットの状態地上にテレメトリする通信回線が途絶えたために2段目点火コマンドの送出を行わなかったために1段目の着水予定範囲に着水したと発表された。
 なお、ロケットのノーズコーン/2段目/衛星分離シーケンスは予定通り進み衛星;TRICOMの送信信号(401MHz帯?)が受信できたとの報告があった。
 今回の顛末を理解するにはJAXAからの解析報告と今後への対処を待つしかないが、報道では民生部品を使ったことや民生部品を使った衛星は作動したのに等多少の混乱があるようなので、思いつくままに整理になろうコメントを。

・民生部品をロケットや衛星の部品に使用する事とは?
 民生部品でも良い/悪いではなく、使用要件に見合った吟味をしているか否か重要なポイントで今回の事象がこれらの裏付けを持っていたということを確認することが肝要であろう。
また、宇宙機器の信頼性/品質を評価するときには部品を含めた、材料、物作り/製造等すべてに関わることが肝要

・ロケット搭載機器と衛星搭載機器の要件の違いは理解されているか?
 多くの小型・超小型衛星はコールドロンチで打上状態での破壊や破損に対しては耐性が求められるが、打ち上げ中のロケット環境に対してはその機能や性能は緩和される。即ち、ロケットで軌道に到着してからか/ISSなどからの放出後から長期にわたる衛星軌道上で稼働することが肝要
一方、ロケット搭載機器はロケットシステムを構成するすべての機器がロケット打ち上げ中の過酷な環境の中でも機能性能が一瞬たりとも欠落することは許されない

・例えばロケット搭載電子機器(テレメーター送信機/各種計測機器、コマンド受信機/デコーダー/制御機器、レーダートランスポンダ、姿勢御制御装置、電池/制御機器、各種アンテナ、機器間計装配線等々)の要件は;小型化、軽量化、低電力化、高信頼化、機器間干渉対策、さらには堅牢であること、そして機器等には環境条件が与えられ、ロケット飛翔中に一瞬の故障も貴重なデータ―の欠損があってはならないしロケットが飛翔中に起こる異常事象時虫のデーターも計測・送り届け、さらには安全のための地上からの指令を受付けなければならない。
そのためには設計の妥当性、部品を含めた物作りの健全性を厳しい試験・検査により確認する必要があり、そのうえで搭載機器としての妥当性と製造品質の評価をして搭載しなければならない

 特に、衛星の搭載機器との評価の大きな違いは;
・環境条件下(機械的、圧力、・・・)で一瞬たりとも機能・性能に変化・異常がないこと、即ち微動もないこと
・衛星機器の場合は、環境条件前後で機能性能の変化・異常がなくトレンドしていること、真空/温度環境下での長期間の機能性能維持が肝要
・一口にロケット/衛星搭載機器の耐環境度合を表現してみると;
 ロケット>>ロケット打上衛星>ISS放出衛星
・一方寿命の要件は;
 衛星搭載機器>>ロケット搭載機器
・よってこれらを検証するには;
ロケット搭載機器は一品毎の耐環境試験/環境下でのデーター評価が肝要で、衛星搭載機器は長時間/真空温度環境下でのデーター評価が大切になる

 この様な要件の中で今回のSS-520-4はどうであったのか、特にロケットシステムに何らかの綻び(2段式から3段式にしたことによる構造解析/環境条件設定の妥当性など)はなかったかを分析する必要があり、今回の事象が偶発であったとすることも許されない。
 この様な観点で今後の報告を注視し、以降につながる道筋があれば期待して見守りたい。

Update20170215

SS520-4の調査報告の記者会見と委員会提出資料公表があった。
http://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/files/20170213_ss-520-4.pdf

見方はいろいろあろうかと思うが私見としては先人たちの財産が生かされきれていなかったのではとの残念な印象である。
なんでも3Kgを衛星軌道に乗せたい気持ちは通じるところですが、そのために軽量化が最優先になりシステム的/モノづくりの基本要件が二の次になってしまった感があります。
例えば;
1)28V電源ラインの分配にシングルフェーラーポイント(SFP)が存在していたこと。いうなれば計装配線を含めて故障分離の配慮が全くなかったこと・・・まず起きないと思い込んでしまった?
2)計装配線及び機体実装に当たっての絶縁処理(ブッシング、ナイフエッジ等の対策)、束線方法や固定方法、全体的に耐熱対策等など・・・意外と相変わらず計装配線の重要性が二次的?

何れにしても軽量化が必須・必然としても原理原則や基本的に確立されている電気設計/標準や実装基準/標準を念頭に置いた今後の取り組みを期待したいと思っております。


過去、ロケット関係ではこのような事態は少なかったとは思うが?、私の知る限りのカッパ―、Mロケットではほぼ衛星計装並みの物作り/取り扱いをしていたと記憶している。
H-UA-6号機のSRB不具合での打ち上げ失敗対策では直接原因ではなかったもののSRB周りの計装配線でもかなり手を加え(耐熱、、ルーティング、束線分けなど?)、かつ作業者の再訓練も行われたはずである。

衛星では軌道上の長時間運用、宇宙環境による不具合はJERS-1、ADEOS/ADEOS-2等々上げられますが計装配線の発熱、耐熱、被覆亀裂が原因でそれぞれ対策されている。
太陽電池パドル、構造体への計装配線の組み付けにおいては貫通部やヒンジ可動部などへの対応は金属にじかに当たることなどは厳禁でブッシング等で保護するとともに作業時の注意、作業後の点検には細心の注意をしているはずである。それでも何回か繰り返される地上試験/組立時には束線のつぶれや配線被覆の亀裂などが発見されると、リワークしている。

そのような観点で公開資料中の機体写真を見ると、それがフライト機なのか、またはそれに準じた実装/艤装状態を表しているとしたら、これで飛ばすGOを出したとしたら大変疑問を感じる。

システムにおける計装配線(ワイヤーハーネス)を含めた実装設計/製作はともすると二の次になりがちだが、人間の体で例えれば血管や神経に相当するものであり、今回/過去の事例にあるように一度事が起きると致命傷になりかねない。
計装配線/実装に関する基準やガイドラインの参考例を示しておく;
NASDA標準文書;NASDA-STD-9(但しこの文書は現時点ではWEB上で検索できていない)
NASA;SPACECRAFT ELECTRICAL HARNESS DESIGN PRACTICE PD-ED-1238
NASA;INSTALLATION OF HARNESS ASSEMBLIES (ELECTRICAL WIRING), SPACE VEHICLE GENERAL SPECIFICATION FOR MSFC-SPEC-494
NASA TECNICAL STANDARD;CRIMPING, INTERCONNECTING CABLES,HARNESSES, AND WIRING NASA-STD 8739
NASA WORKMANSHIP;CABLE CABLE AND HARNESS GENERAL REQUIREMENTS


人的な点は限りなく排除する努力も必要ですが、もう少し基本のことを理解し開発に携わってほしいと思う。
会見での発言で気になったことは”小型衛星での配線の軽量化は挑戦的な技術でやったことに意義がある”といわれているが、宇宙に限らず自動車や航空機の計装/艤装系の重量配分は重要で有ることは当然、しかし作り方や取扱いにちょっとした抜かりがあれば今回のような事態になることも肝に銘じて先につなげてほしい。

Update20170404→20171116→20171231

JAXAよりSS-520再挑戦が発表されたが今回の直接的な事故原因解消は勿論のこと総括的な検証結果の反映で結果を出して欲しい。
2017年12月25→28日打ち上げ予定の計画が発表された;http://www.jaxa.jp/press/2017/11/20171113_ss-520-5_j.html
2017年12月26日搭載部品の一部に不具合打ち上げ延期;http://www.jaxa.jp/press/2017/12/20171226_ss-520-5_j.html

=====
追補;衛星「TRICOM」の電波が受信できたことの分析
・ロケットの飛翔経路等の詳細
・受信ができた受信局/時刻とその時点での衛星の推定位置
・受信信号の内容
・「TRICOM」からの信号であったとの報告の妥当性?

蛇足;大型システムの計装配線問題;スペースシャトル、MRJ(201703発表;2万本設計変更)

Update170907
 ★ 温故知新;「ひとみ」事故に関連して、本SSC-HP上での”過去の教訓”をリンク他(20160527)
 不幸な「ひとみ」事故であり、改めて宇宙開発の”ワンストライクでバッターアウト/ゲームセット”を痛切に実感している。 本SSC-HPでは過去の”宇宙開発教訓”を収録してきたが、該当ページをリンクしておく。
1)宇宙時代の教訓;http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/space.html#教訓を学ぶ
2)宇宙プロジェクト成功の鍵:http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/engineer.html#■ 宇宙プロジェクト成功の鍵
3)宇宙技術者の心得;http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/engineer.html#■ 宇宙技術者の心得
4)私見・JAXAへの置き手紙-衛星開発力の回帰
 教訓には人為的ミスや過誤に起因する多くがあり、時代の変遷にもよるが根底は同じで、新たな思考で継続的な改善、撲滅を期待したい。
 また、多彩・多様な科学ミッションを完遂した大型・大規模な月探査衛星「かぐや」(2007~2009年)のJAXA/ISAS/参画企業の組織統合を実現したプロジェクトマネージメント手法や力量は(JAXA/参画企業共にPM+PI体制徹底)、これからの科学衛星開発力回帰の糧になると付言したい。
5)JAXA信頼性評価委員会(平成21年度)での評価・提言への関与要旨(20090619~100306)
 機会あって上記委員会に参加した折に、主にJAXA衛星開発に対するJAXAの在り方について関与した要旨を公開しておく。
a)衛星開発プライム化を効果的に進めるためのプライム企業へのJAXA関与の在り方
・JAXAのミッション遂行責任を前提にした企業との契約関係の明確化が肝要
・プライム企業はシステム全体の健全性を検証、評価した情報を提供する責を負う
・プライム契約に係る契約条件が適切に維持・運用されていることを第三者を含めて、定期的にJAXA、企業それぞれの客観テク評価が肝要
・JAXAの使命である技術力向上、維持にためには成果物の一層の活用が肝要
・衛星運用段階への活用や設計技術の伝承にためにも、設計文書をコンフィギュレーション対象文書とし、JAXA/企業共通維持文書とすることが望ましい
b)衛星開発信頼性向上に向けたJAXAの組織運営の在り方
・ミッション創出を事前検証するためのシステム技術実証が重要でりリソース投入が肝要
・ソフトウエア―のフロントローディングはシステム設計から運用の広範に亘り非常に重要であり、ソフトウエア―マネージャの配置やリソース確保と合わせて、JAXA〜企業間での実施状況の監査の在り方等について十分に議論すことが肝要
・フロントローディングは有効な方策と評価できるが、前提条件の明確化を図るために、ミッションロードマップやJAXAが蓄積した実績/既存技術の活用・継承等の関係をより明確に示して、事業効率や信頼性向上を図ることが肝要
・小型衛星開発での新入社員の実務体験教育は、信頼性向上の基礎として有効と評価できるが、その経験を生かす人事ローテーション計画を含めた教育プログラムの一層の推進が肝要。また、JAXA職員が現場感覚を養うための企業との人事交流も一考
そのほか、小生がNASDA/JAXA在籍中に運用した衛星独立評価チーム活動活用も提言。
6)20160428運用断念/根本原因調査継続/20160614JAXA「ひとみ」事故に関する調査報告書公開http://www.jaxa.jp/press/2016/06/files/20160614_hitomi_01_j.pdf→運用担当NECの姿勢制御データ誤入力/20170905民事調停でNECはJAXAに5億円解決金(国庫返納)、教訓;宇宙研方式の終焉?(契約/マネジメントの本質回帰へ)

Update

 ★ 宇宙開発と倫理観(20120301)
Update
1.宇宙産業と企業倫理
(20120301)

1−1) 宇宙企業不祥事(
三菱電機の過大請求事案の衝撃を宇宙村脱皮のチャンスに!
 防衛・宇宙企業の過大請求問題は、企業倫理に背き、宇宙産業への不信と、国民の宇宙開発への期待に水をさす事態と思う。
注;朝日新聞社説「防衛産業不正―罪深さ。根深さ、解明を(2012年2月9日)」他

 私は2000年2月8日付毎日新聞に”宇宙開発は謙虚に!大胆に!!”と題した応援メッセージと関係者の倫理観を促し、その後のH-UAロケットの連続打上や「はやぶさ」、災害時の宇宙技術活躍等の成果を見守り、新宇宙政策や事業展開を注目していた。

 宇宙基本法(2008年)、宇宙基本計画(2009年6月)、宇宙開発利用の戦略的推進のための施策の重点化及び効率化方針について(2011年8月)、実用準天頂衛星システム(2011年9月閣議決定)と、この数年で安全保障に関る公共、公用プロジェクトならびに関連した産業育成が声高らかに謳いあげられた我が国の新宇宙政策であったが、2012年1月に露見した防衛・宇宙企業による不祥事は宇宙推進を根底から覆すものと危機感を感じる。


今回の事案が10数年前の不祥事(巨額背任行為で刑事事案に発展)と同様な構図であるとすれば誠に遺憾であるばかりでなく、技術力はともかく財界・産業界としても厳しく断罪されるべきで、国は企業との原価計算システムの制度調査が適正であったのか/大企業であろうとも不正は必ず露見すること再認識し、その上での出直しにどう臨むか透明性をもって公表することが、血税を提供する国民に対する謝罪の第一歩と思う。

 加えれば、この10数年の中での国の宇宙事業契約の危うさが感じられる。 情報収集衛星はじめ準天頂衛星システム、防衛衛星通信のほとんどが一企業寡占の構図は、国としてのリスク分散、緊張感を持った公正・適正な企業競争等を疲弊させるばかりでなく、いわゆる政・官・業・学で構成される「むら」社会の中でも偏りを助長し、その自浄不全と再発の繰り返しの病巣が生じたのではないだろうか。 国際的な観点では「航空宇宙防衛産業におけるビジネス倫理の国際原則」が共通認識として議論されていることからも宇宙産業における倫理観を再構築することが肝要と思う。


 この事態の教訓は、当該企業に止まらず、公用・公共や産学支援等の宇宙プロジェクトの多くが血税であることを喚起し、さらには宇宙は探究心や将来がある若人・子ども達にインパクトがある目標である側面からも信頼回復が求められるとして注視したい。

注1;2012年12月22日追記
 JAXA調査報告等(下記関連情報エ〜キ))によると、@遅くとも1992年(20年前)から、A工数の意図的計上/真の帳簿なし、B不正の動機は赤字案件(海外商業衛星受注も含め)の回避や宇宙事業の事業継続、Cコンプライアンスが機能せず、関係事業所等の不正計上/隠蔽などを組織的関与が明らかになり、同業他社の事案の上を行く背信行為と思う。
 また不正計上案件のなかでも国の巨額投資(累計総額約8000億円)となっている情報収集衛星案件での過大請求額が突出していることは今後のわが国宇宙基本計画の中でも安全保障に関るところが温床となっていたと思われ、現行の調達(先)計画の見直しを含めた精査や透明性、公平性が求められる。 当該企業と情報収集衛星で関ったJAXA/NICTの2機関で過大請求があったことから関連したその他の機関の精査も肝要。
 さらに
不正の動機である赤字回避の案件が自社設備投資や海外商業衛星受注も含まれるとなれば、血税を私企業の穴埋めに使うと言う言語道断の行為と思う。

今後も、以下の観点を注目したい。
 ・今回の不正事案の結末が過払い金返還や違約金支払、一部の関係者の処分で終わることでよいのか? 社長のお詫びで済む話ではなく?(反
  則行為との認識は違法行為であることを自覚することから)  指名停止ペナルティーのあり方や事業体制の官需/民需の分離を含め事業運営の
  透明性?等を前提にした宇宙事業の出直しも求められるところ
 ・企業活動において真の帳簿がないという原価・計算/管理制度を根底から否定することに対する税法、公正取引等の広く法制面の観点から検証
  (真の帳簿なしに企業/事業活動してきた企業が世の中に有ったことの不思議?であり、それを今回の調査で認めた事態は信じがたい)
  (真の帳簿がないということは、別の観点から不正期間中の全ての契約見積もりが意図的に計上された帳簿に基づくことになり、その額は雪ダル
   マ式に膨らんでいるとも憶測され、より多くの過払い金が生じているとの見方も有ろう)
 ・当該企業の説明責任として不正の動機になった赤字穴埋め等が行われた過大請求案件と赤字補填案件を明らかにすること
 ・受発注当事者や会計学等の専門家・学者の中には現契約制度に課題があり見直しが必要との声が有るがそれは検証するとしても、今回の事案
  は企業倫理/会計学の観点で、それ以前の元凶の根絶が肝要では?
 ・平成25年には宇宙基本計画の見直しがあるがその中でも議論されたい。宇宙産業界としての建て直しは勿論のこと、政官学を含めた宇宙村脱
  皮が肝要であろう

 ・安全保障強化を標榜する新政権誕生と相まって、国民の宇宙への期待と乖離する政治力が突出することがないように注視したい。 そのために
  は、本事案のマスコミの取り扱いは消極的と感じ、国民の知る権利の代弁者としての役割・責任を果たすことを期待したい
 ・当事企業現役の”ただただ長い期間の驕りと感覚麻痺の結果と深く反省し、自浄能力を根付かせるため、責務を全うしたいと気を引き締めます”
  の行動を見守る

関連情報;

Update
ア)三菱電機発表「防衛省、内閣衛星情報センターおよび宇宙航空研究開発機構に対する費用の過大計上について」2012年1月27日
イ)会計検査院報告「三菱電機等による過大請求事案に関する会計検査の結果について」2012年10月25日
ウ)防衛省報道資料「三菱電機等による過大請求事案に係る過払い額算定要領ついて」2012年10月31日
エ)JAXAプレスリリース「三菱電機による過大請求に係るこれまでの調査結果及び再発防止策について」2012年12月21日
オ)NICTプレスリリース「三菱電機による過大請求事案の調査結果の公表について」2012年12年21日
カ)MELCOニュースリリース「防衛省、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構及び情報通信研究機構との契約における費用の過大請求に関する返納金の引当計上の見込みについて」2012年12月21日
キ)MELCOニュースリリース「費用の過大計上・過大請求事案の社内調査結果と再発防止策について」

1−2) 世界の航空宇宙防衛産業の企業倫理の動向(SJAC報告他参照2010年~)
 2010年1月に米国A1Aと欧州ASの主催で第1回IFBEC(企業倫理の実践に関する国際フォーラム)が開催され、両者の共通認識の「航空宇宙防衛産業におけるビジネス倫理の国際原則」を対外的に示している。

 「国際原則2009年10月2日」のポイントは、
 ・倫理憲章の検証評価
 ・汚職を許容せず
 ・アドバイザーの使用
 ・企業と公務員等との利益相反の対応(雇用、契約、不当不適切なリスク他)
 ・機密情報の尊重
であるが、技術者の身の回りでは、特に競合関係にある同業企業間での雇用・移動(転職等)に当たっての競合度合、技術・営業情報の漏洩、贈収賄等々の観点からの倫理性が注視される。

 わが国では一般的に企業のCSR活動として憲章や要綱はあるものの、企業経営や公用・公共の調達において実行上具体性・透明性がないままで、これらにまつわる不祥事の発生、再発が懸念され、上記「国際原則」に則った認識と行動が肝要と思う。


2. 老宇宙技術者の倫理観
Update
2−3) 老宇宙技術者の倫理観から見た宇宙企業過大請求事案の根源(組織/個人)?
 ・驕り
 ・感覚麻痺
 ・自責の欠如
 ・順法精神の欠如
 ・もたれ合い/腐れ縁/爛れる

2−2) 私(白子)なりの永年の宇宙開発への取り組み姿勢(信条と意志)
 ・宇宙(環境)を侮らず
 ・宇宙システムの臍の緒は通信
 ・技術はウソをつかない
 ・現場主義
 ・技術・信頼性文化は人の絆 (信頼と倫理観、人づくりで継承と伝承、そして発展)
 ・リーダー観;我をもって和となす


2−1)毎日新聞・2000年2月8日(火)朝刊−オピニオンワイド・みんなの広場−掲載

”宇宙開発は謙虚に!そして大胆に!!” 技術士 白子 悟朗 61 東京都目黒区
「21世紀は宇宙時代」との思い入れで、わが国宇宙開発に応援メッセージを送りたい。
 通信、地球観測や宇宙科学など、人類にとって宇宙技術は不可欠。国力としても宇宙開発と宇宙産業は不可分関係で、先端的・継続的な努力が必要である。さらに21世紀の主人公である子供たちに宇宙時代実現の夢を託すためにも宇宙開発を謙虚に、かつ大胆に進めたい。
 宇宙システムではH-IIロケット打ち上げ連続失敗のように、すべてが一瞬で無に帰する。謙虚にその教訓を生かすのが世に応える唯一の道である。併せて効率化・原価低減の限界を誤認することは手抜きにつながる。携わる者が、愛着と使命感をもってヤル気を出せる環境づくりと”やることはきちんと、だめなものはだめ”などの倫理観の自覚が求められる。そして、国民・社会の声を反映した大胆な宇宙ビジョンを得意な技術・分野で立案・実行することが宇宙文化創造につながる。


  「
宙の会(代表幹事・五代富文氏、中野不二男氏)」:Web上バーチャル宇宙政策シンクタンクへの投稿

Update 26 Feb 2012
    <白子投稿ペーパ リスト>

    − 主張
New    宇宙開発戦略本部・専門調査会議論への素朴な疑問(110722)
New    今こそ、情報収集衛星の姿を! パート4(復旧・復興の鏡に) (110606)       
New    今こそ、情報収集衛星の姿を! パート3(「だいち」の後継に一石) (110422)
New    今こそ、情報収集衛星の姿を! パート2(マスコミに期待) (110327)
New    今こそ、情報収集衛星の姿を!(110326)
New    被災した携帯電話端末を安否確認手段に活用(110417)
New    災害に備えて身近な非常時の初動通信(連絡)手段を思う(110412)
       我が国の有人宇宙技術開発の意義、目標、戦略、シナリオ(090806)
       「宇宙基本計画(案)」への意見提出(090603)
       「裏から見た日本の宇宙開発」討論シリーズ:衛星現場OBから一声(080519)
 
    − 衛星
New    わが国の周回衛星の寿命と電力システムへの私見―「だいち」運用終了を機に―(110520)
       「だいち」利用と後継計画(080306)
       「だいち」の開発評価と後継計画の考察(070118)

    − ロケット
       「H−U・H−UAロケットの開発効率の考察」(061226)
    − 小型衛星論シリーズ
New    No7 学生衛星の確実なモノづくりに期待(120112) 
   
    No.6 新ロケットH-UBで学生・超小型衛星(副衛星)打ち上げを提唱(デブリ対策も!)090217
       No.5 学生衛星コミュニティーを財政面で応援しよう!
       No.4 小型衛星vs大型衛星の対峙構図 −ミッションに即した先端技術を利用して
       No.3 日本版DMC計画もあった! −衛星による災害および環境監視
       No.2 学生衛星の開発費についての提言 −小型衛星市場開拓の一側面
       No.1 小型衛星市場開拓への方策 
    − 「宇宙ゴミをどうする」シンポジューム
       「超小型衛星の宇宙デブリ対策雑感」(060609)
    − 掲示板
       「宙の会」参加のご挨拶(060523)

 ★ 宇宙開発の個人的な思い入れ
New
 
 宇宙開発基本計画(案)と日米衛星調達合意(1990年スーパー301)
(130101)
 先にパブコメのあった宇宙基本計画(案)において、産業振興や安全保障強化の障害となる1990年日米衛星調達合意との関係について全く言及されていないことは基本計画の根幹に関ることであり撤廃等の再考が肝要。
 米国は宇宙産業振興のためにバイアメリカン法を維持し、近頃はITARの通信衛星関連輸出の緩和を決めている時代に無抵抗?は如何なものか。
 参考;米国包括貿易法「スーパー301条」による人工衛星調達に関する日米政府間協定での主な内容(抜粋要約)
  1)対象調達者;日本政府および日本政府の直接/間接コントロールを受ける事業体・・・NTTを含み、NHKは協定の内容を遵守
  2)対象となる衛星;気象・放送・通信の如何を問わず、研究開発衛星/非研究開発衛星に搭載する研究開発ペイロード以外の全ての衛星とし、
              商業目的で又は恒常的サービスを継続的行う衛星は研究開発衛星ではない(非研究開発衛星であると言う事)
 このような条件下で、実用化する計画の準天頂やDRTS後継機等々をその都度協議するようであれば、機会損失やわが国の宇宙の自立性が損なわれることが続くことになる。

本件に関する過去の問題提起・・・SSCnote-HP;宇宙情報より転記
   ★ 宇宙開発利用の取り組みと日米合意との関係についてコメント( 30 Jul 2002)
 我が国の宇宙開発利用に関する方針は、総合科学技術会議で一本化されはじめ、関連して文科省・宇宙3機関統合で、より重点化・効率化が推進され、成果の民間移管が行われることになる。
 ここで、国としての政策的な検討においては、過去の特に米国との宇宙開発に関する交換公文合意や米国包括貿易法・スーパー301条人工衛星問題などの存在を念頭に置き、かつ米国にとって宇宙開発政策は自国の琴線である事を考慮した我が国の政策議論をしておかないと我が国のロケット・人工衛星等でありながら米国からの重要部品調達問題はじめ多くの足かせが掛けられることになる。
 そのためには宇宙先進国仲間入り時代に結んだ交換公文(1969~80年に3件)/スーパー301条協定(1990年)などの破棄や宇宙開発利用を自主的にかつ優位に進めていくために必要な研究技術開発を、政策的なベンチマークの下に立案・実行することが肝要と考える


Update
 ■ パブリックコメント;新宇宙基本計画(素案)に対する意見を提出(13 Nov 2014) ・・・意見内容/結果については公表され次第
 ■ パブリックコメント;宇宙基本計画(案)に対する意見を提出(10 Dec 2012) →意見内容公開 → 意見募集の結果;宇宙戦略室
  パブリックコメント:内閣官房宇宙開発戦略本部「宇宙基本計画(案)」に対する意見提出と結果(5→28 May 2009)
 
■ パブリックコメント:文科省「宇宙開発に関する長期的な計画への意見」に意見具申(25 Jan 2008)
 ■ 
JAXAへの置き手紙 − 衛星開発力の回帰 (9 Nov 2005)
 ■ 
我が国の有人宇宙技術開発の意義、目標、戦略、シナリオについて」意見(7 Apr 2003) 
 ■ 
科学雑誌「科学・8月号」に「宇宙を通じて”技術する心”を子どもたちにどう伝えるか」寄稿(2001/7)
 ■ SAC基本戦略部会・報告書案への意見具申(00/11/25 & 00/09/29)
 
■ 宇宙開発は謙虚に!大胆に!!('00/2/8)
 
 宇宙放送局構想:宇宙から地球を見る−現状と展望−('96/3)
 
 21世紀・人類繁栄のための「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」:日本航空宇宙工業会会報寄稿'(94/3)

Update
 パブリックコメント:内閣官房宇宙開発戦略本部「宇宙基本計画(案)」に対する意見提出と結果
     (5→
28 May 2009)
 掲題のパブリックコメントに対し、以下の意見具申を行いました(以下に要旨のみを記述)。 5月26日の専門調査会では募集の結果が報告され、提出した意見に対する考え方が示されました。 結果の全ては資料閲覧できます。(総数1510件、二足歩行ロボット、早期警戒衛星には否定意見多し)

私が提出した意見の要旨と付与された番号と考え方の要旨;
<意見−1>宇宙科学の成果・貢献を高く評価し、更なる継続・挑戦的計画を盛り込むべし [5-33]「はやぶさ2」「SELENE2」は然るべき時期に策定
<意見−2>情報収集衛星を明確に総括し、更に早期警戒衛星が必要か否か、再評価すべし [3-132]年内の防衛大綱等で検討される
<意見−3>月探査は科学探査を優先し、有人宇宙活動に含むことの是非を再評価すべし [5-168]十分評価している。探査に注力と一部修文
<意見−4>有人・月探査にとっての2足歩行ロボットの必要、有用や実現性を再評価すべし [5-238]2足歩行ロボット等を含むロボット技術に修文
<意見−5>自立的輸送手段として、ISSや探査等の成果を回収する手段が必要ではないか [5-349]多様な輸送手段を検討するに修文
<意見−6>衛星搭載機器等の競争力強化や効率的投資に、デュアルユースを定義すべし [3-150]汎用機器類は現状でもオープンと
<意見−7>宇宙環境、地球環境の監視、保全にたいして宇宙天気予報システム強化が必要 [7-3]宇宙天気予報を認識し、追加で明文化
<意見−8>その他;活動法制定の時期、必要な予算等の明示 [9-84]法制検討WGで [9-42]宇宙戦略本部が予算決定

尚、示された事務局の考え方は、論点のすれ違いや十分な回答が得られないものもあり、今後の宇宙開発戦略会議の動向を一層注意深く見守ってゆく必要性を改めて強く感じているところである。

Update 23 Feb 2008
 パブリックコメント:文科省「宇宙開発に関する長期的な計画への意見」に意見具申(25 Jan 2008)
 掲題のパブリックコメント募集に対し、以下の意見具申を行いました(以下に要点を記述)。 宇宙開発委員会は寄せら意見(156件)とそれらに対する考え方を公示(意見募集の結果)しました。 さらに今後の検討を注目したいと思います。
 1)宇宙開発の成果や思い入れに対し、地球観測衛星や衛星開発成果を包含することや、国民への還元が十分でない国民理解のコンセンサスを得るための広報、私たちの宇宙への思い(私たちも宇宙人、宇宙の神秘に対し、知りたい、行きたい、作りたい)に言及することを具申
 2)重点化するプログラムについては、「だいち」の成果・継続性を後継機に取り込むこと、衛星測位プログラムを準天頂衛星システムを特定して進めることの再評価を具申
 3)宇宙探査への挑戦は、大いに推進すべきことであるが、具体的な長期計画が見えないのはなぜか
 4)国際宇宙ステーション完成後の我が国の有人宇宙活動について、一定期間の利用活用後のJEM継続的存続や、より発展的な利用の研究が必要ではないか具申
 5)HTVが国際宇宙ステーションへの片道切符であることに対し、その一部を回収化し、わが国が独自・自在性をもって成果物を回収出来るようにする検討を具申
 6)優秀な得意技術を持つ中小企業の宇宙産業参入を容易にするために、機構や大学が中小企業に代わって、人材育成の一端を肩代わりする連携施策を具申
 7)国民理解の向上にはメディアの協力が不可欠で、そのためには単なる情報提供にとどまらず、メディアに対する理解向上に関わる教育、情報共有などの施策を具申

New 9 Nov 2005
  私見:JAXAへの置き手紙 − 衛星開発力の回帰 (9 Nov 2005)
 旧年・2003年は、新生・JAXAにとって、まさに正念場の年となってしまったが、JAXAの総力と国民の応援で、きっと立派に立ち直り、日本の宇宙開発成果が“安全と安心”をモットーに、人類に貢献することと信じている。 その中での宇宙技術者は、現代の多様化した社会での倫理観を“安全と安心”に軸足を置き、技術の動向や真実の見極めに注意を払いながら宇宙開発に情熱を燃やしたいものである。
 この度、私がNASDAJAXA聘に区切りをつけたのを機会に、在任中に事業幹部に具申させていただいた、衛星開発力の回帰へ道としての背景分析と私見を我が国宇宙開発への活動に少しでも参考になればと祈念して、JAXAへの置き手紙として公開・再掲する。
 
尚、背景分析・私見には、独断と偏見や推敲不足が多々有るが、お許し願いたい。

1.背景分析
1)JAXA(旧NASDAISAS)の宇宙開発の足跡を分析
 私見を述べるに当たり、JAXA(旧NASDAISAS)でのロケット/衛星の打上げ経過と開発環境や組織構造の変化との関連の分析を試みた。関連データ参照
 1970年代(開発初期段階)での事故や不具合は、当然の事ながら、開発技術・管理技術の未成熟要素が原因となっていることが多い
 19801990年代前半まで15年間(開発発展期)は、初期段階の教訓と技術開発の成熟度や管理技術の徹底を継続的に生かして、概ね100%の成功を持続した
 1980年代後半から1990年代後半に集中した、宇宙ステーション開発への衛星技術者のシフトや組織体  制変更(衛星プロジェクト制、技術研究/安全信頼性の分掌変革他)、さらには衛星の大型化、H-UA開発開始に伴うH-Uロケット技術者やIGS開発への更なる衛星技術者のシフトが重なった結果、技術的・リソース面での基礎体力不足や管理能力が硬直化して、1990年代後半からのロケット打ち上げ失敗やETS-Y/ADEOS-Uの不具合の土壌を作ったとも憶測できる
 以上の結果、1980年代後半からの短期間(約10年)での事業範囲拡大に伴う人的・資金的リソースの分散化で、技術蓄積や継承の根幹となる人材の不足や管理力の低下が、JAXA(旧NASDA)のみならず産業界を含めて慢性化し、技術面・管理面ともに行き渡らないことによる欠落部分が出てきて、昨今の事故や不具合の発生の隙を作ったのではないかと分析した

2)衛星開発の評価活動からの提言の状況
 旧NASDAアクションプログラムの一環として立ち上げた衛星開発の評価活動は、SELENEWINDSGPM/DPRGOSAT等の新規プロジェクトの技術者が心掛けるべき設計等に内在するプロジェクト・リスクの識別・評価・改善を、側面的にかつ客観的な立場でリスク評価を行い、開発プロジェクトが限りなく低リスクになる様にアドバイスを含めた勧告をしている。現に、これらのプロジェクト関係者とは厳しくも良好な関係が築かれており、いずれ素晴らしいプロジェクト成果と人材が輩出されると信じている。
 また、(MDS-1:軌道上ミッション達成)、(DRTS:軌道上運用中)、ALOSETS-[は、概ね製造段階からの特別点検と言う形で関与しており、打ち上げ前までの作業において、先行きリスクとなる兆候を識別し、やるべき事はきちんとやる精神を貫き、プロジェクトの完成度を上げるべくアドバイスを続ける事が肝要である。
 評価活動の経緯から、軌道上不具合の撲滅の観点から以下に示す共通的な幾つかの提言(以下に箇条書)が出来る。尚、衛星開発はJAXA(旧NASDA、含む:共同開発や研究の外部機関)と衛星メーカとの契約によって実行されるから、ここに提起した問題はJAXA自身(含む:共同開発や研究の外部機関)の問題、JAXAが衛星メーカを指導監督する場合の問題、衛星メーカ自身の問題が含まれていると言及しておきたい。
 a) 技術の継承・蓄積の問題
 b) “End-To-End試験”の発想の転換
 c) 人為的設計過誤撲滅への更なる取り組み
 d) コンフィギュレーション設計の重要性に対する再認識
 e) リスク管理に関する発想の転換
 f) “物造り”マインドの醸成
 g) ソフトウエア評価検証の徹底
 
h) 衛星統合化設計への対応
 i) 大型柔軟構造衛星の高精度指向制御技術
 j) 設計基準・作業標準の遵守と適宜・適正な維持改訂
 k) “実績”と言う言葉の落とし穴
 l) 充実した設計審査資料の元で、シッカリした審査の実施
 m) サバイバル性の強化

2.衛星開発力回帰への私見
 背景分析や個人的な宇宙開発への思いを、衛星開発力回帰への私見として以下に述べさせていただく。
1)信頼性管理や技術力についての私見:
a)技術開発が、経験の積み重ね(人、管理技術)を次にフィードバックし確実な開発に繋げ、さらに環境の変化に柔軟に対応し、持続的な発展をし続けるものであるという観点からJAXA(旧NASDA)を見ると、事業範囲拡大によって手が回らなくなったり、必ずしも修得しきれていない技術を確立したことにして、次々に新しい技術に手を着けたことで、必要な開発環境に対応できていない面があるのではないか
b)管理技術の維持(職員・企業への教育を含む)・改訂・改善が、必ずしも開発環境変化に応じられていないのではないか
c)信頼性(管理)活動を、予防的(リスク低減)な管理活動と言う観点で見ると、開発現場(プロジェクト)と乖離した存在になっていないか吟味してみることが肝要 →管理活動は、組織全体の活性材になることが望まれる
d)企業への責任委譲が、企業自体の自信過剰?やお任せになったりして、“品質重視:品質は工程で
作り込む”や“PDCAをまわす”など“当たり前の(やるべき)ことをきちんとやる”等のことが、お座なりになっていないか
eISO9001を標榜するのならば、品質・信頼性に係わる機能組織の責任・権限の明確化と諸管理規定・手順等の維持・改訂・改善を含む再整備が急務ではないか

2)「確実な衛星開発」についての私見:
a)技術を束ね、弱い要素技術を補うシステムエンジニアリング
b)技術開発には多様性(重複性)も必要、必要以上の集中化、または開発路線を既成化すると固定化し、発展や修正が阻害されることがある
c)有限のリソースの中での宇宙開発は、確立した技術の徹底した活用と、挑戦的な新規技術の使用に当たってのリスクの受容のバランスが大切である
d)技術は、1,2度の成功で確立した技術と言えない。同じ技術を繰り返し使用して、データ・管理の積み重ねが必要である。昨今の“実績がある”と言う開発計画・設計は、限定された地上での評価や数少ない軌道上動作を盲信し、かつ、実際の設計者不在や設計変更を行った、確立されていない技術が横行しているのが実態
e)“宇宙を侮ること無かれ”、未知の要素の有るものについては、設計のためのデータ取得、あるいは、その設計の確認のための試験を必ず実施すべきである。そのためにコストがかかるが、リスクとコストのトレードオフを意識し、状況によってはリスクを受容する考え方を方針とする事もあり得る。
f)宇宙実証衛星計画もMDS-1だけで立ち消え状態となっているが、軌道上実証の原点は、“宇宙を侮らないことへの戒め”、“宇宙で使うモノは宇宙で検証・・・ノウハウの密度が違う”、“実証された成果はトコトン使い込む”ことであり、復活と継続化を期待
g)コストダウン、短期開発、性能の向上の代償として、リスクが高くなる事を認識すること。技術開発の効率化・コストダウンの限界を誤認することは手抜きにつながる


3)より気概をもって確実な開発が行える職場環境構築への私見:
a)倫理観/健全な技術者としての感覚の育成の一環として、JAXAインハウス(小型衛星企画他)を含めたプロジェクトサイクルの体験b)技術者の過剰負担の防止→例えば、JAXA内での過度な文書作成からの開放
c)モラル高揚の場(行事)の活用→体験発表、表彰制度、資格制度
d)人的資源の強化私案:
 云うまでもなく”技術は人なり”であり、新規技術の研究開発も基盤技術や技能・技術の継承を前提とした、人事・教育面の強化が機関・企業共に急務ではないか。継続的教育の重要性、個別技術・技能スキルの資格化(可能な限り公的な)に加え、大規模プロジェクトである宇宙開発のプロジェクト遂行要件としても、国際的信用度のバロメータとしても、公的資格(既に大型事業で義務付け有り・・・技術士他、管理責任が実行できる資格者の任用)保有者をプロジェクトの遂行責任者に位置づけるなども一法。さらに、技術者倫理を修得するためにも資格取得や教育は不可欠と考える。蛇足ながら、JAXA/宇宙企業には文科省所管の技術士制度で「宇宙」を専門とする技術士は何人いるだろうか、プロジェクト等での技術士の登用・活用や資格取得者の拡大も一助となりうると考える。

4)企業との理想的な関係構築への私見:
a)横断的、系統的な改善提案。企業内改善の代弁。最新の管理技術・技法の充実をJAXAが再整備することも一法
b)単に、引き締めでなく、企業内自浄作用が働くような指導/協力が肝要。そのためには現場へ通い、意志の疎通の促進が肝要
c)プライム契約方式は万能ではない?
 
国際パートナーとの調整や多岐にわたるユーザー/協力企業との調整は、JAXAがインテグレーターになるのが適当。嘗て宇宙開発基本問題の議論において、一部の企業からインターフェイス調整において十分機能していない等を理由に挙げて「プライム契約」が特効薬で有るかの如き提言があった。しかしながら、インターフェイスは双方の技術的必要性から出てくる内容であり、契約方法が異なることによって解決されるようなものでは無いと体得している。却って、国の技術開発が契約1企業によって手玉に取られるようなことが有ればその技術成果はブラックボックス化してしまうことが懸念される。契約方法はインテグレータ方式/プライム方式とケースバイケースで良いと考える。そのためには、
 ・本来の「インターフェイス」の調整に真摯に対処する技術者倫理を喚起したい
 ・また実のあるIT化によって「迅速、正確」なインターフェイス調整を期待し、体系化・効率化したインタ
  ーフェイスの仕組みに強化することも一法

 ・所詮「インターフェイスはFace to Face & Man to Man
ではないだろうか。

5)その他の私見:
a)「国の宇宙開発」の定義
・「国の宇宙開発」を議論するとき、国力としての”研究・技術開発及びインフラ整備”と”産業界がその成果を活用してのビジネス(商業)化へ特価”することとは不可分関係にあることは明らだが、・国が主導的に行う研究開発は先端・基盤技術を継続的に確保する一方、
・産業界はその成果・技術力を適正な評価・移転によって製品のライフサイクルを勘案し自己の責任において投資・ビジネスするものである
・よって、国の宇宙開発は”オールジャパン”が基本であり、その計画・成果は透明性をもって国民に還元されるものと理解する
・先端技術・基盤技術を、単に国が製品として購入(国内外を問わず)するに終始することに止まるようになった場合は、わが国の技術安全保障上や産業力低下は歴然、と危惧する
b)「FBC」と短期開発の課題
・効率的開発を目標としたNASAの「FBC」の結果は意に反した様相を呈している。例えば、ClementineNEARMGSMPLPStardust等の比較的お膳立てを小規模にした衛星計画が成功したが、その後SSTIMCOMPL他の失敗が続きその成功率は50%以下となった。またIridium衛星は軌道上に行った95機の内、初期運用段階で約16機の不具合が発生している。これらを分析してみると、「FBC」が単なるコスト低減手法でなかったはずであるが、マネジメントの錯誤により“レビューがしっかり出来ていない”、“より高い目標にチャレンジ”、“リスクマネジメントへの理解不足”が重なり結果的に、設計・製造段階での些細な人為的ミスやモノ作り段階での試験・検証の不足、関係者の意志疎通の不足で初期不良が検出・対策できなかったと憶測できる
・この現象は、商業通信衛星分野でも見られるが、調達側(特に、インテルサット、GEアメルコム等)が衛星製造企業に対して品質重視で駐在・監督行為し、信頼性・品質の維持が出来ていると分析できる
・これらを反省して改善するには、“重要な試験の省略をしない”、“過度なリスクを負わない”、“IT化によるプロジェクト再構築”等、人の関わる問題が重要

3.最後に
 宇宙開発の“安全・安心”をモットーに、JAXAがなすべき、信頼性向上、(衛星)技術・品質の向上を図るには、信頼性の顔(部門としての使命と現場プロジェクトとの一体感の醸成)を明確すること。技術はJAXAとして蓄積・継承・進化させる気概(やるべき事をきちんとやる)を持つこと。実績ありという言葉に惑わされない(設計・製造)品質の慧眼が求められていると思う。JAXA職員個々は極めて素晴らしい資質をお持ちで有ると敬意を表し、この資質を束ね、宇宙を侮ることなくミッション達成のために展開させるのがJAXAの力量と思うし、必ずや実現できると信ずる。
 最後に、1998-1999年の2連続打ち上げ失敗に際し、我が国宇宙開発に応援メッセージを送らせていただいた(200028日毎日新聞・みんなの広場−掲載:後掲)宇宙開発は謙虚に!大胆に!は、この度は当事者の一員として、肝に銘じたい。
                                         以上

参考:==========================
SSCnote.-HP:宇宙をもっと身近に!−宇宙技術者の心得−
URLhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/engineer.html
==========================
毎日新聞・2000年2月8日(火)朝刊−オピニオンワイド・みんなの広場−掲載
”宇宙開発は謙虚に!そして大胆に!!” 技術士 白子 悟朗 61 東京都目黒区

「21世紀は宇宙時代」との思い入れで、わが国宇宙開発に応援メッセージを送りたい。
 通信、地球観測や宇宙科学など、人類にとって宇宙技術は不可欠。国力としても宇宙開発と宇宙産業は不可分関係で、先端的・継続的な努力が必要である。さらに21世紀の主人公である子供たちに宇宙時代実現の夢を託すためにも宇宙開発を謙虚に、かつ大胆に進めたい。
 宇宙システムではH-IIロケット打ち上げ連続失敗のように、すべてが一瞬で無に帰する。謙虚にその教訓を生かすのが世に応える唯一の道である。併せて効率化・原価低減の限界を誤認することは手抜きにつながる。携わる者が、愛着と使命感をもってヤル気を出せる環境づくりと”やることはきちんと、だめなものはだめ”などの倫理観の自覚が求められる。そして、国民・社会の声を反映した大胆な宇宙ビジョンを得意な技術・分野で立案・実行することが宇宙文化創造につながる。

New 24 Jan 2004
 意見我が国の有人宇宙技術開発の意義、目標、戦略、シナリオ(7 Apr 2003)
 「21世紀は宇宙との共生を深め、平和と地球環境保全の宇宙時代を目指したい」との思いで、わが国の宇宙開発利用を応援している。いまや宇宙開発によって得た宇宙通信、地球観測や宇宙科学などでの利用は人類にとって不可欠なものばかりだ。そして国力としても宇宙開発と宇宙産業は不可分関係にあり、技術開発とその継続的な努力が国力を高めるためにも必要で、もし人類/わが国が宇宙技術を政策的に開発していなかったら、現社会はここまでの豊かさと発展は無かったと云っても過言でなく、21世紀に対する宇宙開発利用政策ビジョンが無ければ、人類や/国民の地球上における安全保障や宇宙への展開は立ち後れることは必至であると思う。さらに21世紀の主人公である子どもたちに宇宙時代実現の夢を託すためにも宇宙開発を謙虚に、かつ大胆に進めることを望んでいる。その一環として、有人宇宙技術開発について考えてみたい。

1.有人宇宙技術開発の意義について
 我が国の宇宙開発利用ビジョンに独自・自前の有人宇宙技術開発を加えることで、我が国として安全保障を持つ、尊敬される、夢をもつことで国の威信となり、結果として広義の「国益」に繋がると考える。しかし、宇宙活動には”宇宙を侮ってはいけない”と云って憚らないリスクがあり、特に有人活動では、有人でなければならないミッション(使命)を厳選することが重要で、そのためにも「安全」、「地上で欲しい実用的成果への期待と波及効果」を意義の中で明確にすることが肝要と考える。

2.有人宇宙技術開発の目標について
1)世論の関心度の高い宇宙活動としては(高い順から)“火星探査→宇宙旅行→地球観測→宇宙ステーション→惑星探査→往還機→月探査→人工衛星”の例示があります。今後、有人宇宙活動に注目した世論への盛り上げを企てることが肝要。
2)「安全」に、「地上で欲しい」有人宇宙活動が出来る環境(インフラ、生命維持他)の一つとして、“宇宙情報通信ハイウエー:宇宙情報通信、宇宙航行安全、宇宙天気予報”を整備する観点がある。3)有人/無人、地上/宇宙の融合の視点が有人宇宙活動に肝要とも考える。例えば、我が国が得意とする地上技術(有人/無人問わず)の宇宙技術化や、家庭で人と暮らせるロボット技術:人とのやりとりを重視し、そのために相手が誰か分かる”“相手の言うことを理解できる”“ロボット自身が個性を持っている”“人に何かを与えられるといった部分に重点が置かれ、人のパートナーとなって一緒に暮らせるロボットの宇宙活動への応用等々である。

3.我が国の有人宇宙技術開発の戦略とシナリオ・(有人宇宙活動への本格的取り組みの端緒として)
1)独自・自前/得意技術による有人宇宙技術開発の戦略・・・(独自/得意技術の発揮)
  −宇宙往還ハイウエー
  :
HTV+回収技術(我が国独自に宇宙製品の回収まで)→往還システムへ発展
  −宇宙情報通信ハイウエー
  :宇宙放送局→
JEM宇宙放送局JEM暴露部上に設置した(HDTV)カメラと衛星間信ICS)を
   組み合わせた宇宙放送局(軌道上監視や地球画像取得)の開設
   :宇宙航行安全システム(含む軌道上サービス)および宇宙天気予報システム構想の検討
   →情報収集型情報・通信ネットワークの概念:単方向の通信(情報の配信)と測位(位置情報)
    の観点(情報の提供)から、“情報収集を加味した双方向の情報・通信ネットワーク
    (移動体上のセンサーで収集した情報から新たなビジネス要因を捉えた情報の提供)”
  −宇宙プラットホーム
   ISS-JEMを安全面で母港化した有人宇宙活動や小宇宙工場による宇宙製品の生産
  −その他
   人と暮らせるロボット(作業支援介助/癒し系ロボット)技術の宇宙活動の応用
   :宇宙教育の構築・・・若い技術者への有人等宇宙技術の継承
2)2010年頃までの有人宇宙開発技術シナリオ私案
   ・有人宇宙活動を前提にしたISS-JEMでの技術開発
  −安全性に基づく我が国独自・自前の有人宇宙活動シナリオの策定
  ISS-JEMでの、地上で欲しい宇宙製品創製のための計画
  ・宇宙往還ハイウエーの構築・・・HTV+回収技術による宇宙製品の独自回収
  ・宇宙情報ハイウエーの構築・・・宇宙航行安全システム、宇宙放送局他
  ・宇宙プラットホームの構築
   ・・・
ISS-JEMを小宇宙工場化して、超伝導材料ほか、地上で欲しい宇宙製品の創製
      ・生産、や展開/放出等、癒し系ロボット評価
<参考文献等>
1]白子悟朗:“21世紀・人類繁栄のための「宇宙情報通信ネットワークの構築」”19943SJAC会報
2]白子他:“宇宙情報通信ネットワークの一構想”1994年第38回宇科技連講演会
3]白子悟朗:“宇宙開発は、謙虚に!、大胆に!!”200028日付け毎日新聞みんなの広場投稿掲載記事
4]宇宙をもっと身近に! SSCnote.-HP・・・http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/
5]白子:我が国の有人宇宙技術開発の意義、目標、戦略、シナリオ JJX-2003022 先端技術開発専門分科会報告書-有人技術編-宇宙開発事業団

New! 5 Sep 2001

寄稿文:科学・8月号「宇宙を通じて”技術する心”を子どもたちにどう伝えるか」
   謝辞:本寄稿文は岩波書店・科学編集部のご厚意(5 Sep 2001承諾)で転載させていただきました。

「宇宙を通して<技術する心>を子どもたちにどう伝えるか」
 宇宙技術者の手創りの宇宙開発の実践活動から

 白子悟朗(しらこ ごろう) 技術士(航空・宇宙部門)、日本宇宙少年団リーダー/広報ボランティア
 e-mail:goro-shirako@mui.biglobe.ne.jp

21世紀は宇宙時代
 「21世紀は宇宙との共生を深め、平和と地球環境保全の宇宙時代を目指したい」との思い入れで、わが国宇宙開発を応援している。いまや宇宙開発によって得た宇宙通信、地球観測や宇宙科学など人類にとって不可欠なものばかりだ。そして宇宙開発と宇宙産業は不可分関係にあり、技術開発とその継続的な努力が国力を高めるためにも必要である。さらに私は21世紀の主人公である子どもたちに宇宙時代実現の夢を託すためにも宇宙開発を謙虚に、かつ大胆に進めることを提唱している。国民・社会の声を反映した大胆な宇宙ビジョンをわが国が得意な技術分野で立案・実行することで宇宙文化創造につなげることによって多くの国民の理解が進み、あわせて子どもたちが宇宙への挑戦者に成長させると信じている。

経験と感謝を活かす
 私は日本の宇宙開発の黎明期から現在までの四十余年にわたり、人工衛星やロケット搭載電子機器そしてわが国初の地球観測衛星「もも1号」ほかの多くの人工衛星システムの開発にかかわり、その進歩・発展の現場で、宇宙環境という極限条件下で高度の信頼性・品質で機能動作する複雑な人工衛星開発に挑戦してきた。そしてロケットが打上がるときは一発勝負の緊張を、打上げに成功しみごとな地球画像を目の当たりにしたときは身も震える感動を味わい、ともに苦楽をともにした大勢の関係者への感謝の気持ちが沸騰するような機会に恵まれた。その経験と感謝を活かして、つぎの世代に宇宙開発をバトンタッチ出来るようライフワークの「手創りの宇宙開発の実践(草の根活動)」を心掛けている。具体的には、日本宇宙少年団わたらせ分団リーダーとしての活動などを通じて宇宙開発現場に微力だがお返しをしている。

”技術する心”を遡る
 子どもの頃の手近な木切れに始まったモノづくりや泥んこ遊びに興じた自然との触れ合いが高じて根付いた「挑戦する心」「探求する心」「ワクワク、ドキドキする心」、それらが自分の”技術する心”の形成に大きく影響したと思っている。その”技術する心”とは、(1)常に物事に興味をもち、情熱、執念をもって挑戦する、(2)粘り強く、工夫をし、成果を確認する、(3)使命感をもち、苦労を惜しまず課題を進んで処理する、(4)モノ創りの魅力や難しさを実感することを大切にする、(5)現場に出て判断する、と言ったところであろうか。私が永年とり組んできた「星(人工衛星)」創りのどこにロマンを感じたかといえば、「未知なる宇宙」に高度な技術や経験に基づいたヒラメキ(温故知新)を駆使しながら挑戦してきたことだと思う。先輩が私の星創りの様を詠んでくれた。
   手づくりの衛星(ほし)の囁き、聞くごとき心地するとふ、若き技術者(たくみ)ら −雨日山人−
 その”技術する心”、つまり持続的な実践によって得られる挑戦、探求、感動を子どもたちや若い技術者に伝えたい。

宇宙を通して”技術する心”は子どもたちに伝わっている
 時流の速さに変化があったとしても、子どものころの”キッカケ”が人の形成に大きく影響することには変わりがないと思う。その”キッカケ”つくりを宇宙の魅力を通して実践している草の根活動・日本宇宙少年団わたらせ分団の活動を紹介しよう。(財)日本宇宙少年団(YAC)は1986年につくば万博を機会に結成された。全国各地に100以上の分団があり、これらの活動はリーダーと呼ばれる指導者を中心におこなわれている。私や地元ボランティアがリーダーとして参加している「わたらせ分団」は茨城県古河(こが)市に所在し、宇宙への限りない夢の実現と子どもたちの大きな成長と幸福を願って地域の草の根活動として誕生した(1997年)。毎月の活動を続けることによって、幼稚園児から高校生までの分団員とその家族が積極的に参加するようになり、幅広い年齢層の仲間が一つの家族のようになってきている。当初は挨拶、物事への集中力、そしてハサミなど道具の扱いもおぼつかなかった子どもたちも活動を通じて成長している。
 例えば、手作りロケットや宇宙食作りなどモノ作りに繰り返し挑戦し、その都度正しい道具の使い方を指導することによって今や素晴らしいハサミや包丁捌きをしてくれる。また、満天の星の下で覗いた天体望遠鏡の視野から星たちがすぐに外れてしまうことを体験し、地球が自転していることを実感し感動したこともある。このほか沢山の実体験と素晴らしい出会いと親子の楽しい触れ合いから挑戦・探求・驚き・興奮・喜び・感動・感謝を享受し”技術する心”を体得、そして成長している。そして、宇宙技術者である私は、子どもたちが宇宙や宇宙開発の現場や実物に接する中で子どもたちと同じ目線のわかり易い言葉で語りかけ、”キッカケ”と”技術する心”を与える役割に徹している。こうした活動を通じて、嬉しいことに結団3年目で分団員生え抜きの若いリーダー(大学生)が誕生したのである。
 以上は一つの活動事例で、その他にもさまざまな取組みがあるが、宇宙の多彩な活動を通じて子どもたちや多くの皆さんに、空気のように身近に”科学・技術する心”を滋養して貰いたい。
 私の「手創りの宇宙開発の実践活動」については、個人ホームページ(インターネット博覧会個人参加パビリオン)、
http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/inpaku.html
をご高覧いただければ幸甚である。
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New!
「SAC基本戦略部会報告書(案)-我が国の宇宙開発の中長期戦略について」
                    への意見具申と結果
 掲題に関する意見具申に対し、一部意見の反映を含めた報告書が取りまとめられました。
報告書などのリンク先:
 ● 宇宙開発委員会−旧宇宙開発委員会基本戦略部会−報告書および意見公募の結果

以下、意見抜粋(00/11/25 & 00/09/29)

宇宙開発委員会
意見募集担当課 御中
                                                  平成12年11月25日
                                                  白子 悟朗 (技術士)

 21世紀は宇宙時代との思い入れを持つ国民の一人として、宇宙開発委員会・基本戦略部会「報告書(案)」 に対する公開意見募集に、下記に意見具申させていただきますのでご高配いただければ幸いと存じます。

意見具申の背景:
私は日本/世界の宇宙開発の黎明期から現在まで、進歩・発展の現場で挑戦・緊張・感動の機会に恵まれ た者として、次の世代に宇宙開発をバトンタッチ出来るようライフワークの「手創りの宇宙開発」の草の根実践 を心掛けています。
 具体的には、技術士(航空・宇宙部門登録)活動や日本宇宙少年団活動(わたらせ分団リーダー、広報ボラ ンティア)や地域コミュニティー・児童館・大学講座等での宇宙の話や実験指導、アマチュア無線衛星愛好家 グループの支援他、宇宙開発啓蒙の個人ホームページ;URLは、
http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/
の出版などです。
活動の事例は上記個人ホームページをご高覧いただければ幸いです。


意見-1
:該当個所(全体)
概要:
 本報告書(案)が我が国の宇宙政策として、国民に理解され、応援者(支持者)になって貰える政策内容・読 み物になっているためには、我が国が目指す将来のビジョンが打ち出されていることが肝要と考えます。


意見及び理由:
1.国民にとっての21世紀宇宙時代のビジョンが描けているでしょうか?。また、将来計画を実現するため の意志(決意)、すなわち意志未来が描けているでしょうか。ビジュアル(時間軸を加味した図・表)な表現を含 め、より希望があるビジョンに立脚・・・言い換えれば、我が国が目指す重点開発対象を明確にした報告書 に仕上がることを期待します。
 例えば、第2章の目的と方向に加える・・・2.4.我が国が目指す宇宙開発の目標、 ここでは、第8章の今後のマイルストーンの前提ビジョンを示す。
2.宇宙開発・技術開発・技術革新の基本意識は、”社会の安全(地球・人類の安全)”に還元および帰着することであると考えます。これらを前提にした報告書になることを期待します。

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意見-2
:該当個所(前文)
概要:
3.本報告書の位置付け(7頁)
「我が国宇宙開発が、新たな行政体制において一元化された整合性ある政策立案のもとに実行されることを期待する」主旨の表記を具申します。

意見及び理由:
 国民にとって新たな行政体制の上で我が国の宇宙開発がどのように舵取りされるのか全く判らないと云っても過言でないのが現状です。貴重な財源を有効に活用するためには縦割り行政の弊害や無責任行政の排除を解決しなければならないと思います。そのためには我が国宇宙開発の”一元化”された政策立案実行が不可欠です。過日、官邸に本件について意見具申をし、内閣総理大臣から意見具申書を受け取ったことや国民の意見を聞くことをモットーにしていると返事は頂いたものの、どのように検討していくのかの考えはいただけませんでした。

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意見-3
:該当個所(1章)
概要:
1.2.宇宙開発の意義
(3)先端技術を開拓する(9頁)
 宇宙開発での先端的技術の成果が「地上技術への先駆となり、広く普及することを期待する」主旨の表記を具申します。

意見及び理由:
 新たな産業創出の可能性以前に、宇宙開発の先端的技術の成果のスピンオフ(技術移転を含む)を積極的に実行すると共に社会にアピールすることが肝要と考えます。

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意見-4
:該当個所(2章)
概要:
2.1.先端科学技術に挑戦し人類の将来につながる知見を獲得する(10頁)
「・・・、宇宙開発に関連した小型化・”軽量化”、高機能化・・・」のように”軽量化”の追記を具申します。

意見及び理由:
 広義には、”軽量化”は小型化の中に含めることは出来ないでもありませんが打上げコスト低減等の観点からも、軽量化への挑戦は別出しの技術と考えます。

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意見-5
:該当個所(2章)
概要:
2.2.社会への貢献を果たす及び2.3.宇宙活動基盤の強化を目指す(10、11頁)
技術のあり方を”安全”のためと位置付けると、「宇宙を国民生活の”質向上と安全”→”安全と質向上”のために・・」「・・・一層洗練し、”高い信頼性、安全性”→”安全性、高い信頼性”」のように入れ換えることを具申します。


意見及び理由:
 宇宙開発・技術開発・技術革新の基本意識は、前出・意見-1でも具申しました”社会の安全(地球・人類の安全)”に還元および帰着することであると考えます。
これらを前提にした報告書になることを期待します。

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意見-6
:該当個所(3章)
概要:
3.1.社会との調和のある宇宙開発(12頁)
教育・広報などは国民の世代層に合わせた啓蒙や地域格差是正の推進を盛り込むことを具申します。

意見及び理由:
例えば、インターネット等による情報公開(提供)は、子供向け、一般向け、専門家向けなどの層毎に整備する必要があります。また、物を見て貰う以上に、宇宙開発に係わっている人との触れ合いは刺激や感動を直接共有出来るため若い技術者/研究者を含めた宇宙開発関係者が自分のためにも広報をの意識と行動が出来る仕組みを持つことによって、国民と宇宙技術者/研究者の双方が宇宙開発への意識を活性化すると考えます。さらに啓蒙活動の拠点は、都市部偏重から地方拡大/分散も一法と思えます。地方活動では子供と親が密着している傾向が多く見られ、啓蒙効果の拡大につながると考えます。

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意見-7
:該当個所(3章)
概要:
3.2.宇宙開発人材(13頁)
プロジェクトマネージャの計画的育成等・・・は、具体的に”・・・教育・訓練などを含めた計画的育成”と表記する事。および教育現場等に対して宇宙実証機会の提供を表記することを具申します。

意見及び理由:
 プロジェクトを統括する(束ねる)、いわゆるプロジェクトマネージャーは、経験豊富で、広い見識を持つ人材を配置する必要があります。そのための人材育成には、技術者倫理の教育を含めた教育・訓練制度や資格制度等の導入を図ることが肝要と考えます
 宇宙開発機関の教育プログラムの支援の一つに宇宙実証機会の提供が必須です。教育現場に限らずピギィーバック等での小型衛星の打ち上げ機会が必ず巡ってくることが明らかになれば小型衛星等宇宙機器の製作にも積極的になると考えられます。いつでも打ち上げ希望の持ち込みを可能にし、そのストックが出来るようなシステム(登録制と仮称)が出来れば余剰等の打ち上げ機会が出来る毎にストックの順番に打ち上げられるプロセスが出来、活性化出来ると考えます。

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意見-8
:該当個所(5章)
概要:
5.1.変化する社会経済状況への対応(16頁)
”少量生産”→ ”手作りに近い一品生産”に統一することを具申します。

意見及び理由:
5頁の(2)技術上の課題の顕在化に、宇宙開発の生産技術の表現を”手作りに近い一品生産”としていますので整合させてはいかがでしょうか。

-----------------
意見-9
:該当個所(5章)
概要:
5.2.国の役割(16頁)
民間活動のリスク低減に必要な・・・経済環境条件(法制度、財政、税制等)・・・、に”(・・・契約方法・・・)”を加えることを具申します。

意見及び理由:
技術開発リスクの多い宇宙開発において、現行の契約方法は国/民間ともに実状に即していないことから派生す課題を抱えていると考えられます。特に契約者履行リスクの高い固定価格契約(上限付き概算契約を含む)のみが主流の我が国の現契約方法では確実・適正な技術開発を推進する時の障害になっていると言えます。透明性・公平性ある契約方法の整備が急務で、原価補償契約を含む契約方法の整備を具申します。

-----------------
意見-10
:該当個所(8章)
概要:
第8章 今後のマイルストーン(23頁以降)
前出、意見?1との関連で、我が国宇宙開発の将来ビジョンに立脚したマイルストーンとなることが肝要と考えます。また現政策大綱等とのリンケージの明確化も必要と考えます。

意見及び理由:
例えば、現宇宙開発政策大綱および将来ビジョンにおいて目標/実行計画とされた・一過性でない月探査(月面天文台を含む)・軌道上研究所と位置づけた「きぼう」・軌道上実証の重要性から端を発した中小型衛星等によるミッション実証の実施:MDSシリーズ等々、具体的にトレンド出来る事項の継続的明記が有ってよいのではないでしょうか?

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宇宙開発委員会基本戦略部会
事務局 殿
                                                 2000-09-29
                                                 技術士(航空・宇宙部門)
                                                 白子 悟朗
前略

平素の皆様方のご活躍に敬意を表します。
宇宙開発に思い入れを持つ国民の一人として、基本戦略部会で公開議論されました「国民の理解と支持の増進、人材の養成」につきまして、下記に断片的では有りますが一言具申させていただきますのでご高覧、ご配慮いただければ幸いと存じます。


1.意見具申の背景
私は日本/世界の宇宙開発の黎明期から現在まで、進歩・発展の現場で挑戦・緊張・感動の機会に恵まれた者として、ライフワークの「手創りの宇宙開発」の草の根実践を心掛けています。
具体的には、日本宇宙少年団活動(わたらせ分団リーダー、広報ボランティア)や地域コミュニティー・児童館・大学公開/教養講座での宇宙の話や実験指導、アマチュア無線衛星愛好家グループの支援他、宇宙開発啓蒙の個人ホームページ:宇宙をもっと身近に!、URLは
http://www2s.biglobe.ne.jp/~gshirako/
の出版などです。

2.私の草の根「手創りの宇宙開発の実践」の基本姿勢
・手弁当で宇宙開発啓蒙の出前
・青少年や学生および市民の目線で共に楽しみ、遊ぶ
・継続

3.NASDA等の若い宇宙技術者/研究者の宇宙開発啓蒙活動の事例
・日本宇宙少年団分団等運営:分団長やリーダー
・宇宙の日などの施設公開での説明員
・宇宙月間中の学校訪問講座
・アマチュア無線衛星等活動への参加
などに積極的に参加していますが、一層の拡大が期待されます。

4.具申・提言など
4.1 広報等
1)広報の視点
・物を見て貰う以上に、宇宙開発に係わっている人との触れ合いによっ て刺激や感動を共有。
・広報は「人」、限られた人気者や有名人の登用から、若い技術者/研究者を含めた宇宙開発関係者が自分のためにも広報をの意識と行動が出来る仕組み(技術者/研究者へのインセンティブ)を持つことによって、市民と宇宙技術者/研究者の双方にメリット。
・イベント指向(一過性)から、日常的/恒常的へ。

2)拠点
・都市部偏重から地方拡大/分散へ:
 地方活動では子供と親が密着している傾向が多く見られ、広報効果の拡大につながると考えます。

3)活用できる情報・教材等
インターネットでの情報提供も一法ですが、
・日本宇宙少年団月刊機関誌「L5」は大人が読んでも判り易く、書店などでの広く公開されることが望まれます。特に年少者にとっては紙レベルの教材は手元で繰り返し見られる効用は高いと考えます。
・また、その内容の再利用としてマスメディアへの提供によって、難解な記事等の活性化にもつながると考えます。

4.2 大学等教育現場ほかの活性化
1)教育者自らが手を汚すことが肝要でしょう。
・学生達は先生の後ろ姿をみています。
・ロボコンは目の前で短期に結果がでますが、宇宙への挑戦は長期の情熱と仕組み/マネジメントが必要です。
・衛星設計コンテストをCGコンテストに終わらせない方策は?

2)市民との触れ合い教育
・芝浦工大・公開テクノカレッジ等、生涯教育へのアプローチ。
 「宇宙への旅」は今年10月開講/NASDA協力とのこと。
・放送大学での取り上げ。

3)小型衛星等の打ち上げの活性化策
・教育現場に限らず、アマチュア衛星愛好家(世界の)などは打ち上げ機会が必ず巡ってくることが明らかになれば小型衛星等宇宙機器の製作にも積極的になると考えられます。
・いつでも打ち上げ希望の持ち込みを可能にし、そのストックが出来るようになれば、余剰等の打ち上げ機会が出来る毎にストックの順番に打ち上げられると言ったプロセスが出来、活性化出来ると考えます。
これは上記、衛星コンテストの活性化にもなります。
以上

Update!
 宇宙開発は謙虚に!大胆に!!('00/2/8)
毎日新聞・2000年2月8日(火)朝刊−オピニオンワイド・みんなの広場−掲載文を転記('00/2/13)

”宇宙開発は謙虚に!そして大胆に!!” 技術士 白子 悟朗 61 東京都目黒区

「21世紀は宇宙時代」との思い入れで、わが国宇宙開発に応援メッセージを送りたい。
 通信、地球観測や宇宙科学など、人類にとって宇宙技術は不可欠。国力としても宇宙開発と宇宙産業は不可分関係で、先端的・継続的な努力が必要である。さらに21世紀の主人公である子供たちに宇宙時代実現の夢を託すためにも宇宙開発を謙虚に、かつ大胆に進めたい。
 宇宙システムではH-IIロケット打ち上げ連続失敗のように、すべてが一瞬で無に帰する。謙虚にその教訓を生かすのが世に応える唯一の道である。併せて効率化・原価低減の限界を誤認することは手抜きにつながる。携わる者が、愛着と使命感をもってヤル気を出せる環境づくりと”やることはきちんと、だめなものはだめ”などの倫理観の自覚が求められる。
 そして、国民・社会の声を反映した大胆な宇宙ビジョンを得意な技術・分野で立案・実行することが宇宙文化創造につながる。
New!00/04/12
 
★ 皆さんからのご意見・反響等を要約
   ・国民理解は本音、リスクのアピール努力が必要
   ・国の技術開発とは何かを常に追求せよ
   ・連続失敗.物作りの軽視の風潮,が根底では製造技術上の問題を懸念.技能のソフト化急務
   ・宇宙の規模になると,馴れ合いでは済まない

 宇宙放送局構想:宇宙から地球を見る−現状と展望−('96/3)
1. 宇宙から地球を見る意義
地球をリアルタイム、動的に眺める事で、地球との関わりの深さを実感する
環境・人種・政治問題などを、国境のない地球を眺めながら考えられる
子供達に興味と教育的理解を与える
学術・興行的にも利用できる
人類共通の映像を世界に先駆けて得る

2. 宇宙からの地球映像取得
 2.1 地球映像取得の現状
*動映像取得
 −ミ−ル:通常TV並
 −シャトル:同上
 −ステ−ション:同上、2000年以降
 −周回気象・地球観測衛星・偵察衛星:画像処理後配信
 −ロケットカメラ 
 −構想:月探査他
*静止画像取得
 −静止気象衛星
 −技術試験衛星:ETS-6、ETS-7、SFU
 −科学衛星
 −アマチュア無線衛星

3. EARTH VIEW 構想
 3.1 EARTH VIEW シナリオ
*宇宙漫歩(現在〜2000年頃)
 :既存システムの利用
 :小型衛星によるカメラミッション実証
 :シャトル、ミ-ルへのHDTVカメラの搭載
*宇宙実況放送(2000年以降)
 :宇宙ステ-ション等からの随時放送
*月圏放送(2000年以降)
 :月衛星、実験着陸機からの放送
 :HDTV放送(他惑星等の撮影を含む)

 3.2 システムイメ−ジ(工事中)
  
 
 3.3 システム構成
ケ−ス1:
*静止軌道上等から地球/月を眺める
 :カメラの開発+実証衛星バス
 :気象観測用の先行開発/HDTVの先取り
ケ−ス2:
 :低中高度周回軌道上から地球を眺める
 :NTSCカメラ/HDTVカメラ+小型衛星
 :カメラは既存/汎用カメラの宇宙用実証
ケ−ス3:
 :シャトル、宇宙ステ-ションから地球を眺める
 :既設カメラ活用+HDTVカメラの持ち込み
ケ−ス4:
 :運用・開発中衛星の映像利活用
 :ひまわり映像、ETS-7視覚系映像
 :繊細度、臨場感が不足?(静止画)
                                                                    [トップに戻る] 

 21世紀・人類繁栄のための「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」('94/3)
     注:寄稿文より一部削除('99/4)
1. はじめに
 宇宙から帰還したユ−リ−・ガガ−リンの「地球は青かった」のメッセ−ジは、宇宙と地球と人類が一体であることを表現した感動的なものであった。しかし、30余年たった今考えるに、地球自身が、失われて行こうとしている青い地球の輝きの大切さを人類に向けて訴えかけたのではなかったかとも考えさせられる。
 この20年程の間に人類の経済活動の拡大が主要因となって地球環境は急速に悪化した。更にこのまま放置し続ければ、21世紀中にも人類の生存が脅かされる事にも成りかねないとさへ言われている。
 21世紀を間近にした我々は地球環境の保全と人類の発展の両立を目指し、社会の仕組み・生活様式の変革、技術、資金の支援を国際協調により、早急に克服する計画を持たなければならない。その一つとして、人類が手中にした宇宙開発技術をより進歩させながら駆使して、この地球環境問題を克服する糸口をつかむことが可能と考える。
 そして、わが国も世界の宇宙開発先進国と協調して取り組むために、宇宙開発・長期ビジョンの中で地球の存続に貢献する施策を速やかに示す必要があると考える。
 

2. 21世紀・人類繁栄のための試練
 多くの科学者は、「今のままで行くと21世紀中には地球は資源の制約と環境破壊で滅びるであろう。持続的な成長は不可能であろう」と推論し、警告している。
 そして、その限界を越える方法も挙げられている。一つは、物質の消費と人口増加を抑制し、人口爆発を防止する事である。二つ目は、原料やエネルギ−利用の効率化(省エネルギ−)である。これらの課題は先進諸国では問題の重視と地球温暖化・代替エネルギ−・森林保護等の対策が段階的に講じられ始めているが開発途上国を含めた全地球規模での施策は未だないと言って過言でない。特に人口抑制が課題解決の最大の鍵であると考えると科学技術での効用を全面的に期待する訳には行かず、又、大変時間の掛かることを認識しなければならないが避けては居られないことである。
 そこで、この気の遠くなる様でいて、早急に着手すべき課題に対して、宇宙的観点からの一つの具体的方策の提言をしたい。即ち、地球上の全人類(家族)の地位と経済力の向上(意識・能力の向上と生活水準の向上)が必要である。言い方を替えれば人類社会の平等な高度化、地球規模で環境情報の共有化が出来る高度情報化社会の実現化推進が不可欠であると考える。
  その為に宇宙開発技術を駆使した情報通信のネットワ−クを構築し、地球環境の諸問題解決の情報基幹を確保すると共に、併せて人類の社会活動が宇宙に展開する基盤をも得ようと提言するものである。
 例えば、宇宙通信の広域性・同報性、パ−ソナル性を生かし、技術試験衛星「ETS−V(きく5号)」の後期利用プログラムの「パ−トナ−ズ計画」に代表される教育・医療等の国際貢献活動の本格的運用や、VSAT(Very Small Aperture Terminal)・SNG(Satellite News Gathering)等の最新の通信システムを、開発途上諸国に広範に投入し、教育・医療に関する情報交流や啓蒙・普及、そして、地球観測・宇宙科学分野で得られた地球環境に関わる情報の利用を促進することは技術的には今すぐにでも実行可能なことである。
 図−1は地球環境の変革と宇宙情報通信ネットワ−クの必要性を概念的に示す。
         

3. 「宇宙開発・長期ビジョン」の考え方
 人類が人工天体「スプ−トニク」を手中にしてから36年余、宇宙開発技術は人類の一体感の醸成、科学技術の高度化、社会生活の向上に大きく貢献してきたばかりでなく、近年のロシアの「ミ−ル宇宙船での人間の長期間宇宙滞在」、米国の「スペ−スシャトルによる宇宙空間での高度作業の遂行」などの成果は、21世紀は宇宙時代に成り得ると予測できるまでに至った。さらに前述したように、宇宙開発は地球環境問題の克服の重要な手段の一つとして、また、今まで以上に人類の知的探求心を満たし、夢を与えると確信する。
 わが国もこれら宇宙開発先進国に伍して行けるよう人工衛星、ロケットを自前の技術により製造出来るまでになったが、国際貢献・協力を前提にした宇宙開発施策の設定・促進や有人宇宙活動の技術、産業面でも競争力ある独自技術の確保には長期ビジョン的視野で継続的な自助努力が必要である。図−2に宇宙開発の展開の概要を示す。
           
 21世紀を見据えた、わが国独自の宇宙開発の道は、「宇宙開発政策大綱の改定」を前提に宇宙開発委員会長期ビジョン懇談会で審議されている所であるが私見を加味して挙げれば次のように纏められる。
 ・地球環境変革を視点にした国際貢献:
   宇宙からの環境監視による保全
   宇宙情報通信による社会発展の促進
   宇宙開発技術による代替エネルギ−確保
 ・国際貢献のための独自技術の継続的開発
 ・地球圏宇宙での人類の本格的活動方針設定
 ・人類の知的探求心と夢の実現推進
これらの宇宙開発・利用活動を拡大、高度・多様化させるための共通的基盤システムを宇宙インフラストラクチャと位置づけると、1つは輸送手段、2つに情報伝達手段の構築が21世紀に向けた宇宙開発として不可分になる。
 輸送手段については、わが国は全段自主技術によるH−IIの打ち上げに成功し、無人往還機の開発もスタ−トした。欧米・ロシアにも多種多様な輸送手段の確保が推進されているので、利用分野のニ−ズ対応、および、拡大は国際的な分担・協力が産業面からみても可能なレベルに到達しつつあると考える。
  一方、情報伝達手段は、通信・放送分野で商業化が、スペ−スシャトル・ミ−ル宇宙船の支援通信システムとして衛星間通信システムが限定運用されているが地球環境課題を共通的視点で捉えた地球規模の情報通信ネットワ−クは実現に至っていない。
 わが国の先端的情報通信技術は宇宙開発を含めて欧米に伍して着実に技術力をつけてきた分野であり、技術力により国際貢献出来る希少な分野である。さらに、地上を含めた情報通信技術の進歩は顕著で常に先端の水準を指向して独自技術を確保・確立しなければならない分野でもある。
 また、宇宙通信技術は情報通信ネットワ−クの基盤整備手段として光ファイバ−通信技術と融合・共存してネットワ−クの高度化に寄与するが、宇宙通信の有意性として、ボ−ダレス化(広域・同報性)・迅速性・耐災害の対応、人類の宇宙活動展開には不可欠な要素技術である。
 以上の背景から、わが国が宇宙開発を含めて人類の21世紀の繁栄に貢献できる長期ビジョンとして「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」を次の方針設定を持って取り上げることを提言したい。
 ・高度情報化で社会の広域化・協同化を促進し、人類共同の環境対策を加速。
 ・宇宙通信技術により開発途上国の通信網拡充を図り、教育・医療の啓蒙・普及を加速。
 ・観測技術を駆使した地球監視システム実現。
 ・人類の地球圏宇宙活動、月面活動(宇宙科学観測、3He採取他)、惑星探査のニ−ズに対応する。
 ・わが国は世界に「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」を呼びかけ組織化すると共に、アジア・太平洋圏を主
  導する。
 ・関連技術開発を継続的に推進し、産業化を促進。
 

4. 「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」提言
  21世紀・人類繁栄のための「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」の提言の構想要旨を述べる。
 図−3にネットワ−クのイメ−ジを示す。構想の展開としては、はじめに地球環境対応、そして人類の宇宙活動展開と2段階を設定し、宇宙インフラストラクチャとして整備する
                       
 地球環境対応は、地球上に速やかに、かつ広範に宇宙技術による情報通信ネットワ−クを構築し、特に開発途上国に対する教育・医療・社会情報の高度化で社会発展の促進と、宇宙からの地球環境監視で得られたデ−タや利用デ−タを環境保全・資源探査活動に活用する。
 人類の宇宙活動展開には、安全性が高く、拡張性・自在性のある情報通信ネットワ−クを構築することで宇宙ステ−ション/宇宙工場/月面探査/月基地の建設・運用、惑星探査等を可能にし宇宙での本格的活動と知的探求心や夢の実現に寄与する。
 図−4は「宇宙情報通信ネットワ−ク」の主要な構成システム、要素技術を抽出した構築シナリオである。この遠大な構想を実現するためには国際協力、既存宇宙開発技術の活用は勿論、新技術の開発そして産業化への展開の仕組み作りと、一貫した組織体制が不可欠である。
        
 さらに本提言を国際舞台で論じるには、わが国のスタンスとして、
 ・わが国は自立した情報通信国家を目指す。
 ・その上で国際的な役割分担としてアジア・太平洋地域の主導を担う。
 ・主導的立場の堅持には、わが国宇宙開発の牽引技術である衛星通信技術、世界のトップレベルに位置づ
  けられる情報通信技術をより高度化する。
 ・その為に情報通信メディア、技術の開発・開放ならびに産業化の促進を展開する。
等を具体的、かつ明確に示さなければならない。

5. あとがき
 提言した「宇宙情報通信ネットワ−クの構築」が、わが国の得意技術をもって地球環境に貢献し、さらには人類の宇宙活動への「夢」を実現に結び付ける地球規模の21世紀インフラストラクチャ−の一つとして、国民や世界の理解を得られる「今、何で宇宙か!」の答えの一つになると信じる。
 現在、わが国宇宙開発の道しるべである「宇宙開発政策大綱」改訂に関わる作業が行われている。本提言の主旨が反映されることを期待したい。さらに、一日も早く具体的行動を起こし国際貢献と宇宙産業界の発展に寄与する事を願ってやまない。

謝辞
  本文を纏めるにあたっては、平成5年10月から平成6年2月の間開催された日本航空宇宙工業会のブレンスト−ミング「今、何で宇宙か!」メンバ−、ほか多くの皆さんの協力を得た。また、後述する貴重な文献を参考にさせて頂いた。深謝。

参考文献
 :日本経済新聞(朝刊)第二部「環境と発展」1993-11-26
  :住生総研レポ−ト「豊かな地球環境とエネルギ−」1993-7
 :日本航空宇宙工業会「平成4年度宇宙産業の将来展望に関する調査報告書」1993-5
 :科技庁「宇宙開発 ハンドブック '91」経団連
  :宇宙先端「宇宙開発の予測」MAR.1990
 :宇宙先端「宇宙船地球号/2020年」JUN'92
  :PROMETHEUS「未来の衛星開発構想」1992-1
  :NEC技報「NECの宇宙開発の歴史」NO4.'88
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