学術出版と学術コミュニケーション−アーカイブ(2001年12月)

2001年12月24日

2001年12月21日付けの"The Chronicle of Higher Education"の記事
フリー・オンライン科学雑誌出版社、著者に「出版料」を課金(ジェフリー・R・ヤング)
[抄訳]
 インターネット上で科学雑誌を無料提供するオンライン出版社が、論文の出版料として著者に500ドルの課金を開始すると今週発表した。この出版社であるBioMed Centralは、他のオンライン出版者もこれに同調することを望んでいると述べている。また、学内の教官たちの論文を無料でアクセスできるオンライン・フォーラムで公開するために、その料金を大学が支払うのが当たり前になる日も近いと語っている。
 非営利的雑誌のいくつかは、これまで印刷版雑誌に論文を発表するための「ページ・チャージ」を著者に課してきたが、オンライン雑誌では異例の措置である。
 来年1月1日から、BioMed Centralは、同社の査読誌に受理された論文の著者のほとんどに、「出版料(processing charge)」と呼ばれる料金を課する予定である。途上国の研究者や出版料を払うことができない研究者には、支払いを強要しない、とBioMed Centralの出版者であるジャン・ヴェルテロプ(Jan Velterop)は語っている。
 この創立1周年を迎える出版社は、伝統的な学術出版社に対する代替出版社として自らの地位を築いてきた。ヴェルテロプ氏は、伝統的出版社を購読者に対して「望むままの購読料を押しつけることができる」独占企業と呼んで批判しているが、今やBioMed Centralも50以上のオンライン・ジャーナルを刊行するに至り、経費を回収し、さらには将来的に利益を上げるための新たな手段を模索し始めている。
 「われわれは、読者は無料で論文情報を利用できるべきであると確信している」とヴェルテロプ氏は語る。「しかし、われわれも空気だけを食べて生きていけるわけではない。なにがしかの収入が必要である。」
 ほとんどの学術雑誌がこうした出版料を徴収していないなかで、なぜ研究者はこの新興会社に出版料を支払わなければならないのか。ヴェルテロプ氏は、その理由のひとつとして、無料のオンライン・ジャーナルに論文を発表することにより、著者は自らの業績をより広範囲に配信することができることを挙げている。
 「われわれのシステムで出版すれば、伝統的なシステムで出版するよりも、潜在的な論文の読者層は拡大する」と彼は加えている。BioMed Centralが刊行したいくつかの論文は、著者はせいぜい一握りの読者を獲得できればよいと考えていたにもかかわらず、数千の読者によって利用されたという。
 ヴェルテロプ氏はまた、著者たちが伝統的な学術出版システムに反旗を翻し、BioMed Centralに論文を投稿してくれることを期待していると語る。29,000名以上の研究者が、Public Library of Scienceの請願書に署名し、学術出版社のすべてに対して論文情報を無料でオンライン公開することを要求している。
 たとえそうであっても、ヴェルテロプ氏は出版料制度が開始された後は、すくなくとも暫くの間は、おそらくBioMed Centralの雑誌への投稿は減少するであろうと予測している。
 「当初は投稿数の低下はいたしかたないと考えている」と彼は述べる。しかしながら、長い目で見れば、「図書館や大学がこのアイデアを理解してくれると期待している。」そして著者に代わって出版料の支払いを引き受けてくれるであろう、とヴェルテロプ氏は語る。
 BioMed Centralの最終目標は、学術出版システム全体を変えることにある。新しいシステムでは、雑誌を運営するための管理コストは、著者が前払いし、読者は誰でも自由に論文を利用できるようになる。伝統的なシステム下では、営利的雑誌を支えるために大学が購読料を支払い、購読者のみが論文にアクセスすることが許される。
 新設される出版料の支払いを大学に促すために、BioMed Centralは大学会員制度の導入も計画している。会員になった大学のすべての教官や学生は、BioMed Centralに無料で論文を投稿することができるという制度である。年会費は小規模大学で1,500ドル、大規模大学で10,000ドルに設定される予定である。
 しかし、BioMed Centralの哲学に共感する研究者のなかにも、新たな出版料には反対の意見を表明するものもいる。
 BioMed Centralが主催したオンライン・ディスカッションにおいて、何人かの教官は、国立科学財団(National Science Foundation)といった公的財団が、個人著者が出版料を負担しなくても済むように、助成金によって無料のオンライン・ジャーナルを支援すべきである、と述べている。
 「出版コストは、研究財団が全面的に負担すべきである。」とコロラド大学ボールダー校分子細胞発生生物学教授のマーク・ダビン(Mark Dublin)は記す。「全ての研究者が平等に恩恵を蒙ることができるようにすべきである。」
 英国サウサンプトン大学認知科学教授であり、オンライン・ジャーナルへの無料アクセスの支持者であるステヴァン・ハーナッド(Stevan Harnad)は、インタービューに応じて、BioMed Centralは「フライング」をおかしていると語っている。
 「新雑誌は既存の評価の確立した雑誌から著者を引き離すことによって、既に問題を引き起こしている。今また、著者への課金を推進することによって、自ら災いを招きつつある。」とハーナッドは述べる。
 ハーナッド氏は語る。オンライン・ジャーナルの著者課金は、既存の出版システムが解体され、図書館が雑誌購読料を節約できた時点で、はじめて意味をなすものもとなる。ここ数年間、着実にこうした体制が生まれつつあるのだから、いましばらく自重すべきであろう。

2001年12月22日

2001年12月20日付け、BioMed Centralプレスリリースより

「BioMed Central、大学会員制によるオープン・アクセス計画を発表」

生物医学分野の研究成果へのオープン・アクセスの経費を回収するための新計画が、BioMed Centralによって2001年(ママ)1月1日に開始される。査読研究論文への無料アクセスを標榜するBioMed Centralは、出版コストを個人から大学に転換する会員計画の導入を進めている。

BioMed Centralのビジネス・モデルは、全てのオリジナル研究論文は無料で利用できるようにすべきであり、他の出版社による購読料の賦課は科学コミュニケーションにダメージを与えているという2重の前提に基づいている。出版コストを回収するために、BioMed Centralは1出版論文につき500ドルの出版料を著者に課する予定である(支払いが困難な研究者には免除)。

しかしながら、出版料はどうしても個人研究者にとって重荷になるので、この負担を取り除くために、BioMed Centalは会員登録するよう大学に呼びかけている。会員になることによって、大学に属する全ての研究スタッフ及び学生は、BioMed Centralが現在刊行している約60タイトルの雑誌に論文を無制限に投稿することができるようになる。また会員になると、Faculty of 1000Images.MDといったBioMed Centalの有料サービスを15%引きで利用できるという特典も付いてくる。さらには、大学で生産された必要な論文の抄録を、どの雑誌に刊行されたかに関わらず、全てBioMed Centralのウェブサイト上の顧客ページに掲載することもできる。ここに掲載された抄録はBioMed Centalウェブサイト上での検索の対象となり、フルテキストが大学自身のサーバやプロキシサーバ上で利用できる場合は、全文情報へのリンクも提供される。年会費は大学の規模に応じて、3,000ドルから10,000ドルになる予定である。

図書館員は、大学会員制というアイデアに肯定的な反応を示している。図書館員は、著者に対する出版料によって出版経費をカバーするモデルの方が、うなぎのぼりの購読料上昇よりもましであると認めている。ウィスコンシン・マジソン大学図書館長であるケン・フレイジャー(Ken Frazier)は、「ウィスコンシン・マジソン大学図書館は、大学の教官や研究者に代わって出版料を支払うつもりである。われわれはBioMed Centralの貴重な事業に敬意を表したい。」と語っている。

BioMed Centralのパブリッシャーであるジャン・ヴェルテロプ(Jan Velterop)によれば、「大学会員制度は科学コミュニケーションのプロセスを変えることになるだろう。それは出版プロセスの経費を前払いすることによって、査読済み科学論文へのオープンなアクセスを可能にするにちがいない。全世界に向けた研究成果の無料配信という望ましい成果をもたらしてくれるだろう。」

2002年の年会費は以下のとおりである。

超小型大学(正規構成員数20-500名)1,500ドル
小型大学(正規構成員数501-1500名)3,000ドル
中型大学(正規構成員数1501-2500名)4,500ドル
大型大学(正規構成員数2501-5000名)6,000ドル
超大型大学(正規構成員数5000名以上)7,500ドル

BioMed Centralは、生物医学分野の査読済み研究成果へのフリーアクセスを提供することを公約する、独立したオンライン出版社である。この公約は、研究成果へのオープン・アクセスは科学の遅延無き効率的なコミュニケーションにとって不可欠な要素であるとの考え方に基づくものである。無料でアクセスできる研究成果に加えて、BioMed Centralは、レビューやその他の購読ベースのコンテンツも出版している。

2001年12月21日

11月29日付けのプレスリリースによると、Academic Pressの雑誌論文がScirusを通じて検索可能になったとのこと。
「開放型電子図書館建設のためのフレームワーク」
Suleman, Hussein ; Fox, Edward A. A Framework for Building Open Digital Libraries. D-Lib Magazine. 7(12), (2001.12)
[抄録] 電子図書館は、伝統的に、図書館学、コンピュータサイエンス、及びネットワーク情報システムの交差点に位置してきた。これら3つの分野に内在する基本理念の相違が、電子図書館の発展に不安定な影響を及ぼしている。図書館学はかなり成熟した分野であるが、一方、ネットワーク情報システムは、イインターネットの革新と歩調を合わせ、不断に進展を続けている。というわけで、電子図書館は、驚くべきスピードで発展する数々の標準をサポートしつつ、図書館による慎重な管理運営を実証する場と考えられている。こうした構造的に揺れ動く目標をめざしているが故に、全ての電子図書館が遅かれ早かれそのライフ・サイクルのなかで困難な状況に直面する運命にあり、それに効果的に対処する方はほとんど見当たらない。さらに、データ交換とサービス協調のレベルで相互に利用できるシステムを望む声が、この問題を一層悪化させることになる。こうした相互利用性を確立するには、Dublin Core Metadata Element SetOpen Archives Initiativeメタデータ・ハーベスティング・プロトコル(OAI-MHP)のような標準の策定を必要とする。これらの標準は、電子図書館コミュニティのなかである程度の成功を収めてきた。その理由は、いずれも一般性と単純性を備えて標準だからである。この教訓を活かし、本稿で紹介するプロジェクトは、拡張性を持った電子図書館建設のための構成要素のフレームワーク基盤を形作るために、相互利用性に向けた周知の標準を整合性を保ったかたちで拡大することをめざしている。

2001年12月20日

Pinfield, Stephen. How Do Physicists Use an E-Print Archive?: Implications for Institutional E-Print Services. D-Lib Magazine. 7(12), (2001.12)
[抄録] 学術機関が運営するe-printサービスは、幅広い分野を横断するe-printsの利用を促進するための重要な方途となるであろうと言われてきた。しかしながら、今のところこの種のサービス例はほとんど存在していない。本稿は、物理学研究者がいかにしてarXiv(以前はロスアラモス研究所のXXXサービスとして知られていた)という主題ベースの確立されたe-printsサービスを利用しているかについて述べる。また、学術機関ベースの複合主題e-printsアーカイブに、この利用法を活用することができるかどうかについて論じる。技術的問題(ファイルフォーマット、利用者インターフェース設計)、管理の問題(投稿処理、管理スタッフ支援)、経済面の問題(設置と維持管理費用)、品質に関する問題(ピア・レビュー、品質管理基準)、政策問題(電子保存、コレクション構築標準)アカデミック問題(学術コミュニケーション文化、出版傾向)、法的問題(著作権、知的所有権)を含むいくつかのキーポイントを特定する。ノッティンガム大学(英国)における、学術機関ベースのe-printパイロット・サービス設立計画に触れながら、こうした問題点について論じる。この計画は、大学ベースのe-printsサービスを取りまく諸問題を調査するための実際的な手段として利用されている。とりわけ、ここで利用しているe-printsモデルが現実にはどの程度柔軟性を備えているか、また、このモデルを無理なく物理学以外の分野に適用することが可能かどうかについての展望を得るための、貴重な情報を提供してくれる。

2001年12月19日

MetaLibはイスラエルの情報システムベンダーであるEx Librisの新製品。MetaLibの中核をなしているのは、Universal GatewayとSFXと呼ばれている技術である。まず、Universal Gatewayは、さまざまなデータシンタックス(MARC、XML等)や通信プロトコル(Z39.50、HTTP等)によって提供される不均質なデータコレクション(データベース等)の統合検索を実現する。また、SFXを利用して、図書館は、文脈に応じたレファレンス・リンク環境を利用者に提供することができる。日本では、ユサコ株式会社が販売代理店となっている。
「情報管理」の最新号(2001.12)に、「新しい科学出版システムへの指針」と題されたShulenburger(カンザス大学プロボスト)の論文の翻訳が掲載されている。
[著者抄録] この論文は、雑誌価格の急騰と、それがもたらす図書館の雑誌購読キャンセル によって示される学術コミュニケーション崩壊の経済的原因を探求する。また、 提唱されているさまざまな救済策の大要を述べ、2000年3月に開催されたアリゾ ナ州のテンピーにおける会議での、学術コミュニケーションシステム提案にみら れる各要素について述べる。

2001年12月17日

Berkeley Electronic Press (bepress)がマクロ経済学に関するオンライン・ジャーナルを4誌創刊した。この4誌は当面無料で提供されるが、やがて有料化される予定。bepressは、価格については、経済学分野の雑誌の平均価格の少なくとも33%に抑えると確約している。
ebraryがWiley、Greenwood、及びPenguin Classics Libraryが刊行する科学、医学、ビジネス分野の電子図書(ebook)の提供を開始した。ebraryのebookは無料で閲覧、検索できるが、印刷は有料。
12月11日、Googleはusenet newsgroupsの世界初の完全なアーカイブを公開した。インターネット・アーカイブ社のWayback Machineによるウェブのアーカイブに匹敵するサービスであると言える。Googleのusenetアーカイブは、usenetが創設された1981年にまで遡って、7億以上のメッセージへのアクセスを提供している。
De Groote, Sandra L., Dorsch, Josephine L. Online journals: impact on print journal usage. Bulletin of the Medical Library Association. 89(4), pp. 372-378 (2001.10)
[要旨] オンライン・ジャーナルが印刷ジャーナルとILLの利用に与えた影響について調査を行った。結果は、オンライン・ジャーナルの導入以降、印刷ジャーナルの利用は目に見えて低下した。あるジャーナルが印刷版のみで刊行されているか、あるいはオンライン版と印刷版の両方で提供されているかの如何にかかわらず、この傾向は認められる。ILLの要求もまた、オンライン・ジャーナルの導入とともに、顕著な減少傾向を示している。この調査結果から、著者は、利用者は印刷ジャーナルよりもオンライン・ジャーナルへのアクセスを好んでおり、ジャーナルの論文を選択する際にも、質よりもむしろ利便性を重視している可能性があると結論づけている。
Chen, Frances L., Wrynn, Paul, Rieke, Judith L. Electronic journal access: how does it affect the print subscription price? Bulletin of the Medical Library Association. 89(4), pp. 363-371 (2001.10)
[要旨] この研究では、印刷ジャーナルの購読価格上昇率を利用できる電子アクセスのタイプ毎に調査した。アクセスのタイプは、印刷版と独立した価格付けの電子アクセス、印刷版に付随した「フリーオンライン」アクセス、及び統合サービスのなかでの電子アクセスの3つである。調査結果によれば、電子アクセスを伴う雑誌の印刷版価格は、電子版を提供していない雑誌を上回っている。印刷版の価格上昇率は、なんらかの電子アクセスが提供されている場合に、より高くなっている。また、統合サービスによる電子アクセスのタイプが、もっとも低い印刷版の価格上昇率を示しているが、各タイプ毎にかなりのばらつきが認められるので、電子アクセス付きの雑誌価格は、未だに試行錯誤の段階に留まっていると考えられる。この調査に現れた傾向が今後も続くかどうかについては、さらなる調査が必要である。

2001年12月16日

「オープン・アクセス・フォーラム(Open Access Forum)」が、11月19日に英国図書館にて開催された。発表者は、Herber Van de Sompel、Fred Friend、Fiona Godlee、Chris Zielinski。BioMed Centralのウェブサイトに、報告書が掲載されている。

2001年12月11日

Liblicenseが「途上国向け学術雑誌提供計画(Developing Nations Initiatives)」 サイトを開設した。

「今年になって、多くの組織が、高品質の査読付き学術雑誌を無料もしくは 低価格で途上国に配信することを目的としたプログラムを開始した。このサ イトでは、こうしたプログラムを特定し、リンクを提供する。」

2001年12月8日

Lugar, Lance and Thomes, Kate. Access to Scholarly Communication Information on ARL Member Library Websites. SPARC E-News, October-November 2001.

[抄訳]

ARL加盟館ウェブサイト上での学術コミュニケーション情報へのアクセス

この研究は、ARL加盟館123館のウェブサイト上で、学術コミュニケーション情報がどの程度提供されているかを調査した。学術コミュニケーションに関するページへの直接のリンクが存在しない場合には、サイト内サーチ機能を利用してウェブサイトの探索を行った。サイト内サーチ機能の際の検索語としては、"scholarly communication"を使用した。この用語は、ARLが学術コミュニケーションについての概念や問題について言及する際に、標準的に使用している言葉である。また、この研究の目標は、ARL加盟館のホームページ上で、学術コミュニケーションに関する適切な情報がいかに容易に発見できるかを評価することにあるので、単純な検索語による探索の方が目的に適っていると考えられた。探索は、2001年4月30日から6月30日の間に実施された。

調査結果を検討した結果、学術コミュニケーションの諸問題を利用者グループに提供するという点では、ARL加盟館はそのウェブ出版能力を十分には活用していないという事実が判明した。ARLは学術コミュニケーションに関わる問題の重要性を強調し、利用者と一般市民に対する報知活動において加盟館が積極的な役割を果たすことを要請している。図書館のウェブサイトを最大限に利用することが、有効な手段であることは明らかである。しかしながら、ホームページ上での情報提供において、この問題を優先事項として扱っているのは、加盟館全体のわずか4%の図書館にすぎなかった。

学術コミュニケーション・システムにおける変革の重要性を前提に考えれば、研究者や学生が、この議論に関与せざるを得ないような風土を作り出す手助けを図書館が行うことがことが肝要である。これらの利用者グループが、直感的に事の重要性を認識してくれるのを座して待つべきではない。

現時点で、国内的見地及び国際的な視野から、学術コミュニケーション問題の文脈と経緯を提供している強力なARL加盟館サイトがいくつか存在している。他の図書館は、ただ、こうしたサイトにリンクするだけでよい。後は、各大学で学術コミュニケーションの諸問題についての議論を喚起し、それを継続するだけである。図書館は、この取り組みにおいて主導的な役割を担うのに格好の立場に位置している。図書館員が教官や事務管理職と連携して、こうした問題が最優先課題であることを認識している大学のサイトが、最も効率的に機能しているウェブサイトのようだ。この協力関係がウェブサイトを立ち上げ、さらにはその後の継続的な情報の提供を可能とする原動力となっているらしい。

この調査結果を見る限りでは、ARL加盟館が積極的に利用者グループと学術コミュニケーション問題について議論しているという点について、疑問を抱かざるを得ない。図書館は果たして、ウェブサイトを利用者とのコミュニケーションの重要な手段として活用しているのか?調査結果は否定的な結論を示している。驚くべきは、学術コミュニケーションに関わる諸問題を提示するために、ウェブサイトを利用している図書館がほとんど存在していないという点である。すなわち、トップページから直接リンクされている学術コミュニケーションのページを開設しているのは、123館中わずかに6館にすぎない。おそらく図書館は他の伝達手段を利用してこの問題を利用者グループに伝えているのであろう。あるいは、この議論のためにホームページ上の「不動産」を割愛することはできないと感じているのだろうか。あるいは、ARLの取組みのおかげで、学術コミュニケーションにまつわるインフォメーションは既に学術研究界の共通知識になっていると考えているのだろうか。今回の調査結果を受けて、おそらくARL加盟館の間で議論が再燃することになるだろう。学術コミュニケーションに関連して図書館が現在行っていることは何なのか?また、それは図書館のニーズ及び図書館利用者のニーズを満たしているのかどうか?

2001年12月7日

JournalSeekLink.Openlyが統合され、LinkFinderPlusという新たなサービスが誕生するというニュース。LinkFinderPlusを利用することによって、図書館はオーダーメイドの参照リンキング・システムを構築することができる。LinkFiniderPlusは、将来有望なリンキング標準であるOpenURLに準拠している。

2001年12月5日

Croft, Janet Brennan. "Model licences and interlibrary loan/document delivery from electronic resources.", Interlending & Document Supply, 29(4), pp. 165-168(2001).
[抄録]モデル・ライセンスを定義し、図書館とベンダーの両者にとって、モデル・ライセンスの持つ重要性を論じた。いくつかのモデルを詳細に記述し、ILLに関する条項を検討した。なかでも、PA/JISCとNESLIの活動、John Cox Associatesによるモデル・ライセンス一式、さらにはCLIR/DLF/Liblicenseモデルを年代順に調査した。出版者やコンソーシアがこうしたモデル・ライセンスをどのように利用しているかを論じ、読者の図書館での活用法について提案を行った。

2001年12月4日

12月3日、国際図書館コンソーシア連合(ICOLC: International Coalition of Library Consortia)が、以下の2つの声明の改定版を発表した。   "Statement of Prefeered Practices ..."の改訂は、1998年3月のオリジナル版発表以降の、電子ジャーナル出版に対するコンソーシアの視点の変化に焦点を合わせたものとなっている。
一方、"Guidelines For Statistical Measures ..."のアップデイトは、当初のガイドラインの発表(1998年11月)以降の、コンソーシアの経験に基づいて、ベンダーシステムの図書館での利用状況報告に関する要件を明確化したものである。
同じく12月3日、国際図書館コンソーシア連合は、「バースプロファイルの支持表明書」を発表した。バースプロファイル(Bath Profile)は、図書館応用と情報資源の発見を支援するための、国際的なZ39.50詳細仕様書である。このプロファイルの1.1版は2000年6月に公表され、その後2001年2月に若干の修正が加えられて、現在ではISOの国際認定プロファイル(IRP)として承認されている。
2001年11月30日付けのプレスリリースによると、BioMed Centralは、2002年1月から著者に対する加工料(processing charge)制度を導入するとのこと。加工料の導入は、学術論文への無料アクセスを維持するコストを回収する方法としては最善の策である、との幅広い認識が学術コミュニティに存在するという。加工料は1受理論文当たり500ドル。途上国の著者は免除される予定。Public Library of Scienceの擁護グループも、加工料モデルによる雑誌出版を計画している。詳細については、FAQを参照されたい。

2001年12月3日

Jung, Bernt. "e-Polymers: The new European electronic journal.", SPARC E-News, October-November 2001.
欧州ポリマー連合による査読付きインターネットジャーナルの紹介記事。e-Polymersへのアクセスは無料。

学術出版と学術コミュニケーション−ブロッグ(Weblog)

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